1944年6月6日 ゼラチン・シルバー・プリント、横浜美術館蔵、© ICP/Magnum Photos
こちらは、戦争写真の傑作と評される 《Dデイ、オマハ・ビーチ、ノルマンディー海岸》 という一枚。
皆様も、この有名な写真を、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
そして、この有名な写真の作者ロバート・キャパの名前も、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
しかし、このロバート・キャパという名前が、
実は、2人の人物によって創り出された架空の写真家であったということは、ご存知でしたか??
正直、僕は今日の今日まで知りませんでした。。。
『キン肉マン』 の作者・ゆでたまごが、
2人組だったということ以上にビックリです (←何と比べてるの?)
ではでは、ロバート・キャパとは、本当のところは何者なのでしょうか?
《ロバート・キャパ、セゴビア戦線》 1937年、ゼラチン・シルバー・プリント、ICP蔵、©ICP
こちらの男前が、いわゆるロバート・キャパこと、アンドレ・フリードマン (1913~1954)
で、こちらの写真を撮ったゲルダ・タロー (1910~1937) が、もう一人のロバート・キャパです。
実は、アンドレ・フリードマン (♂) とゲルダ・タロー (♀) は、公私ともにパートナー。
パリで出会い意気投合した二人は、
1936年春に “ロバート・キャパ” という架空の名を使って報道写真家活動を始めます。
“ロバート・キャパ” としての仕事が軌道に乗ってほどなくして、
ゲルダ・タローは、自身の名で、世界初の女性報道写真家として自立。
その後も、アンドレ・フリードマンは、“ロバート・キャパ” という名前を使い続けたのです。
・・・・・と、ここで疑問。
“どうして、ゲルダ・タローの存在は、あまり知られていないのでしょうか?”
それは、ゲルダ・タローが自立して間もなく、
スペイン内戦の取材中に、27歳という若さで命を落としてしまったから。
そのため、作品自体もほとんど残っていなく、
“ロバート・キャパ” の生みの親のでありながら、その存在があまり知られていなかったのだとか。
そんな知られざるゲルダ・タローにもスポットを当てた、これまでにない切り口のロバート・キャパ展、
“ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家” が、3月24日まで横浜美術館にて開催されています。
会期のスタートと同時に、先週早速訪れてきましたが。
まず何よりも特徴的だったのが、ゲルダ・タロー展と、
いわゆるロバート・キャパ展 (≒アンドレ・フリードマン展) とが独立していたこと。
ゲルダ・タロー展は、会場の壁を赤で統一。
いわゆるロバート・キャパ展のほうは、会場の壁が白で統一されていました。
それぞれ独立していたのは、会場だけではありません。
今回の図録も・・・
ちゃんと、このように独立しています!
もちろん購入する際にも、どちらか一方だけを買うというのも可能です。
美術展のチケットに関しては、どちらか一方だけを買うというわけにはいきませんのであしからず。
さてさて、まずは、ゲルダ・タロー展から観賞。
《ゲルダ・タロー、グアダラハラ戦線》 1937年7月ゼラチン・シルバー・プリント、ICP蔵 ©ICP
こちらの撮影者不詳の写真に写っている人物こそが、ゲルダ・タローさん。
ドイツ人にしては、 “タロー” という名前が日本人っぽいですね。
・・・・・などと思っていたら、あの岡本太郎に由来するペンネームとのこと (またペンネーム!)
会場では、《海岸で訓練中の共和国軍女性兵士、バルセロナ郊外》 や、 1936年8月 インクジェット・プリント ICP蔵 ©ICP
《共和国軍兵士たちと人民戦線の車、バルセロナ》 など、 1936年8月 インクジェット・プリント ICP蔵 ©ICP
彼女のオリジナルプリントを中心とする写真83点が日本初公開されています。
特徴的だったのは、ほとんどの写真が、低い位置から撮影されていたこと。
女性報道写真家で早くにして亡くなったという事実を知った上で見たからでしょうか、
それらの低い位置から撮られた写真は、どこか小動物の目線を連想させ、儚さすら感じました。
一言で言い表すならば、 “けなげな写真” とでも言いましょうか。
ともあれ、長い時代を経て、ゲルダ・タローに、
こうして日本でようやくスポットが当てられたという事実が、尊いことのように思えました。
続いて、いわゆるロバート・キャパ展へ。
こちらの目玉作品は何と言っても、キャパの代表作 《共和国軍兵士、コルドバ戦線、スペイン》
通称、 「崩れ落ちる兵士」 です。
1936年9月5日頃 ゼラチン・シルバー・プリント 横浜美術館蔵 ©ICP / Magnum photos
共和国軍の兵士が撃たれた瞬間を捉え、
ニュース誌に幾度となく掲載されたこの写真は、キャパの出世作にして最大の代表作です。
最初に、この写真が掲載された 『LIFE』 誌では・・・
“ROBERT CAPA'S CAMERA CATCHES A SPANISH SOLDIER THE INSTANT
HE IS DROPPED BY A BULLET THROUGH THE HEAD”
(キャパのカメラは兵士の頭が銃で撃ち抜かれる瞬間をとらえた)
と文章が添えられていたそうなのですが。
実は、その後の研究の結果、この兵士は撃たれたわけでなく、
足を滑らせて後ろに転びそうになっているだけということが発覚!
そのしょうもない事実に、こっちが崩れ落ちそうになりました (笑)
さらに、ここ最近になって、ノンフィクション作家の沢木耕太郎氏が、
「この写真を撮ったのは、本当はゲルダ・タローだ!」 という新説を発表したばかり。
何とも疑惑の絶えない写真です。
この 「崩れ落ちる兵士」 を筆頭に、冒頭で紹介した 《Dデイ、オマハ・ビーチ、ノルマンディー海岸》 、
さらに、本格的なデビュー作 《デンマークの学生に講演するレオン・トロツキー、コペンハーゲン》
1932年11月27日 ゼラチン・シルバー・プリント 横浜美術館蔵 ©ICP / Magnum photos
を含む、ロバート・キャパの生涯の全ワークスを網羅した、
193点もの横浜美術館キャパコレクションが一挙大公開されています。
こちらだけでも十分に満足度が高い美術展なのに、
ゲルダ・タロー展も楽しめるなんて、一粒で二度美味しいロバート・キャパ展です。
最後に、ロバート・キャパ展に展示されていた写真の中で、印象に残ったものを数点ご紹介。
まずは、緊迫感が如実に伝わってくる 《空襲警報、バルセロナ》
1939年1月 ゼラチン・シルバー・プリント 横浜美術館蔵 ©ICP / Magnum photos
続いて、紐の結び目と少女の目が奇跡的なコラボを見せる (?) 一枚。
《聖徳太子殿竣工式、四天王寺、大阪》
1954年4月22日 ゼラチン・シルバー・プリント 横浜美術館蔵 ©ICP / Magnum photos
「♪あたりまえ体操~」 という歌が聞こえてきそうな 《女性たちの訓練、漢口》 も良かったですが。
1938年3月 ゼラチン・シルバー・プリント 横浜美術館蔵 ©ICP / Magnum photos
マイベストは、 《早朝の散歩に出るハリー・S・トルーマン大統領、帰省した故郷で、インディペンデンス、ミズーリ州》 です。
1948年12月 ゼラチン・シルバー・プリント 横浜美術館蔵 ©ICP / Magnum photos
トルーマン 「それじゃ、せーので、右足からな」
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