今年も、いろいろな展覧会をご紹介してまいりましたが。
2012年ラストに紹介するのは、三菱一号館美術館で開催中の “シャルダン展―静寂の巨匠” です。
こちらの美術展の感想を、あえて一言で表すならば・・・
「地味~。」
としか言いようがありません (笑)
が、地味は地味でも、じわじわと面白さが滲み出てくるような、そんな地味さ。
地味というより、むしろ・・・
「滋味~。」
という表現のが、近い気がします。
この美術展でフィーチャーされているのは、ジャン・シメオン・シャルダン (1699~1779)
(注:こちらの 《日除けをかぶる自画像》 は出展されていません)
・・・なんだか、売れない落語家みたいな顔をしていますが、
こう見えて (←失礼!) 、フランスを代表する静物・風俗画の巨匠です。
そんなシャルダンですが、実は、意外にも、これまでに日本で個展が開催されたことはなかったのだとか。
そこで、今回、三菱一号館美術館が、満を持して、シャルダン展を開催する運びとなったのです。
出展されているシャルダン作品は、日本初公開作品26作品を含む38点。
「あ、たった38点しか来てないの?」
と思った方もいらっしゃるでしょうが、
シャルダンは、生涯に約200数点しか作品を残さなかった寡作の画家。
そのうちの38点が来日しているとは、実は奇跡的な美術展なのです。
しかも!
その38点の中には、シャルダンの最も美しい作品と言われる 《羽根をもつ少女》 に、
シャルダンが描いた唯一の花の絵 《カーネーションの花瓶》 に、
ポスターにも使われている晩年の静物画の最高傑作 《木いちごの籠》 もエントリーされています。
(《木いちごの籠》 は、個人所蔵のため普段は非公開!)
シャルダンの日本初の個展としては、これ以上ないくらいのラインナップです!
まさに、夢のシャルダン展!!
・・・・・・にも関わらず。
美術展会場では、ほとんどテンションが上がらないのは、シャルダン作品が地味だからに他なりません (笑)
《すももの鉢と水差し》 に、
《錫引きの銅鍋》 に、
《肉のある料理》 と、
シャルダン展は、静物画のオンパレードから始まります。
この頃のシャルダンは、キッチンツールを描くことに興味があったようで、
彼が描く静物画には、鍋やフライパンなど、さまざまな台所用品が登場しています。
派手さは全くないですが、シャルダンのつつましやかな性格が表れているようで、実に味わい深い絵でした。
・・・と、この初期の静物画までは、
美術展のキャッチコピーの 『やさしい沈黙に、つつまれる』 通りの作風だったのですが。
最初の奥さんが、わずか結婚4年で、病気で亡くなってしまい、
その数年後、裕福な未亡人と再婚したのをきっかけに、シャルダンの作風に大きな変化が。
新たな妻のせいで、ブルジョア志向になったシャルダンは、
得意としていた静物画を捨て、より各上のジャンルとみなされていた風俗画を描くようになってしまうのです。
《デッサンの勉強》
《買い物帰りの女中》
「あぁ、あのつつましやかだったシャルダンは、いずこへ・・・」
再婚した途端、急にセレブ志向になってしまったシャルダンには、ガッカリです。
・・・・・が、この頃のシャルダンの風俗画を、
よ~く眺めていたところ、とあることに気が付きました!
「あ、床に、台所用品が直置きされている!」
そうなのです。
シャルダンは、まだ初心を捨てていなかったのです。
だから、床に台所用品が直置きされているというヘンテコな風俗画になってしまっているのです (笑)
ちなみに、国王ルイ15世に贈呈された 《食前の祈り》 (ルーヴル美術館蔵) の隣に、
その4年後に描かれたエルミタージュ美術館が所蔵する別ver.の 《食前の祈り》 が展示されていました。
ほとんど同じ絵なのですが、よく見比べてみますと・・・
床に直置きされた台所用品が増えてる!!
4年の間に、シャルダンに、どんな心境の変化があったのでしょうか。
非常に気になるところです。
さてさて、その後、風俗画に飽きたのでしょうか。
シャルダンは、静物画に回帰し、生涯を通して静物画を描き続けたのでそうです。
《木いちごの籠》 は、その頃に描かれた一枚です。
上手いのは、言わずもがなですが。
何よりも気になったのは、
“なんとも絶妙なバランスで、木いちごが山盛りになっているなァ”
ということ。
描くよりも、このバランスで積む方が難しいのではなかろうか (笑)
ともあれ、シャルダンという地味な画家を、あえて取り上げた三菱一号館美術館に乾杯!
シャルダンの作品数が少ないながらも、
ちゃんとシャルダンの人生を追える美術展になっていたのが、何よりも素晴らしかったです。
『つつましやかな静物画を描く→一瞬、ブルジョア志向になり風俗画家に転向→やっぱり静物画を描く』
というシャルダンの人生も、あまり起伏がなくて地味でしたが (笑)
その地味な人生に (地味な作品にも) 、共感が持てました。
地味に2つ星の美術展です。
ちなみに、個人的に残念だったのは。
シャルダン展のお土産コーナーに、
エステー 消臭 芳香剤 シャルダンエース レモン230ml【HLS_DU】【RCP】
¥489
楽天
エステーの芳香消臭剤シャルダンが売ってなかったこと。
(芳香消臭剤シャルダンの名前は、画家のシャルダンに由来しています)
シャルダン展限定の芳香消臭剤シャルダンがあったら、地味に売れたと思うのですが(笑)
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シャルダン展―静寂の巨匠
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