現在、東京オペラシティ アートギャラリーで開催されているのは、
“ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家”という展覧会。
「Glass Tableware in Still Life」というプロジェクトから生まれた展覧会です。
「Glass Tableware in Still Life(静物画のなかのガラス食器)」とは、
スウェーデン在住のガラス作家・山野アンダーソン陽子さんによるプロジェクト。
一体、どういったプロジェクトなのか、
ざっくり説明すると、以下のような感じになるでしょうか。
まず、山野さんが静物画を描いてほしい画家に声を掛けます。
オファーを受けた画家は自身で描いてみたいガラス食器を、山野さんに伝えます。
この時、画家はスケッチを含め、絵を使ってイメージを伝えるのは禁止。
言葉だけで、山野さんにイメージを伝えなくてはいけません。
それらの言葉をもとに、山野さんはガラス食器を作成。
そうして生まれたガラス食器をモチーフに、画家が静物画を完成させました。
さらに、プロジェクトの一環として、写真家の三部正博さんが、
画家たちのアトリエを訪れ、ガラス食器のある光景の撮影もしています。
と、言葉だけだと、イメージが湧きづらいでしょうから、
具体的な作品を交えて、もう一度改めて紹介しますね。
例えば、こちらはスウェーデンの画家、
アンナ・ビヤルゲルによる《milk》という作品。
この絵画を制作するにあたって、アンナがリクエストしたのは、
「小ぶりで、牛乳の冷たさを指で感じられる薄いグラス」だったそうです。
そのリクエストを受けて、山野さんが制作したのが、こちらのグラス。
そして、三部さんがアンナのアトリエで、
山野さんのグラスを撮影したのが、こちらの写真です。
ガラスの作品も楽しめる上に、絵画も写真も楽しめる。
ありそうでなかった組み合わせの展覧会。
一粒で三度美味しい展覧会です。
ちなみに。
「Glass Tableware in Still Life」に参加したのは、
スウェーデン、ドイツ、日本の画家を併せて、計18名。
それらの中には、静物画を描く人気写実画家・石田淳一さんや、
2019年に東京都美術館で大規模な個展が開催された伊庭靖子さんも。
なお、展覧会名には“静物画”とありますが、
一見すると、抽象画のように見える作品もあれば、
どう見ても、抽象画にしか見えない作品もありました。
ガラスの器のある静物画は、18者18様。
一人としてスタイルが被っていなかったです。
もちろん画家の皆様の絵画も素敵だったのですが、
山野さんのガラスの器も、シンプルながら素敵でした。
本展で紹介されている作品は、1点モノですが、
お店などから注文を受けて、まとまった数を制作する際にも、
山野さんは、すべて型を使わず、1点1点作っているのだそう。
それゆえ、よく見ると、どのガラスも、
大量生産品のようにツルっとはしてません。
しかし、その“ゆがみ”・・・いや、“ゆらぎ”が、
なんともいえない絶妙な表情を見せてくれています。
特に素敵なのが、照明を通して生まれた影。
ガラスの器の影というよりも、水面に映る波紋のようです。
ガラスが生み出す影が、こんなにも美しいものだったなんて!
なお、こちらのガラスのピッチャーにいたっては・・・・・
プリズムのように光り輝いていました。
ちょっと虹も出ています。
見れば見るほど、山野さんのガラスの器が欲しくなってきます。
そういう意味では、理想のガラスの器を、
山野さんにリクエストできた18人の画家が羨ましくなってきました。
さぞかし、皆さまは大事にしていることでしょう。
・・・・・・と思ったら、CM・ルンドベリなる画家が、
2点リクエストしたうちの1点を割ってしまったそうです。
しかも、割れたものをご丁寧に描いていました。
どういう経緯で割れたのかは不明ですが、
左に飾られた絵から推測するに、猫が第一容疑者でしょう。