昨日に引き続き本日も、2020年以来、
4年ぶりの開催となる横浜トリエンナーレの話題をお届けいたします。
さてさて、過去7回のヨコトリ同様に、
メイン会場となるのはもちろん横浜美術館です。
なお、横浜美術館は長らくの間、
開館以来初となる大規模改修工事を行っていました。
改修以前、最後となる展覧会“トライアローグ”が、
開催されていたのは2020年末から21年にかけてのこと。
つまり、ほぼ4年ぶりとなる横浜美術館。
外観こそ大きな変化はなかったですが、
中に足を一歩踏み入れてみて、ビックリ!
天井から気持ちの良い光が燦燦と降り注いでいました。
また、4年ぶりゆえ、気が付きませんでしたが、
美術館の学芸員さん曰く、展示室の天井が高くなったそうです。
言われてみれば、そんなような気もします。
ちなみに。
メイン会場となる横浜美術館には、
出展作品の全体の約4分の3が展示されています。
そのすべてを紹介していたら、さすがにキリがないので。
ここからは、特に印象に残った作品に絞って紹介していきましょう。
まずは、アメリカの作家ジョシュ・クラインによる作品から。
透明なゴミ袋の中に、リアルな人が入れられています。
もちろん本物ではないのですが、実物を観たなら、
本物の人間そっくりなリアリティが感じられることでしょう。
なんでも3Dプリンターなどの最新技術が導入されているのだとか。
なお、ゴミ袋に入れられているのは、弁護士や会計士といった、
今後20年後には存在してないだろうという職業ばかりとのことです。
続いて、印象に残っているのも、アメリカのアーティスト。
シカゴを拠点に活動するポープ・Lです。
アメリカといえば、スーパーマン(?)。
ということで、かれは、スーパーマンの衣装を着て、
何年もかけて全長35キロの道のりを制覇したのだとか。
労力だけで観れば、スゴいのはスゴいですが、
冷静に考えたら、彼は一体何をやっているのでしょう(笑)??
『電波少年』の一企画かと思いました。
さらに、もう一人紹介したいアメリカ人作家が、写真家のノーム・クレイセン。
彼の作品は、壁の上にある5点です。
パッと見た瞬間、マルボロの広告が頭に過ってしまったのですが。
なんと作者のクレイセンは、1978年から91年まで、
実際にマルボロの広告のために、西部のカウボーイを撮影していたのだそう。
まごうことなきマルボロの広告でした。
続いて紹介したいのは、現在はウィーンに在住の丹羽良徳さん。
生産的で無意味なパフォーマンスを公共空間で行うアーティストだそうで。
会場では彼がこれまでに行ってきたパフォーマンスの数々が紹介されていました。
中でもインパクトが強かったのが、《水たまりAを水たまりBに移しかえる》。
字面だけ見れば、“まぁ、そんなものか”という感じでしたが。
映像を観たら、想像の斜め上を行っていました。
まさかの口移し!
2004年に制作された作品なので、特に問題はないのでしょうが(←?)。
もしここ数年でこの作品を発表していたら、
『水たまりペロペロ』とか言われて、プチ炎上していたかもしれません。
ちなみに。
水たまりの口移し以上に、
身体を張っているなァと思ったのが、こちらのパフォーマンス↓
自宅の鍵を複製して路上で配布する。
若手芸人が、自分のLINE IDや、
スマホの番号をテレビで晒す的なノリがありますが、
それが霞んでしまうくらいのインパクト。
究極のプライベート晒し行為です。
最後に紹介したいのは、香港生まれ、
香港で活動を続けるエクスパー・エクサー。
日本で紹介されるのは、今回が初となるアーティストです。
僕も今回のトリエンナーレを通じて、
初めて知る人物でしたが、興味深かったのはその肩書き。
キャプションによれば、アーティストかつミュージシャン、そして挑発者とありました。
・・・・・挑発者とは??
しかも、「2012年から15年には、九龍において、
非合法のギャラリー兼パフォーマンススペースを運営しました」とのこと。
・・・・・非合法??
不適切にもほどがありそうなアーティストです。
会場ではそんな彼のこれまでの活動や、作品の数々が紹介されています。
そのうちの1つがこちら↓
一見すると、ただの抽象画のようですが、
よく見ると、その周りに何かがびっしりくっ付いています。
実はこれらはすべて人の歯(本物!)。
そう認識した瞬間、思わず鳥肌が立ちました。
なお、キャプションによれば、エクスパー・エクサーは、
「自分が放火魔の志向を持つことに気づき」ともありました。
気づいたレベルで留まってくれればいいのですが、
過去には、火炎瓶を使ったパフォーマンスもしていたそう。
横浜トリエンナーレが無事に終幕することを切に願っております。
さてさて、今回の横浜トリエンナーレは、
例年以上に、戦争やデモ、ジェンダー、貧困といった、
社会問題に目を向けた作品が多かった印象を受けました。
それゆえ、観ていて、決してハッピーな気分にはなれません。
が、しかし、「野草=雑草」というテーマを掲げているだけに、
踏まれてもまた生えてくる雑草のように、どんなに辛くても立ち上がれる、
そんな強さや希望も感じられたような気がします。
そういえば、今回の横浜トリエンナーレは、
昨年12月から今年3月にかけての開催予定だったにも関わらず、
世界的な半導体不足により、横浜美術館の改修工事が遅れ延期になっています。
そんな困難を乗り越えた第8回横浜トリエンナーレ。
雑草魂がキラリと輝く横浜トリエンナーレです。