現在、根津美術館で開催されているのは、
根津美術館が所有する光村コレクションにスポットを当てた展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
今回の主役である光村コレクションとは、
日本屈指とされる刀剣や刀装具のコレクションのこと。
蒐集したのは、センター分けでも七三分けでもない、
絶妙に中途半端な分け方(?)が特徴的なこちらの人物です。
その名は、光村利藻(としも)。
美術展の図録の出版などでお馴染みの光村印刷の創業者です。
父は、神戸の海運で財をなした光村弥兵衛。
その弥兵衛が亡くなると、わずか14歳にして莫大な財産を受け継ぎます。
そんな利藻が20歳の時のこと、
長男の初節句のためにと、ミニチュアの甲冑を購入したそうです。
しかし、ミニチュアでは今一つピンと来ず、
試しに(?)、本物の甲冑を買ってみることにしました。
すると、それを機にその魅力に開眼!
甲冑を蒐集するようになったのです。
紅糸威二枚胴具足 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
さらには、そこから派生して、
刀剣や刀装具をコレクションするようになります。
気づけば、収集を始めてから10年ほどで、
コレクションの総数は、3000点を超えるまでになりました!
ところが・・・・・。
31歳の頃に、事業が悪化。
そのため、コレクションの一括売却を、
人を介して初代根津嘉一郎に持ち掛けたそうです。
根津嘉一郎は刀剣には特に興味はなかったそうですが、
優れた刀剣・刀装具のコレクションが、「海外に流出するくらいなら・・・」と、
現物を見ることなく、即決で購入を決めたそうです。
現在、根津美術館には、そのうちの約1200点が収蔵されているとのこと。
今展では、光村コレクション約1200点の中から、
選りすぐりられた100点強が一挙公開されています。
これまで幾度となく、根津美術館を訪れていますが、
これほどまでに甲冑が並んでいる光景は初めて目にしたような。
迫力度、という観点だけでいえば、
歴代No.1の展覧会と言えるかもしれません!
ちなみに。
展示されていた甲冑の中で、
個人的に一番印象に残っているのは、
こちらの《萌黄糸威二枚胴具足》です。
萌黄糸威二枚胴具足 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
なんとなく、甲冑の色は黒や赤、金のイメージが強く。
グリーン系の甲冑は観た記憶がないため、斬新な印象を受けました。
緑一色にワンポイントに赤がある感じは、
どことなく、ハイネケンビールを彷彿とさせるものがあります。
どことなく、彷彿とさせるといえば、
ズラッと並べられた光村コレクションの刀の中にも。
こちらの《太刀 銘 吉(以下切) (金象嵌銘)一》は、鎌倉時代に作られたものとのこと。
太刀 銘 吉(以下切) (金象嵌銘)一 鍛造・鉄 日本・鎌倉時代 13世紀 根津美術館蔵
しかし、刀身をよく観てみると・・・・・
3本のラインが入っていました。
アディダスが誕生するより遥か昔に、
日本には、3本ラインが存在していたのですね!
もしかしたら、これが世界最古の3本ラインかもしれません。
ちなみに。
展覧会の後半では、光村コレクションの中でも、
特に名高いとされる刀装具の数々が惜しげもなく展示されています。
それらの中でも、ひときわ目を引いたのが、
府川一則(二代)による《地獄太夫図鐔》(写真右)です。
これまで、数々の展覧会で、
数々の刀の鐔を目にしてきましたが、
髑髏型のものには初めて出会いました。
やっぱりいつの時代にも、こういうのが好きな人がいるのですね。
『チャンプロード』の広告に掲載されているシルバーアクセを好むような。
しかし、その一方で、どちらかといえば、
女性らしい印象の(?)刀装具もありました。
大月光興の《閑居図小柄》(写真左)です。
シャンパンゴールドに、ローズゴールドに。
江戸時代にすでに、
女性に人気のアイコスみたいなカラーがあったのですね。