この人形も。
このレース編みの手提げ袋も。
そして、このアーティスティックな花瓶も。
すべて、強制収容された日系人が制作したものなのです。
意外と知られていない事実なのですが (恥ずかしながら、僕も今日まで知りませんでした…)。
真珠湾攻撃の直後、破壊活動やスパイ活動をする恐れがあるという理由だけで、
アメリカに住んでいた日系人は、砂漠や沼地に造られた収容所に強制収容されてしまったのだそうです。
その数、なんと12万人。
家も財産もいきなり奪われ、持って行けたのは手荷物1つだけ。
そして、フェンスから一歩も出られない収容所生活は、その後、3年半にも及んだのだそうです。
そんな過酷な状況下でも、強制収容された日系人たちは、
限られた材料と道具をもとに、生活に必要なものを、一から作り上げたり。
時には、オシャレをしたり。
時には、アートな作品を作ってみたり。
過酷な運命に屈することなく、
生活を少しでも豊かにしようと、知恵と工夫を凝らしたのです。
そんな強制収容された日系アメリカ人が作った日用品や美術工芸品を紹介しているのが、
東京芸術大学大学美術館で開催中の “尊厳の藝術展 ―The Art of Gaman―” という美術展。
ここには、無名の日系アメリカ人が作った作品しかありませんが。
有名な芸術家が作った作品よりも、心に響く作品が、たくさんありました。
実は、アートの魅力を一人でも多くの方に伝えるというアートテラーという仕事をしながらも。
昨年の大震災以来、
「果たして、この大変な時期に、アートを広めることに意義があるのだろうか。」
と、モヤモヤしている部分がありました。
しかし、70年前、同じく突然過酷な状況を強いられた日系アメリカ人たちが、
過酷な生活の中でも、アートを大切にしていたことを知って、そんなモヤモヤがスッと晴れました。
そうです。アートは、人間を人間たらしめる大事な要素だったのです。
アートの本質とは何か。
その問いに対するシンプルで力強い回答を得た気がします。
さて、とっても深イイ美術展だったのですが (しかも、無料!)
2ツ星。
その理由は・・・。
美術展の最後に、半ば強制的にさせられたアンケートに関して。
実は、こちらは、NHKが主催する美術展。
美術展に関する質問に交じって、
『こういう美術展を開催するNHKに対して、受信料を払っていて良かったと思う?』
的なニュアンスの質問がありました。
何とまぁ、尊厳の無い質問なのでしょうか?!
この一文で、美術展への感動が帳消しになった気がします。
余計なことを言わなければいいのに。
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尊厳の藝術展 ―The Art of Gaman―
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