現在、アーティゾン美術館では、
山口晃さんとのジャム・セッション展と併せて、
“創造の現場―映画と写真による芸術家の記録”も開催されています。
実はあまり知られていないのですが。
アーティゾン美術館の前身であるブリヂストン美術館は、
開館した翌年の1953年に、映画委員会を発足していました。
そして、「美術映画シリーズ」と冠して、
1964年までに全部で17本の記録映画を製作したそうです。
その「美術映画シリーズ」に出演した芸術家は、計61名。
映像の中では、梅原龍三郎や高村光太郎、鏑木清方といった、
そうそうたる面々の貴重な制作風景や日常の様子が記録されています。
なお、「美術映画シリーズ」は単なる記録映像に留まらず、
イタリアの国際映画祭で受賞するなど国内外で評価を得ていたのだとか。
そんな「美術映画シリーズ」にスポットを当てた初の展覧会が、
“創造の現場―映画と写真による芸術家の記録”というわけです。
「美術映画シリーズ」の一部は、YouTubeでも公開されていますが。
展覧会の会場では、そのすべて、
計17本の「美術映画シリーズ」が上映されています。
もちろん、それだけではなく。
映画に登場した芸術家の作品も併せて展示されています。
つまり、芸術家が制作する姿と、
実際に制作された作品とを併せて観ることができるのです。
(展示作品は必ずしも「美術映画シリーズ」に登場したものではないですが)
“なるほど。こうやって描かれているのか!”とか。
“この作品は、こんなアトリエで描かれていたのか!”とか、
かつてNHKのEテレで放送されていた、
『浦沢直樹の漫勉』スタイルで楽しむことができました。
それ以上に、梅原龍三郎や高村光太郎などは、
写真でしかその姿を拝見したことがなかったので、
動いている姿が観れて、純粋に驚きと興奮がありました。
なお、「美術映画シリーズ」をフルで観るとなると、約2時間半はかかるそう。
コンプリートしたい方は、時間に余裕をもって行かれることをオススメいたします。
また、展覧会では、「美術映画シリーズ」の他に、
1970年代より現代美術の現場を記録し続けた写真家、
安齊重男さんによる芸術家のポートレートの数々も紹介されていました。
リラックスした姿で映っているものもあれば、
お澄ましした決めポーズ(?)で映っているものも。
映像(映画)とはまた違った、
芸術家の素の一面が垣間見れた気がしました。
改めて、これらのアーティスト写真の重要性を感じましたが、
残念ながら、安齋さんは2020年にお亡くなりになってしまいました。
我こそは、という人に、是非、2代目安齊重男さんを襲名して欲しいものです。
ちなみに。
1つ下の4階の展示室では、コレクション展が開催中。
その中でも注目したいのが、特集コーナー展示“読書する女性たち”です。
アーティゾン美術館のコレクションの中から、
その名の通り、読書する女性が描かれた絵画の数々が紹介されています。
そんなニッチな絵があるのかと思いきや、意外や意外にあるものですね。
多くの女性が、熱心に読書をしていた中で、
マティスが描く女性だけは、読書に集中できていないようでした。
どちらの女性も、完全に読書に飽きています。
若者の活字離れが叫ばれる昨今ですが、
この頃にすでにも、活字離れは始まっていたのでしょう。
読書に飽きているといえば、
印象派の女性画家メアリー・カサットによる一枚も。
《娘に読み聞かせるオーガスタ》です。
娘は完全に読み聞かせに飽きている様子。
YouTubeとかNetflixとか、
そういうのが気になって仕方がない顔をしています。