(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)「
現在、泉屋博古館東京で開催されているのは、
“うるしとともに―くらしのなかの漆芸美”という展覧会。
住友コレクションの中から選りすぐりの漆芸品を紹介するものです。
一口に漆芸品と言っても、その用途はさまざま。
そこで本展では、「茶会」や「舞台」、「書斎」など、
使われる場面、シーンごとに漆芸品が紹介されています。
中でも漆芸品が多く使われるシーンは、やはり「宴」の席でしょう。
会場には、住友家で実際にハレの日に使われていた漆芸品の数々が展示されています。
とりわけ目を奪われたのが、こちらの《花鳥文蝋色蒔絵 会席膳椀具》です。
住友コレクションには、30セット分が含まれているそうですが、
普通、展覧会に出展するとしても、そのうちの1セットくらいなもの。
今回は、“くらしのなかの漆芸美”に着目した展覧会ということで、
担当学芸員さんは、あえてまとめて出展してみようと思ったのだそう。
曰く、圧倒的な量を味わってほしいとのことでした。
とはいえ、これでも10数セット分なのだとか!
30セット全部並べたら、一体どうなってしまうのか。
これが料亭とかではなく、一家庭の所有品であったことにただただ驚くばかり。
改めて、住友家のスケールの大きさを実感しました。
ちなみに。
こちらも住友家で使われていたという会席用のお膳。
全部で20セットあるそうですが、すべてデザインが違うそうです。
しかも、「敦盛」や「西行桜」など、
すべて、能の謡曲がモチーフとなっているそう。
酒のみの人には「猩々」とか、プレイボーイには「杜若」とか、
客のイメージに合わせたお盆で食事を提供していたのかもしれませんね。
なお、展覧会の後半では、
彫漆や蒔絵、螺鈿など、漆芸品を技法ごとに紹介。
メタリックすぎる手箱もあれば、
ホログラムのような螺鈿が施されたお盆も。
漆芸品の展覧会とだけ聞くと、
ちょっと地味な印象を受けるかもしれませんが。
いえいえ、バリエーション豊かで、むしろ華やかな展覧会でした。
たくさんある漆芸品の中で、一番印象に残っているのは、
武蔵野の情景が蒔絵で全面に施されていたこの箪笥でしょうか。
こちらは、能のお面用の箪笥だそうで。
覗き込んでみると、能面が収納されていました。
怖っ!
リアルに「ひっ!」と声を上げてしまいました。
能面って、こんな感じで収納されていたのですね。
ちなみに。
“うるしとともに”展と併せて、
“伊万里・染付大皿の美”も同時開催されています。
こちらは、近年、泉屋博古館東京に寄贈されたという、
瀬川竹生コレクションの染付大皿の優品を紹介するものです。
当たり前と言えば当たり前ですが、
大きいだけに、どのお皿も迫力がありました。
そして、小皿よりも見ごたえがあります。
コレクターの方の趣味なのか、
はたまた、大皿がそういうものなのか。
全体的には、変わった柄のものが多かったような。
なお、これらの大皿は、鑑賞用かと思いきや、
実際に、卓袱料理などで使われていたようです。
大皿に描かれている絵柄は一体何なのか?
料理を食べ進めながら、推理して楽しんでいたのかもしれません。
『アタック25』の最終問題みたいな感じで。
ちなみに。
本展の開催に合わせて、来る2月2日に、
このようなトークイベントが開催されます。
普段は、アートについてトークしていますが。
今回、美術館でのイベントでは初めて、
アートテラーについて語ることになります。
どこに需要があるんだ、と、自分が一番思っていますが、
アートテラー誕生のきっかけやターニングポイント、仕事の流儀について話します(笑)。
アートテラーを辞めようと思ったことや、
今だから話せるエピソードなども、披露する予定です。
予約制となっていますので、ご興味ある方は是非遊びにいらしてくださいませ!