安宅産業株式会社の会長・安宅英一が、
個人の趣味ではなく、事業の一環として収集した東洋陶磁コレクション。
それが、安宅コレクション。
その質は極めて高く、世界屈指の東洋陶磁コレクションと称されています。
そんな安宅コレクションにピンチが訪れたのは、1977年のこと。
安宅産業が経営破綻してしまったため、
コレクションが散逸する可能性が出てきたのです。
そこに救いの手を差し伸べたのが住友グループ。
安宅コレクションを購入し、大阪市に寄贈しました。
こうして1982年に誕生したのが、大阪市立東洋陶磁美術館です。
そんな大阪市立東洋陶磁美術館は、
2022年より長期の改修工事を行っていました。
そして、今年4月にリニューアルオープンを果たしました。
パッと見こそ、大きな変化は感じられないかもしれませんが、
これまでの建物に増設する形で、ガラス張りのエントランスが誕生!
曲面のコンクリート壁が印象的な開放的なエントランスとなっています。
さらには、美術館の公式キャラクターも誕生!
ネコみたいなトラみたいなこのキャラクターは、
美術館の英語表記「The Museum of Oriental Ceramics, Osaka」から、
「mocoちゃん」という名前が付けられているようです。
なお、この「mocoちゃん」のモデルとなっているのは、
同館のコレクションの一つである《青花虎鵲文壺》に描かれたトラ。
こちらの壺には・・・・・
トラだけでなく、カササギも描かれているのですが、
どうやら、そちらはキャラクターに採用されなかったようです。
カササギが「mocoちゃん」を見る目が、
ここらなしか、恨みがましいように見えます(笑)。
そうそう、キャラクターといえば、
2階ロビーにひっそりと、謎の鳥がいますので、
そちらもどうぞお見逃しなきように。
(開館以来、ここにいるそうですが、あまり気づかれていないそうです)
さて、今回のリニューアルオープンに際して、
新たに爆誕したのが、『体感!国宝「油滴天目茶碗」』のコーナー。
こちらは、その名の通り、美術館が誇る国宝、
《油滴天目茶碗》の触り心地を体験できるコーナーです。
まず鑑賞者は、往年のバラエティ番組の定番、
「箱の中身はなんだろな」の要領でボックスに手を突っ込みます。
すると、中に《油滴天目茶碗》と同じ形、
同じ重さに完全再現された茶碗が入っており、
その触り心地を心行くまで体感することができるのです。
また、見た目は、VR映像で再現されており、
それが、手前のモニターに映し出されるという仕組みに。
箱の中で茶碗を動かすと、それに連動して、
モニター内のバーチャル《油滴天目茶碗》も動くきます。
なお、こうした斬新な鑑賞方法を提唱するのは、
大阪市立東洋陶磁美術館の開館以来のお家芸です。
例えば、青磁の名品を紹介する展示室。
古来より、青磁は、秋の晴れた日の午前10時ごろ、
北向き部屋で障子1枚隔てたほどの日の光で見るのが一番良いとされているそうで。
その理想を実現させるべく・・・・・
本当に天窓から自然光を取り入れています。
今でこそ、自然光を取り入れる美術館は珍しくないですが、
実現させた当時は、世界初の自然採光展示室だったのだとか。
そんな自然採光展示室で観る国宝《飛青磁花生》は格別でした。
また、陶磁器はできれば360度どこからでも鑑賞したいもの。
それを実現させるために、やはりこちらも世界初として、
展示品がゆっくりと回る回転台付き展示ケースを実現させています。
回転台付き展示ケースは全部で3つ。
そのうち1つでは、「MOCOのヴィーナス」こと、
8世紀唐時代製の《加彩 婦女俑》がゆっくりと回っていました。
その姿を見て、『熱湯コマーシャル』を連想してしまうのは、きっと僕だけでないはず。
脳内で「♪ナ~ナナナナ~ナナナナ~
ナナナ~ナナナ~ナナナナ~」というBGMが流れました。
最後に。
今回のリニューアルのもう一つの目玉といえるのが、
エントランス内に誕生したカフェ「café KITONARI」です。
オリジナルメニューも充実しており、
それらの中には、MOCOコレクションをモチーフにしたものも。
せっかくなので、国宝《飛青磁花生》を再現したドリンクをオーダーしてみました。
その再現度のクオリティはかなり高かったです!
お味に関しては・・・まぁ・・・まぁ・・・うん。
一般的な抹茶ラテです(笑)。