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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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MOTコレクション 被膜虚実/Breathing めぐる呼吸

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東京都現代美術館では、特別展とはまた別に、

館が所蔵するコレクション、通称MOTコレクションを、

MOTコレクション展という形で、さまざまな切り口で紹介しています。

3月18日よりスタートした最新版のMOTコレクション展は、

「被膜虚実」「Breathing めぐる呼吸」の2つのテーマで構成されていました。

 

まずは、「被膜虚実」から鑑賞。

 

 

 

初めて耳にする四字熟語だったので、軽く調べてみたところ、

「被膜虚実」なる言葉は無く、どうやら「虚実皮膜」という言葉は存在しているよう。

しかも、近松門左衛門の芸術論を表す言葉のようです。

 

だからといって、浄瑠璃に関するような作品は特に出展されておらず。

伊庭靖子さんや加藤美佳さん、

 

 

 

名和晃平さんや金氏徹平さんといった、

 

 

 

現代美術界の売れっ子たちの作品が多数出展されていました。

「被膜虚実」というキーワードこそ硬めですが、

内容的には、人気現代アーティストが取り揃えられた華やかな展覧会。

「被膜虚実」というよりも「有名無実」な展覧会です。

星

 

 

そんな「被膜虚実」をテーマにした方の目玉とも言うべきは、

新規収蔵されたばかりで今回が初公開となる三上晴子さんの作品群です。

三上晴子さんは2015年に急逝したメディアアーティスト。

その現存する作品が極めて少ないことでも知られています。

今展には、代表作の一つである「スーツケース」をモチーフにした作品が展示されていました。

 

 

 

空港の手荷物検査場を彷彿とさせる空間に、無数のスーツケースが並んでいます。

よく見ると、その中にはバイオハザードでお馴染みのやつや、

放射性物質に付けられるものなど、おどろおどろしいマークがたくさんあります。

 

 

 

これはつまり、そういった危険なものが、

国境などを越えて移動する可能性を示唆しているわけです。

この作品が発表されたのは、1993年のこと。

まるで、2020年のパンデミックを予見していたかのような作品です。

 

なお、今回紹介されていた三上さんの作品には、こんなものも。

 

 

 

床に置かれているのは体重計。

そして、壁に並んでいるのは、無数のシャワーヘッドです。

痩せなくちゃ。身体を綺麗にしなくちゃ。

そんな強迫観念、衛生観念に襲われそうになる作品でした。

 

それから、もう一つの目玉作品が、こちら↓

 

 

 

1988年のヴェネツィア・ビエンナーレに出品された、

石原友明さんの《約束》というインスタレーション作品です。

全面に広がる青い色面は、当時の石原さんのアトリエに敷かれた正方形の床タイルを、

ひたすら油絵の具でフロッタージュ、つまり表面をこすり続けて完成させたものなのだそう。

 

 

 

なお、サーフボードみたいなのに焼き付けられているのは・・・・・

 

 

 

石原さん自身の写真像なのだとか。

大作ゆえに、展示されるのは実に15年ぶりとのこと。

この機会を見逃すと、次に展示されるのも、

それくらい先になってしまうかもしれませんね。

 

なお、「被膜虚実」に出展されていた作品の中で、

個人的に一番印象に残っているのは、ホンマタカシさんによる写真群。

1995~98年に撮影された「TOKYO SUBURBIA 東京郊外」シリーズです。

 

 

 

被写体となっているのは、東京周辺に遍在する市街地や住宅地。

そして、そこで暮らす少年少女たち。

まさに、自分も千葉県のそういう土地柄で、

同じ時期に青春期を過ごしているので、無性に親近感を覚えました。

 

 

 

↑彼のように腰履きはしませんでしたが、

こういう着こなしのヤツは、クラスに何人もいました。

 

 

さてさて、もう一つのテーマ、「Breathing めぐる呼吸」のほうには、

 

 

 

穴がくり抜かれた巨大な木の表面を燃やして炭化させた遠藤利克さんの《泉》や、

 

 

一つ一つの家(箱)に内側に薬草が塗られている、

タイのモンティエン・ブンマーによる《呼吸の家》をはじめ、

 

 

 

香りが特徴的な作品の数々が展示されていました。

目玉作品は何と言っても、今年生誕100年を迎える、

アメリカを代表する抽象画家、サム・フランシスの大型絵画作品。

これらはアサヒビール株式会社から寄託されているものなのだそう。

 

 

 

あまりにサイズが大きいため、

普段は巻かれた状態で保管されているとのこと。

それだけに、どことなく、久しぶりに身体を伸ばせて気持ちよさそうな印象を受けました。

まるで、作品そのものが思いっきり深呼吸をしているかのようです。

 

 

 

 

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