この秋、諸橋近代美術館で開催されているのは、
“ミュージアム・ワークス—みんなの知らない美術館”という展覧会。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
「収集」や「展示」などと並んで、美術館の大事な役割でありながらも、
あまりスポットの当たることのない「保存」について深堀りする展覧会です。
さて、展覧会の冒頭で紹介されていたのは、
保存をする上でもっとも大事な情報と言っても過言ではない「材質」について。
油彩とか、カンヴァスとか、板絵とか。
なんとなくわかっているようで、
改めて聞かれると、正確には答えられない。
そんなあれこれを掻い摘んで教えてくれます。
また、絵画に使われる実際の顔料も併せて紹介。
絵画がどのような画材で描かれているのか。
どのようなレイヤーになっているのか。
それらを理解したところで、
続いては、展示の仕方や工夫をご紹介。
下の2枚の写真をご覧ください。
パッと見ただけでは、その違いには気づかないでしょうが。
実は、それぞれの作品に当てる照明の明るさが違っています。
というのも、1枚目の写真で飾られているのは、カンヴァスに油彩で描かれたもの。
対して、2枚目の写真は、紙に描かれたもの。
油彩と同じ照度の照明を当てると、紙のほうは傷んでしまいます。
普段意識することはほとんどないですが、
展示の際には、照明の照度にも細心の注意が払われているのです。
また、他に展示に関するものとして。
普段、照明以上に意識しないものにも、スポットが当てられていました。
それは、たいていの美術館の展示室の隅にある記録計。
これが一体何を計っているものなのか?
そして、その記録が一体何の役に立つのか?
その答えがちゃんと解説されていました。
なお、もっと目立たないこちらのアイテムについての解説もあり。
美術館の展示について、いろいろ知ることができて。
おかげさまでいつ美術館で働いても、大丈夫な気がしてきました。
(↑気がするだけ)
なお、「保存」が主役の展覧会ではありますが、
諸橋近代美術館の真の主役、ダリも決して脇には回っていません。
保存の観点から長年大事に収蔵されていたという、
ダリの版画作品の数々が数年ぶり、数十年ぶりに一堂に展示されています!
特に印象的だったのが、こちらの《カサノヴァ》という版画作品。
カサノヴァとは、18世紀のイタリアに生きたジャコモ・カサノヴァのこと。
冒険家や音楽家、スパイなどさまざまな肩書きがあれど、
彼が一番知られているのは猟色家、つまりプレイボーイとしての側面。
その生涯にわたって、快楽を求め続けたそうで、
彼の回顧録によれば、1000人の女性とベッドを共にしたのだとか。
そんなヤツ、今の時代だったら一発アウトでしょう。
カサノヴァがヤバすぎるあまり、初めてダリをまともに感じました(笑)。
ちなみに。
展覧会では、ダリの作品だけでなく、
修復されたばかりのシスレーの作品も公開されています。
描かれている人と比べると、
積みわらが大きすぎるような。
一軒家くらいの大きさがあります。
いや、もはや一軒家なのかもしれません。
あ、そうそう!修復といえば。
現在、諸橋近代美術館は、
作品の修復のためのクラファンにチャレンジ中です。
実は、その募集ページに、応援コメントを寄せさせて頂きました。
ネット上とはいえ、まさかあの山田五郎さんと並ぶ日が来ようとは。
~おまけ(?)~
本展のために作られた特製のフォトスポットです。
撮影する人は多いそうですが、
恥ずかしいのか、SNS上にアップする人は少ないそう(笑)。
クラファンと併せて、こちらのフォトスポットも応援しておきます。