歌舞伎町のど真ん中にある城の形をした怪しげなビル、王城ビル。
1964年に竣工した当時は、名曲喫茶だったそうですが、
その後、カラオケになったり、居酒屋になったり、と業態が変わるも、
2020年3月にコロナの影響もあって、その長い歴史にひとまずの幕を下ろしました。
そんな王城ビルを舞台に、現在、
Chim↑Pom from Smappa!Groupによる新プロジェクトが開催されています。
その名も、“ナラッキー”です。
「ナラッキー」という聞き慣れない言葉は、
『奈落』という言葉から着想を得た造語とのこと。
とはいえ、「ナラッキー」が『奈落』とわかったところで、
一体どのようなアートプロジェクトなのか、皆目見当がつきません。
ちょっと・・・いや、なかなか怖い気もしますが、
思い切って、王城ビルの中に足を踏み入れてみました。
料金は、一般2000円。
決して安くはないですが、ぼったくりではありません。
料金を払うと、スタッフさんに手渡されたのは・・・・・
カラオケボックスで貰うアレでした。
なんと、こちらがチケット代わり。
これを持って、各所を巡る感じになるようです。
さて、受付を済ますと、いったん外に出て、
別の入り口から、改めて王城ビルに入らなくてはなりません。
その入り口というのが・・・・・
風俗店と風俗店の間の通路の先にあります。
これまで数多くのアートスポットを訪れてきましたが、
風俗店と風俗店の間を抜けて行くのは、初体験でした(笑)。
そして、きっとこの先も経験することはないでしょう。
さて、王城ビルの中に入って、まずいきなり出会うのが、
このアートプロジェクトのハイライトともいうべき作品《奈落》。
このドアの先に、その作品はあります。
なんでも、このドアの先にある空間は、
ビル5階分を貫く吹き抜け空間になっているのですが、
火災のために、約30年近く閉ざされ続けてきたのだそうです。
そのスペースを、「奈落」は「奈落」でも、
「奈落の底」の「奈落」ではなく、舞台下の「奈落」に見立て、
サーチライトを載せたセリを設置、しかもそのセリが上下するという作品です。
この“ナラッキー”は、15時から21時まで、
と、かなり変則的な時間で開催されています。
自分は夕方に訪れてしまいましたが、
日没後に訪れれば、サーチライトが空を照らす様子も観られるそう。
《奈落》を最大限楽しむのであれば、夜に訪れるのがオススメです。
さてさて、《奈落》以外にも、
Chim↑Pomらしい作品が多数展示されています。
例えば、屋上に展示されていたのは、《光は新宿より》という作品。
サイアノタイプ(青写真)製の看板に浮かび上がるこの言葉は、
戦後初の闇市「新宿マーケット」を立ち上げた的屋系暴力団・関東尾津組が、
物資買取のために出した新聞広告に使ったスローガンなのだとか。
それを知った瞬間、『龍が如く』の世界観に放り込まれたような気がしました(←?)。
また例えば、《神曲──La Divina Commedia》という作品。
こちらの作品は、4階の1フロアをまるまる、
カラオケスペースに変えてしまったというもの。
しかも、デンモクやタンバリンなども用意されており、
実際に、自由にカラオケを楽しむことができるようになっています。
なるほど。だから、チケットがアレだったのですね!
さらに、地下に設置されていたのは、《餌》という作品。
怪しげな照明に照らされているのは、怪しげな巨大な水槽。
その中を覗いてみると・・・・・・・
小さな魚がたくさん泳いでいました。
この小さな魚の正体は、いわゆるドクターフィッシュ。
足を入れると、古い角質を食べるために寄ってくる性質を持った魚です。
こちらでは、実際に足を入れて、ドクターフィッシュ体験をすることができます。
ということで、人生初のドクターフィッシュ体験をしてみることに。
足を入れた瞬間、一気に寄ってきました。
そして、古い角質を食べられました。
終始、こそばゆかったです。
なお、これらのドクターフィッシュは・・・・・
王城ビル内にある「にんげんレストラン」で、食材として提供されるのだそう。
なんとも複雑な気持ちになる作品でした。
訪れる前は、2000円という料金が、少し割高な気もしましたが、
アートが楽しめる上に、カラオケもドクターフィッシュも体験できるので、むしろ相当お得。
それに加えて、王城ビルの廃墟感も存分に味わうことができます。
万人受けはしないとは思いますが、
ディープなスポットが好きな方であれば、
たまらないアートプロジェクトだと思います。
ちなみに。
観終わって、王城ビルを出た直後に、
風俗店の客引きらしき人に声を掛けられました。
それも何かのパフォーマンスかと思い、しばらく対応してしまいました。
・・・・・危うく、風俗店に入ってしまうところでした。
皆さまもどうぞお気を付けください。