今年2024年は、大正ロマンを代表する画家、
竹久夢二の生誕140年のメモリアルイヤーです。
それを記念して、現在、東京都庭園美術館では、
“生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界”が開催されています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
竹久夢二の展覧会は毎年どこかで開催されているような。
それに加えて、竹久夢二美術館に、
年に数回は足を運んでいることもあって、
個人的には、“あぁ、また竹久夢二かァ”といった感じで。
正直なところ、あまり新鮮味を感じてはいませんでした。
が、しかし!!
この展覧会には、いい意味で予想を裏切られました!
竹久夢二にこんな魅力的な一面があったとは!!
ノーマークでごめんなさいの反省も込めて、3ツ星です。
本展で特にフィーチャーされていたのは、
油彩画家としての竹久夢二の側面でした。
現存する夢二の油彩画は約30点と少なく、
本展ではその貴重な油彩画の数々が一堂に会しています。
《青いきもの》 1920(大正9)年、油彩、カンヴァス
《家の見える風景》 大正前期、油彩、板
その作風は、どこかセザンヌや、
ムンクといった画家を彷彿とさせるもの、
中には、ナビ派を彷彿とさせるものもありました。
個人的には、夢二の日本画よりも、
断然、夢二の洋画のほうがタイプです。
洋画家を続ければ良かったのに、とマジで思いました。
そんな数ある夢二の油彩画の中でも、
本展のハイライトともいえるのが、こちらの《アマリリス》。
その見た目から、“夢二のモナ・リザ”とも呼ばれています。
《アマリリス》 1919(大正8)年頃、油彩、カンヴァス
実はこちらの油彩画は、80年ほど行方不明になっていたもので、
近年ようやく発見され、昨年に岡山の夢二郷土美術館の新収蔵品となりました。
発見後、東京で公開・展示されるのは、もちろん今回が初めて。
さて、この《アマリリス》は、1919年に福島県で開催された、
“竹久夢二抒情画展覧会”に出品された重要な作品だったそうで。
その後、夢二が一時暮らしていた菊富士ホテルに贈られ、
ホテルが閉館するまで、応接間に掛けられていたようです。
ちなみに、描かれているのは、
夢二の恋人であったお葉(本名:佐々木カネヨ)。
本人がそういう顔立ちだったのか。
はたまた、夢二の好みが反映されているのか。
離れ目なのが特徴的です。
なお、《アマリリス》に限らず、夢二は離れ目美人を多く描いています。
《湖畔舞妓図》 昭和初期、紙本着色
《立田姫》 1931(昭和6)年、紙本着色
河合優実に森田望智、小松菜奈、上白石萌音…etc
そういえば、ここ最近ブレイクしている女優さんは、離れ目美人が多いような。
もしかしたら、その流れに乗って、
夢二式美人が再ブレイクするかもしれません!
ちなみに。
展覧会では油彩画以外にも、
もちろん、夢二の日本画作品も充実しています。
さらには、セノオ楽譜や装幀といった、
夢二のデザイナーとしての側面にもスポットが当てられています。
その生涯を通じて芸術で人々の暮らしを彩ることに関心を向けたという竹久夢二。
それだけに、旧朝香宮邸の邸宅空間との相性はバッチリでした。
照明やマントルピース、壁紙など、
旧朝香宮邸のしつらえのすべてが、
この竹久夢二展のための演出のように思えてしまったほど。
本展はこの後、数会場を巡回するそうですが、
東京都庭園美術館ならではの展示体験は、是非とも味わって頂きたいものです。
ちなみに。
夢二作品も充実していましたが、
本展はオリジナルグッズも充実していました。
中でも特筆したいのが、図録です。
“図録なんてどの展覧会でも売ってるじゃん!”と思われる方が多いでしょうが。
なんと本展では、オリジナルの箱入り図録が販売されていました。
それも、4種類。
この発想はありそうでなかった!
図録革命です。