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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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特別展「本阿弥光悦の大宇宙」

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ある時は「寛永の三筆」にも数えられる書家、

ある時は国宝《舟橋蒔絵硯箱》を生み出す工芸家、

またある時は「琳派」の総合芸術プロデューサー、

しかしてその実体は、江戸の天才マルチクリエーター、本阿弥光悦。

そんな彼の大規模な回顧展が現在、

東京国立博物館 平成館にて開催されています。

その名も、“特別展「本阿弥光悦の大宇宙」”です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


“本阿弥光悦のすべて”でも、

“本阿弥光悦の全貌”でもなく。

“本阿弥光悦の大宇宙”。

従来のトーハクのイメージから脱却したような攻めたタイトルです。

しかも、キャッチコピーは、「始めようか、天才観測。」

館内によっぽどのBUMP OF CHICKENファンがいるのでしょうか。

攻めに攻めたキャッチコピーです。

 

 

と、それはさておきまして。

出展数は、110件(途中展示替えあり)。

それらの中にはもちろん国宝の《舟橋蒔絵硯箱》や、

 

国宝 舟橋蒔絵硯箱 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵

 

 

天才絵師・俵屋宗達とのコラボ作、

《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》も含まれています。

 

重要文化財 鶴下絵三十六歌仙和歌巻(部分)

本阿弥光悦筆/俵屋宗達下絵 江戸時代・17世紀 京都国立博物館蔵

 

 

ちなみに。

本阿弥光悦の家系は代々、

刀剣の研磨や鑑定を行ってきました。

本阿弥家は、いうなれば日本刀鑑定の名門です。

それゆえ、展覧会では本阿弥光悦の家業、

刀剣の鑑定家としての側面にもスポットが当てられています。

 

国宝《刀 金象嵌銘 城和泉守所持 正宗磨上 本阿(花押)》 相州正宗 鎌倉時代・14世紀 東京国立博物館蔵

 

 

なお、こちらの手前に見えるのは、

本阿弥家だけが発行を許された刀の鑑定書です。

 

手前)折紙 江戸時代・宝永2年(1705) 兵庫・黒川古文化研究所蔵

奥)『名物帳』 江戸時代・安永8年(1779) 東京国立博物館蔵

 

 

その名は、「折紙」。

そう、今でも当たり前に使う言葉「折紙付き」の語源となったものです。

個人的には、本阿弥家が鑑定した刀剣よりも、

「折紙」の実物が観られたことにテンションが上がりました。

 

 

 

会場では、天才マルチクリエイター・光悦の全仕事、

まさに、光悦の大宇宙が余すことなく紹介されています。

あまりにもジャンルが多岐にわたっているので、とても一人の回顧展とは思えないほど。

もしかしたら、光悦は一つの宇宙でなく、

並行世界(パラレルワールド)の宇宙にも存在していたのかもしれません。

 

 

さてさて、工芸、書、刀剣の展示もさることながら、

個人的にもっとも心を奪われたのが、光悦の茶碗にスポットを当てたコーナーです。

 

重要文化財 黒楽茶碗 銘 時雨 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 愛知・名古屋市博物館蔵

 

 

光悦が本格的に作陶を始めたのは、60歳を過ぎてからだったそう。

しかし、遅咲きとは言え、さすがは天才・光悦、

陶芸においても、その才能をいかんなく発揮しました。

光悦が作り出した茶碗そのものももちろん素晴らしいのですが、

本展では、その魅力をスポットライトが最大限に引き出しています。

 

黒楽茶碗 銘 村雲 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 京都・樂美術館蔵

 

椀の表面に光が当たり、キラキラと光り輝いていました。

その姿は、まさに夜空のよう。

午前二時に望遠鏡を担いで観測しに行く夜空のようです。

思わずほうき星を探してしまいました(←?)。

 

さらに、ディスプレイも秀逸。

黒く輝く台の上に茶碗が1点だけ置かれており、

それらの展示ケースが広めの空間に距離を置いて設置されています。

 

「第四章 光悦茶碗-土の刀剣」展示会場風景

 

 

そのおかげで、空間に茶碗だけが、

まるでポツンポツンと浮かび上がっているよう。

まさしく、光悦の茶碗の大宇宙でした。

この茶碗のコーナーが観られるだけでも、訪れる価値は十分にあり!

アートテラー折紙付きの展覧会です。

星星

 

 

 ┃会期:2024年1月16日(火)~3月10日(日)

 ┃会場:東京国立博物館 平成館
 ┃https://koetsu2024.jp/

 

 

 

 

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