現在、目白台にある永青文庫では、
永青文庫では6年ぶりとなる中国陶磁の展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
永青文庫というと、細川家伝来の美術工芸品や、
永青文庫の設立者である細川護立の絵画コレクションが広く知られていますが。
実は、護立による中国陶磁コレクションも有しています。
日本で本格的に中国陶磁が「鑑賞陶器」として、
受容されるようになったのは、20世紀初頭とのこと。
その最初期から護立は中国陶磁を蒐集していたそうで、
日本における「鑑賞陶器」蒐集家の草分け的存在でもあるようです。
ちなみに。
今でこそ日本でも評価の高い唐三彩ですが、
護立が蒐め始めていた頃は、そうでもなかったようで。
ある時、護立が美術クラブで唐三彩を褒めたところ、
「墓から出たものを飾るのは何だか変ですよ。」と言われてしまったのだとか。
とはいえ、護立は、そんな反応があったところで、
「どこから出ようが、いいものはいいんだ。」と気にしなかったそうです。
さて、本展では、そんな護立が蒐集したものを中心に、
永青文庫所蔵の中国陶磁の名品のが一堂に会しています。
それらの中には、《白釉黒花牡丹文瓶》や、
《三彩花弁文盤》といった重要文化財に指定されている貴重なものも。
さらに、もう一つの重要文化財、
《三彩宝相華文三足盤》も出展されています。
こちらの《三彩宝相華文三足盤》は、
数ある唐三彩の中でも群を抜いた優品として知られている逸品。
陶芸の技法がよくわからずとも、
非常に凝った作りであることは十分に伝わってきます。
模様が細かくビッシリ施されているので、
パッと見は、顕微鏡で見た何かの植物の細胞のようにも思えました。
他にも、淡い青と紫の美しいコントラストが特徴的で、
中国宋時代の名窯の一つである鈞窯の《澱青釉紫紅斑盤》や、
さまざまなタイプの天目がある中で、
「曜変天目」に次いで重宝されている「油滴天目」など、
中国陶磁ファン垂涎の名品が数多く紹介されています。
永青文庫でこれほどまでレベルの高い中国陶磁展が観られるとは!
いい意味で予想が裏切られました。
また、いかにも名品というものだけでなく。
馬をモチーフにした作品や、
若干テンション低めに見える女性像などなど、
単純に造形として面白い作品も多数出展されています。
そういう意味では、中国陶磁に興味がない人でも純粋に楽しめることでしょう。
ちなみに。
個人的にお気に入りは、こちらの《三彩獅子》です。
「そんなに驚かなくても・・・」
と、声を掛けてあげたくなるくらいに、口をあんぐりとさせています。
何かとんでもないものを目にしてしまったのでしょうか。
その表情といい、その雰囲気といい。
なんとなくですが、和田ラヂヲさんの漫画に出てきそうな感じです。
それから、もう一つお気に入りなのが、こちらの《白釉鉄絵瓢形水注》。
フリーハンド感溢れる線と、
つぶらな瞳の龍(?)が、なんとも愛らしいです。
小ぶりなサイズ感も愛らしい。
なんとなくですが、ハッピーセットのおもちゃにありそうな感じです。
そうそう、おもちゃといえば、こんな珍しいものもありました。
こちらは、3人で対戦する三人将棋用の盤とのこと。
中心にあるマスは海。
他にも山や城というマスが見て取れます。
この三人将棋でどうやって遊ぶのか。
いまだに詳しいことは判明していないそう。
あまりに珍しいものゆえ、昭和10年の読売新聞に、
「二千年前この珍品 三人ざし将棋盤」という見出しで取り上げられたほど。
この将棋盤にこれだけの分量が割かれていただなんて!
よっぽど他にニュースが無かった日なのかもしれません。