町田市立国際版画美術館で開催中の “空想の建築―ピラネージから野又穫へ―” へ行ってきました。
こちらは、文字通り、 「空想の建築」 をテーマにした美術展です。
一口に、 「空想の建築」 と言っても。
今は無き古代エジプトの風景を空想して復元したものや、
《テーベのカルナック宮殿(『<エジプト誌>古代篇』より)》
1812年刊 エッチング 町田市立国際版画美術館
聖書や物語といった空想の世界に登場する建築を描いたもの、
ジョン・マーティン 《『失楽園』より「万魔殿の出現」》
1824年 メゾチント 町田市立国際版画美術館
現実の風景を、さらに夢幻的に描いたもの・・・などなど、
ハワード・N・クック 《マンハッタン南端部》
1930年 リトグラフ 町田市立国際版画美術館
そのテイストは、さまざま。
美術展では、実に多種多様な 「空想の建築」 が紹介されています。
今回紹介されている数多くの空想建築家 (?) の中で、
個人的にお目当てだったのが、現代の空想建築家・野又穫さん。
デビューから一貫して 「空想の建築」 のみを描き続ける生粋の空想建築家です。
ちなみに、伊坂幸太郎さんの 『モダンタイムス』 や、
モダンタイムス(上) (講談社文庫)/講談社
¥590
Amazon.co.jp
石田衣良さんの 『ブルータワー』 の装丁に使われているのが、野又穫さんの作品。
ブルータワー (徳間文庫)/徳間書店
¥800
Amazon.co.jp
「こんな建物は、現実には無いよね。」
と判っていながらもに、心のどこかで、
「いや、でも、どこかで、こんな建築を見たような・・・吉祥寺だっけ?」
と、デジャヴのようなものを感じずにはいられない。
そんな特異な空想建築が描かれた野又さんの作品は、
静かな世界観ながらも、一度目にしたなら決して忘れることのできないインパクトがあります。
僕も、かつて東京オペラシティアートギャラリーで、
彼の作品を目にして以来、野又ワールドの虜になった一人なのですが。
おそらく今回の美術展を企画した方も、そんな野又ワールドの虜になった一人かと思われます。
というのも、
「まぁ、野又さんの作品が、2~3点あるだけでも観ておきたいなぁ♪」
くらいの軽い気持ちで美術展を訪れたところ、
展示されていたのは、2~3点どころか、その十倍以上の35点!
第2企画展示室が、まるまる野又穫さんの個展状態だったのです!!
しかも!
展示されているのは、 《遠景-3/Skyglow-H3》 に、
2008年 アクリル、キャンバス 群馬県立近代美術館寄託
《光景-1/Skyglow-V1》 、
2008年 アクリル、キャンバス 作家蔵
さらには、 『モダンタイムス』 や、
『ブルータワー』 の表紙を飾った絵の実物に・・・と、野又さんの代表作ばかり。
もちろん版画作品ではなく、すべてキャンバス作品です。
ここまで堂々と大々的に展示されていると、
「・・・・・・・あれ、ここって、町田市立国際版画美術館だよね?」
という、当たり前のツッコミが、会場では浮かびませんでした (笑)
(家に帰って、美術展を思い返してから、ようやくそのことに気づきましたw)
これは、もはや完全に野又穫祭り (笑)
確実に、この美術展の企画者の推しメンは、野又穫さんです。
野又さんのファンには、たまらない濃密な空間でした。
野又さんの作品を未見の人は、きっとこの濃密な空間を体験して野又ファンになるはず。
「空想建築を描く画家が好きです。
でも、野又穫さんのほうがもっと好きです。」 な美術展・・・という印象もあるでしょうが。
野又穫さんの作品なくして、 「空想の建築」 をテーマにした美術展は成立しなかったでしょうし。
さまざまな空想建築を描く画家たちが紹介されていたからこそ、野又穫さんの作品も引き立ったのでしょうし。
なんとも絶妙なバランスの上に成り立っていた美術展だったように思います。
ちなみに、僕のお目当ては、野又穫さんでしたが。
今回の美術展で初めて知ったコイズミアヤさんの作品にも、かなり心を惹かれました。
《未知の信仰のための空の器_meditation》 1998年 作家蔵
回廊のような不思議な建築が、小さな箱の中に収められています。
コイズミアヤさんの作品の世界観にも、
一度目にしたなら決して忘れることのできない静かなインパクトがありました。
野又穫さんの作品に、コイズミアヤさんの作品に。
この美術展で受けた静かなインパクトが、鑑賞から数日経った今でも、ジワジワ効いています。
1位を目指して、ランキングに挑戦中!(現在11位です)
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!
↧
空想の建築―ピラネージから野又穫へ―
↧