現在、千葉市美術館で開催されているのは、“とある美術館の夏休み”という展覧会。
参加する現代アーティストの作品(新作を含む)と、
千葉市美術館のコレクションとのコラボが楽しめる展覧会です。
(注:展示室内は一部写真撮影可。このブログで使用している写真の撮影は、特別に許可を得ております。)
展覧会のタイトルと、内容をざっくり聞いて、
毎年夏休みに開催されがちな子ども向けの、
難しいことを考えないで楽しむタイプの展覧会を想像していましたが。
むしろ、それとは真逆の、
コンセプチュアルなアートバリバリ(?)の、
脳みそをフル回転させる系(??)の展覧会でした。
特に、目[mé]による新作インスタレーション作品。
2019年に千葉市美術館で開催され、
大きな話題となった、あの初個展以上に・・・・・
“非常にはっきりとわからない”インスタレーション作品でした。
なぜ、《アクリルガス》は床置きされていたのか?
入り口に、これ見よがしに貼られていた会場の図面、
その指示にある「微妙に空く」「奥を見えなくする努力」は何を意味しているのか?
考えれば考えるほど、
目[mé]が・・・もとい、目が回ってきました。
個人的には、頭を使うのは好きなので、
心地よい脳のフィットネスとなりましたが。
子ども向けの夏休み企画と思って、
展覧会にやってきてしまうと、混乱すること必至です。
その点だけ頭に入れておいて頂けたなら・・・・
現代アートと、伊藤若冲を含む千葉市美術館コレクションの、
新鮮な取り合わせ、意外なマリアージュがたっぷりと堪能できる展覧会です。
夏休みにあえて、チャレンジングな取り組みをする千葉市美術館に拍手!
アートが好きな大人はもちろん、
子どもも、この展覧会にチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
なにせ高校生までは入場料無料なので。
ちなみに。
個人的に一番衝撃的だったのは、小川信治さんによる最新作。
4点で構成された作品《マリア・ボルティナーリ》です。
こちらは、小川さんのライフワークの一つ、
「Behind You」シリーズの進化系ともいえる作品です。
「Behind You」シリーズを簡単に説明すると、こんな感じになるでしょうか。
まず、元なる絵画を丸めます(想像上で)。
左端と右端を付けて、筒状にするのですが、
実際の絵では左端と右端が繋がるように描かれてないため、
違和感なく繋がるよう、その間を埋めます(もちろん想像上で)。
そしたら、元の絵の中心を切断します(くどいようですが想像上で)。
そして、広げてできた想像上の像を、
あとはひたすら丹念にキャンバスに描き写します(ここは実際に)。
これまでの「Behind You」シリーズは、
《モナ・リザ》や《ウルビーノ公夫妻の肖像》など、
美術史に残る名画をモチーフにしていましたが。
今回の《マリア・ボルティナーリ》は、小川さんが、
中世の肖像画をイメージして、一から制作した完全なオリジナルの肖像画。
元となるオリジナルの肖像画を制作し、
さらに、「Behind You」バージョンのものも制作しています。
つまり、単純に制作作業は、2倍になっています!
ただでさえ、緻密な作品ゆえ、
さすがの小川さんも、制作中はキツかったそう。
そこで、自分は親方で、単調な作業は、
職人たちに任せる工房制にすることにしました。
と言っても、本当に職人を雇うのではなく、
自分の中に何人かの職人がいるという設定にし、
大変な制作作業を乗り切ったのだそうです。
せっかくならば、その職人たちのやり取りも、
制作日記スタイルにしたら面白いだろうと、作られたのがこちら↓
架空の職人たちによる制作日記です。
小川さんはこの展覧会のために、
何十ページにも及ぶ制作日記を制作したのでした。
・・・・・・・・・・ん?あれ??
緻密な制作が大変だからという理由で、
頭の中で工房を作るという設定を生み出したわけですよね。
で、その架空の制作日記を作ってしまったということは、
結局のところ、制作工程がまた増えているじゃないですか?!
しかも、肖像画の隣に展示された、
このパウル・クレーの抽象画のような絵画作品は・・・・・
工房の架空の見習い職人が、
制作時、その日に余った絵の具をもらって、
左上から右下に向かって、画面を埋めていったものとのこと(という設定)。
何でまた、自らそんなに作業を増やすのでしょうか。
作業コスパが悪すぎるにもほどがあります(笑)
ちなみに。
《マリア・ボルティナーリ》の隣には、
その娘という設定の《マルゲリータ・ボルティナーリ》も。
これでもかというくらいに、作業がてんこ盛り。
『オモウマい店』ならぬ、『オモウマいアート』です。
・・・・・・・ハッ‼ (゚Д゚)
小川さんの作品を説明していたら、
紙面が残りあとわずかとなってしまいました。
もう、すいません。
あとは展覧会で自身の目でチェックしてくださいませ!