「リアルファクトリー」をコンセプトに、
印刷の美しさや奥深さ、楽しさを体感できるミュージアム、
市谷の杜 本と活字館に久しぶりに行ってきました。
これまでは全日、事前予約制でしたが、
現在は、土日祝に関しては、予約は必要ないようです。
ふらっと入れるようになったのは、良いことですね。
さて、そんな市谷の杜 本と活字館では現在、
“活字の種を作った人々”という展覧会が開催されています。
活版印刷に必要不可欠なモノ。
それは、活字です。
では、その活字は、一体どうやって作られているのでしょうか?
実は、活字を大量に作るために、
まずは、活字の型となる「種字」というものが作られるようです。
種字は判子と同じく、左右逆に作られていますね。
この種字をもとに、文字の部分が凹状となる母型が作られます。
その母型に鉛合金を注ぎ、冷やせば活字ができるというわけです。
今の今まで考えたことがなかったですが、
活字ができるまでには、そんなにも工程が必要だったのですね。
で、この種字を作っていたのが、種字彫刻師と呼ばれた職人たち。
彼らは、下書きなしで左右反転した文字を彫り上げていました。
また、1文字につき、1つ作ればいいというわけではありません。
デジタルフォントや写植と違って、
拡大縮小ができないため、すべてのサイズ分を作る必要があります。
もっとも小さい種字は、2mm角にも満たないとか。
そんな超絶技巧を持ちながらも、これまで種字彫刻師が、
美術界や工芸界で取り上げられることはありませんでした。
さらに、当時の印刷業界では、職人の名前を表に出さないのが一般的だったため、
彼らのフィールドである印刷業界でも、やはりそこまで日の目は当たっていなかったそう。
本展では、辛うじて記録の残っている種字彫刻師たちをフィーチャー!
まず本展以外では紹介される機会がないであろう、
種字彫刻師の人物相関図パネルも展示されていました。
残念ながら、一人も存じ上げません。。。
まったく見たこと無いドラマの相関図を見ているかのようでした(笑)。
ちなみに。
今回紹介されていた14人の種字彫刻師の中で、
特に重要と思われるのが、“名人”と謳われた君塚樹石。
彼が地金に直接彫ったこの種字だけは、
1月28日までの期間限定展示となっていました。
(注:その後はパネルでの展示)
活字のもととなる種字。
名も無き職人たちが作った種字は、
純粋に造形としてプロダクトして、美しかったです。
この展覧会を訪れなかったら、まず間違いなく、
種字や種字彫刻師の存在を知ることなく、一生を終えたことでしょう。
そういう意味でも、とても意義のある展覧会でした。
ちなみに。
1階の常設展スペースには、
種字から作られた活字がたくさん収められたケースがあります。
そのケースを何気なく眺めていたところ、
とんでもない事実に気が付いてしまいました!
『愛』の活字だけ、ごっそり無くなっていました。
愛はどこへ行ったのか?