年齢関係なし。所属関係なし。
未発表の平面作品であれば、
基本的に何でもありのガチンコバトル的な公募コンクール。
それが、”FACE展”です。
主催はSOMPO美術館と読売新聞社。
2012年度よりスタートし、今回で12回目を迎えました。
エントリー数は前回を大きく上回って、1184点。
そこから厳選な審査を経て、見事入選した78点が、
現在、SOMPO美術館の展示室に一堂に会しています。
見事、グランプリの座に輝いたのは、
津村光璃さんの《溶けて》という作品でした。
一見すると、普通の(?)抽象画のように見えますが、
実は、こちらはろうけつ染めで制作された作品なのだそう。
しかも、「蝋のもみ落とし技法」や、
「アンスラゾール染料」といった異なる技法が使われているのだとか。
明るい色があったり、暗い色があったり。
楽しげな印象だったり、不穏な印象だったり。
ザラザラした絵肌だったり、ツヤツヤした絵肌だったり。
いろんな要素が混在しながらも、
決して、それらが対立することはなく。
むしろ引き立て合って、共存しているような、
絶妙なバランスが保たれており、不思議と見飽きない作品でした。
なお、FACE展の歴史の中で、
抽象画がグランプリに輝いたのは、今回が初めてとのこと。
改めて、津村さん受賞おめでとうございます!
さてさて、グランプリに次ぐ優秀賞は、3名が選ばれています。
一人は、美術教師をしているという佐々木綾子さん。
描かれているのは、同僚の机とのこと。
あまりにモノで溢れているため、
作業できるスペースが残されていません。
本来は中心に置かれていたであろう、
ノートパソコンも、上のほうに追いやられて(?)います。
この教師が特別片づけられないタイプの方なのか、
はたまた、高校教師全体がオーバーワーク気味なのか。
どちらにせよ、お疲れさまです。
2人目の優秀賞受賞者は、かわかみはるかさん。
こちらの《26番地を曲がる頃》は、
ある日の路線バスの光景をモチーフにした作品とのことです。
日本画材やパステルだけでなく、
片栗粉や珈琲といったものも使われているそうで、
それが、この独特の色調を生み出しているのでしょう。
画面右にいる赤ちゃんがカワイイのでお見逃しなく!
そして、3人目は塩足月和子さん。
《あまりにも断片的な》という作品で優秀賞を受賞しています。
パッと見、よくあるタイプの壁紙のようですが、
近づいてみると、無数の芋虫のようなオブジェで構成されているのがわかります。
実はこれらは、塩足さん自身が、
粘土をギュッと手で握りしめて、それを石膏で固めたものです。
嬉しい時や悲しい時など、感情が動かされた時に、ギュッと握りしめる。
その作業を6年間続け、バケツ何倍分も溜まったものを、
1つ1つ選びながら、四角いフレームに敷き詰めていったそうです。
ちなみに。
塩足さんは昨年、制作に本腰を入れるため、
思い切って社会人を辞め、無職の状態でこの制作に挑んだとのこと。
つまり、作家デビュー1年目にしての優秀賞受賞!
それはさぞかし、粘土を強く握りしめたことでしょう。
これからの活躍が気になるアーティストの一人です。
なお、惜しくも受賞を逃した入選作品の中にも、
個人的に惹きつけられる作品は、多々ありました。
3年連続で入選を果たした現役高校生の石原陸郎さんや、
東京駅が見える光景を独特なタッチで描いた多田耕二さん、
雪道の何気ない光景を色彩豊かに描いた清水英子さんも印象的でしたが。
技法的に一番興味深かったのは、今井三十郎さんの作品です。
離れて観るだけでは、何の変哲もない(?)波の絵に思えますが、
近づいてよく観てみると、無数のドットで構成されていることがわかります。
新印象派のさらなる進化系といったところ。
シン・新印象派です。
ちなみに。
SOMPO美術館では2月16日から、
年間パスポートが販売されています。
おそらく美術館の年パス史上初となるデジタルチケット制です。
詳しくは、こちらに↓
デジタル化の波は、ここまで押し寄せてきているのですね。