今回は、 “まつじゅん” ではなくて、
“まつしゅん” の魅力に迫る美術展をご紹介いたします。
・・・と、いきなり “まつしゅん” と言われても、ピンと来ないことでしょうf^^;
僕の言う “まつしゅん” とは、
36年という短い人生ながらも日本美術界に鮮烈な足跡を残した松本竣介 (1912~1948) のこと。
ちなみに、松本竣介を “まつしゅん” という愛称で呼んでいるのは、現状では僕くらいなものです (笑)
(↑なんとか定着させたいと思っています)
さて、今年2012年は、松本竣介の生誕100年の節目の年。
それを記念した “生誕100年 松本竣介展” は、神奈川県立近代美術館 葉山での開催を皮切りに、
宮城県美術館、島根県立美術館と巡回し、現在、世田谷美術館で開催されています。
(2013年1月14日まで)
初期の作品から最晩年の作品まで、
もちろん代表作の数々も展示されている大型回顧展で、 『松本竣介展の決定版!』 といったところです。
出典作品数も多く、資料関連も多いため、
普段は常設展示室である2階の展示室も松本竣介展の会場に!
そのため、世田谷美術館は、まさに松本竣介一色状態!
正直、松本竣介だけで、お客さんが呼べるものなのかと、気になっていたのですが。
いざ会場に入ってみれば、平日にも関わらず、お客さんがいっぱい。
改めて、 “まつしゅん” 人気を再確認した次第です。
まだ、 “まつしゅん” を観たことがないという方は、この機会に是非!
さてさて、今回の松本竣介展の見どころは、
何と言っても、代表作中の代表作 《立てる像》 ではないでしょうか。
実は、 “まつしゅん” ファンでありながら、この作品を前にするのは、今回が初めて。
かなりミーハーな気分で、 《立てる像》 と向き合いました。
その第一印象は、
「あ、意外となで肩なんだね」
とか、
「あ、シャツインしているんだね」
とか、
「あ、インナーは、サンフレッチェ広島のユニホームみたいなんだね」
とか、結構どうでもいいことばかりでしたが (笑)
しばらく眺めているうちに、不思議なことに気が付きました。
向き合えば向き合うほど、描かれている人物が大きくなっている気がするのです。
絵のサイズを調べてみると、高さは162cm。
描かれている人物は、さらに低いはず。
にもかかわず、描かれている人物が、僕の身長よりも高いような、
しかも、どんどん高くなっているかのような不思議な感覚に襲われました。
描かれている人物と背景の縮尺が合っていないという視覚的な理由もあるのでしょうが。
それだけでは説明できないくらいに、絵の人物が、どんどん大きくなっているように感じられるのです。
おそらく、この絵で、松本竣介が表現したかったのは、 “肥大する自我” だったのではなかろうか。
僕は、それを無意識に感じ取ってしまったのではなかろうか。
一見すると普通の自画像なのに、実は、かなりシュルレアリスムな作品なのでは?
ともあれ、この不思議な自画像は、必見の一枚です!
《立てる像》 を観るだけでも、十分に、世田谷美術館まで行く価値がありますが。
他にも、 『美の巨人たち』 で取り上げられた 《Y市の橋》 も一見の価値アリ。
病気が原因で、13歳の頃に聴力を失った松本竣介。
そのため、描く世界は、 “無音の風景” と称されています。
確かに、この 《Y市の橋》 には、尋常じゃない静謐さが漂っていました。
他にも静謐な風景画を描く人はいますが (東山魁夷とか) 、
それらの風景画からは、 「シーン。」 という音が聞こえてくる気がします。
しかし、松本竣介の無音の風景画からは、 「シーン。」 という音すら聞こえず、全くの無音。
無音すぎて、自分の心拍数が聞こえてきました。
さらに、別の 『美の巨人たち』 の回で取り上げられた 《水を飲む子供》 も出展されています。
松本竣介の人物画の多くは、無表情のようで、ちょっとだけ表情を湛えているのですが。
この子供も、まさにそんな表情を湛えていました。
この絶妙な (微妙な?) 表情は、エヴァの綾波レイの表情に通ずる気がします。
他にも、初期のルオー風 (パクリ?) の風景画 (《建物》) や、
シャガール風 (パクリ??) のコラージュ画 (《都会》) 、
そして、藤田嗣治風 (パクリ???) の人物画 (《少女》) など、
多岐に渡る松本竣介ワールドを、今回の美術展では堪能出来ます。
その中でも特に印象に残ってるのが、 《象》 という作品。
こちらは、松本竣介の実の息子が描いた絵を、
松本竣介が、トレースして作品に仕上げたもの。
松本竣介のパパとしての一面が垣間見れて、ほっこりとする作品でした。
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生誕100年 松本竣介展
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