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キース・ヴァン・ドンゲン展

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この夏、パナソニック汐留美術館では、

“キース・ヴァン・ドンゲン展”が開催されています。

 

エコール・ド・パリを代表する画家、キース・ヴァン・ドンゲン。

エコール・ド・パリに焦点を当てた展覧会を筆頭に、

彼の作品を1、2点、目にしたことは何度もありますが。

まとまった数の作品群を観たことは、これまで一度もありませんでした。

それもそのはず、ヴァン・ドンゲンの日本での個展は、なんと44年ぶりとのこと。

『トップガン』の36年ぶりの最新作が制作されて、すっかり話題となっていますが。

それ以上に久しぶりの最新作となるキース・ヴァン・ドンゲン展です。

 

 

キース・ヴァン・ドンゲン。

なんだか妙に語感がいいので、

一度耳にしたら頭に残る名前です。

頭に残っているだけに、彼のことを、

なんとなく、いろいろ知っている気になっていましたが。

知ってるつもりでしかなかったことを、

今回の展覧会を通して、よくよく思い知らされました。

 

まず、彼がオランダ出身であることを初めて知りました。

パリで活躍した印象が強すぎて、

フランス出身の作家だとばかり思い込んでいました。

言われてみれば、フィンセント・ヴァン・ゴッホや、

ヤン・ファン・エイクと同じく、名前に「van」が入っていますね。

それから、会場の冒頭の写真パネルで、

初めて、ヴァン・ドンゲンの顔立ちを知りました。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。ただし、大人の事情で引きの写真しか掲載できません)

 

 

ショーン・ペンにちょっと似た、

ダンディな容貌をしていたのですね。

枯れ専女子に人気が出るかもしれません。

 

 

展覧会は全3章で構成されていました。

まず第1章は、「新印象派からフォーヴィスムへ」

20歳でパリへやってきたヴァン・ドンゲンは、

風刺雑誌や新聞の挿絵の仕事で頭角を現しました。

その作風は、ほぼロートレック。

デビュー時から、ヴァン・ドンゲンの、

あの特徴的なスタイルだったわけでは無かったようです。

その後、挿絵の仕事から画家へとシフト。

新印象主義やフォービスムに強い関心を寄せ、

その影響が感じられる作品を発表するようになっていきます。

 

 

 

この時代の作品で特に印象的だったのは、

画面一番右の《パリジェンヌ または 美の小径》

2人仲良く並んだ女性が、

お互い少し体を傾けつつ、

無表情でこちらに顔を向けています。

シュール系の女芸人のような印象を受ける一枚です。

 

ちなみに。

この頃のヴァン・ドンゲンは一時、

ピカソのモンマルトルのアトリエを間借りしていたこともあるそう。

展覧会では、パリ時代のピカソの最初の恋人、

フェルナンド・オリビエを描いた肖像画も展示されていました。

 

 

 

 

続く第2章は、「フォーヴィスムの余波」

第一次世界大戦が起きる少し前、

ヴァン・ドンゲンは、女性を描いた絵で一躍スターダムに。

フランス国内はもちろん、国外にもその名が知られるようになります。

より大きなアパルトマンに移り住み、

パリの社交集団「トゥ=パリ」(←まさに、パリピ?)と親交を深めるようになったそう。

 

 

 

メインビジュアルの《楽しみ》も、この頃に描かれた一枚。

 

《楽しみ》 1914年 油彩、カンヴァス グルノーブル美術館蔵(アグット=サンバ遺贈)

Amusement, 1914, huile sur toile, Musée de Grenoble, Legs Agutte-Sembat
©Ville de Grenoble / Musée de Grenoble - J.L. Lacroix
©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 B0593

 

 

この作品に限らず、

ヴァン・ドンゲンが描く女性は細く、

そして、手足が異様に長いです。

時には、下半身も長め。

描かれた女性はもれなく、

ゴムゴムの実を食べているのかもしれません。

 

 

そして、第3章は「レザネフォル」

レザネフォルとは、第一次世界大戦後から、

1930年初頭の経済危機で幕が閉じるまでの“狂騒の時代”のこと。

この時代、パリでは幸福感と自由の風が吹き、

文化と祝祭の激しい興奮が広がっていたそうです。

日本でいうところの、バブルの時期くらいの浮かれっぷり。

そんなレザネフォルの時代に、ヴァン・ドンゲンの名声は頂点に達しました。

 

 

 

この頃のヴァン・ドンゲンも、もちろん女性を描いています。

相変わらず、描かれる女性は、手足が長め。

しかも、目の焦点が定まっていない女性が多かったです(白目の女性も)。

その一方で、セレブ層の女性の肖像画も掛けており、

それらは、わりとヴァン・ドンゲン風味が抑えられていました。

TPOによって、スタイルを変えていたようです。

 

また、人物だけでなく、パリの街並みや、

セレブが好んだ保養地ドーヴィルやカンヌの光景も描くように。

 

 

 

展覧会全体を通じて、いかにヴァン・ドンゲンが、

美術界の中心地パリでのし上がって、大成功を収めたか、

そのサクセスストーリーがよくわかりました。

同じ“ヴァン”でも、ゴッホとは真逆の人生。

華やかな成功を目指している画家に夢と希望を与える展覧会です。

星

 

 

 ┃会期:2022年7月9日(土)~9月25日(日)

 ┃会場:パナソニック汐留美術館

 ┃https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/22/220709/

 

 

~読者の皆様へのプレゼント~ 
“キース・ヴァン・ドンゲン展”の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。 
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。 
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/ 
なお、〆切は、7月24日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。

 

 

 

 

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