現在、國學院大學博物館で開催されているのは、
“榧園好古図譜―北武蔵の名家・根岸家の古物”という展覧会。
こちらは、北武蔵、現在の埼玉県熊谷市の名家、
「根岸家」にまつわる古物(と書いて「たから」と読む)を紹介するものです。
北武蔵の華麗なる一族、根岸家の中で、
まずフィーチャーされていたのが、11代当主の根岸友山。
1863年に江戸幕府によって組織された浪士組に参加し、
上洛後は、近藤勇や芹沢鴨らとともに京都に残ったことで知られています。
今でも毎年4月には、熊谷市で、
友山を称える友山まつりが開催されているそうな。
まさに、地元の名士といった人物です。
そんな友山は明治時代に入ってから、
東京国立博物館の創立に関わった蜷川式胤や、
北海道の名付け親として知られる松浦武四郎といった、
好古家(=骨董品や郷土史などの愛好家)と深い親交を結んでいたそう。
そんな縁もあり、根岸家には松浦武四郎による軸画も伝わっているようです。
そして、本展のもう一人の主役が、
ムンクのようなタッチで肖像画が描かれたこちらの人物。
友山の息子で、好古家だった根岸武香です。
彼もまた、多くの好古家や学者と親交があったようで、
あのシーボルトの息子や、大森貝塚を発見したモースも武香を訪ねていたとか。
本展のハイライトともいうべきは、
そんな武香の蒐集品に関する図譜。
それが本展のタイトルにもなっている『榧園好古図譜』です。
実は、『榧園好古図譜』は存在こそ伝わっていたものの、
そのもの自体は、昭和30年代を境に行方不明となっていたそうで、
近年奇跡的に再発見されたのだとか。
本展では、その貴重な『榧園好古図譜』が初公開!
さらに、図譜に掲載されている武香の蒐集品が併せて展示されています。
ちなみに。
こちらの六鈴鏡に関しては、武香の収蔵後に、
服部和彦なる人物の手に渡り、その後、國學院大學博物館に寄贈されたもの。
時代を超えての奇跡の再会(?)です。
数ある展示品の中でも、特に見逃せないのが、こちらの埴輪。
東京国立博物館が所蔵する重要文化財の《人物埴輪(武装男子)》です。
明治9年に熊谷氏の畑から出土したもので、
武香がそれを買い取り、当時の帝国博物館に寄贈したとのこと。
「短甲の武人」の名でも知られており、
昭和48年にトーハクで開かれた特別展覧“はにわ”では、
図録の表紙を単体で飾ったほどの一流(?)の埴輪です。
片目をちょっとつむった感じが、ダニエル・クレイグのようで、セクシーでした。
それから、もう一つある意味貴重だったのが、こちらの女子埴輪です。
頭部が大きく破損しているため、
反対側に回ると、内側を観ることができました。
これまでたくさんの埴輪を観てきましたが、
初めて埴輪の内側の姿を目にした気がします。
外側と内側では、まったくの別人のよう。
心なしか、内側の方がすっぴん感がありました。
埴輪もやはり、女子は化粧(?)で大きく変わるのかもしれません。
最後に、埴輪関連でもう一つインパクトが強かった作品をご紹介いたしましょう。
幕末から明治にかけて、全国を行脚した放浪の画人で、
あの有名な遮光器土偶を発見したことでも知られる蓑虫山人が、
武香所蔵の埴輪を主体に描いたという《埴輪群像図》です。
脱力感がハンパありません・・・(笑)
見れば見るほど、力が抜けていくようでした。
吉田戦車さんの漫画のタッチにどこか通ずるものもあります。