今年2013年は、ルネサンス美術の当たり年。
ルネサンスの3大巨匠の美術展が、それぞれ開催されるという、まさに奇跡の年です。
3月には、国立西洋美術館でラファエロ展が。
4月には、東京都美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチ展が開催され、東京のアートシーンが大いに沸きました。
そして、今月、いよいよ真打が登場。
“神のごとき” と称された大芸術家ミケランジェロの想像の秘密に迫る・・・
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
“ミケランジェロ展 天才の軌跡” が、国立西洋美術館にて開催されています!
会期は、11月17日まで。
私の記憶が確かならば...ミケランジェロの作品が来日した機会は、ここ数年で数えるほど。
“ミケランジェロの作品を観るには、イタリアに行くしかないかぁ” と、半ば覚悟をしていました。
それだけに、今回のミケランジェロ展の開催は、まさに青天の霹靂。
1、2点どころか、30点を超すミケランジェロ作品が来日するというではないですか!
美術展を訪れる1週間くらい前から、ワクワクドキドキが止まりませんでした。
さてさて、そんなミケランジェロ展の冒頭で、まず出会ったのが、彼の肖像画。
マルチェッロ・ヴェヌスティに帰属 《ミケランジェロの肖像》
1535年以降、油彩/カンヴァス
フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti
生前のミケランジェロは、肖像画を描かれることを嫌ったのだそうです。
その理由は、若い時に友人とケンカした際に、
思いきり鼻を殴られ、以来、ずっと鼻が少し曲がったままだから。
確かに、注目してみると、鼻が少し曲がっています。
ケンカの代償は、小さくなかったようです (トホホ)
そして、ミケランジェロ直筆の手紙に、
ミケランジェロによる墓碑銘、ミケランジェロによる直筆の詩、
さらには、ミケランジェロが書いた 《食べ物のスケッチと3種のメニュー》 など文書系の展示が続きます。
1518年、ペン/紙
フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti
パンとワインとニシンに・・・
肉食かと思いきや、意外にも魚派だったのですね。
急に親近感が湧きました (笑)
そして、美術展前半の見せ場は、
彼の代表作であるシスティーナ礼拝堂の天井画と祭壇正面壁面の 《最後の審判》
・・・・・と言いたいところですが、
さすがに国立西洋美術館に実物が来日しているわけは無く。
その習作群が紹介されています。
それらの習作が貴重な作品であることは、重々承知しているのですが。
本音を言えば、そろそろ、もっとミケランジェロらしい作品を目にしたいところ。
文書や習作だけでは、少々物足りなを感じてしまいます。
そう思っていた矢先、目の前に現れたのが、こちらの4Kシアターでした。
ハイビジョンの4倍の高解像度を誇る最新鋭の映像フォーマットとして、今話題の4K。
そんな超高精細の4Kカメラで撮影されたシスティーナ礼拝堂内部の映像が楽しめるシアターです。
(映像の撮影は、展覧会開催のわずか9日前に行われたそうです)
もしかしたら、実際に自分の目でシスティーナ礼拝堂を見るよりも、色鮮やかなのでは?
と思うくらいに、感動的な映像体験でした。
美術展の冒頭からここに至るまで、
手紙やら素描やらモノクロの世界が続いていたこともあって、感動もひとしお(笑)
普段の美術展では、あまり映像コーナーの必要性を感じないのですが。
今回の4Kシアターは、食い入るように見入ってしまいました。
必見です。
4Kシアターで、すっかり満足したため、
今回の美術展の目玉作品のことを失念しておりましたが。
目玉作品は、美術展会場の終盤に展示されていました。
1490年頃 大理石
フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti
ミケランジェロが15歳の頃に制作したとされる初期の傑作 《階段の聖母》 です。
これまで門外不出とされ、長期貸し出し展示されるのは、
この美術展が史上初の機会になるという激レアなミケランジェロ作品。
「激レアだから、観るに越したことはない」 というミーハーな理由からだけでなく、
本当に、彫刻として素晴らしい作品だったので、是非、皆様にも観て頂きたい。
特に、素晴らしいのが、布の表現。
大理石で作られていることを、ちゃんと頭では理解しているのに。
どうしても布の柔らかさを感じずにはいられません。
あまりに柔らかなイメージすぎて、途中から、大理石ではなく湯葉に見えてきました (←?)
目で観て味わうだけでなく、想像上の触感をも味わえる逸品です。
どうでもいい話ですが、美術展グッズとして、
この 《階段の聖母》 柄のアルフォート (ブルボンのチョコレート菓子) を販売したら売れた気がします。
(今からでも作ってみてはいかがでしょう?)
もう1点見逃せないのが、 《階段の聖母》 の近くで紹介されていたのが、
ミケランジェロの死の直前に制作されたという 《キリストの磔刑》 です。
1563年頃、木
フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti
パッと見は、お世辞にも、あまり上手くないような気がします。
15歳の頃に、 《階段の聖母》 で、
晩年に、この 《キリストの磔刑》 って、逆じゃないの?という気もします。
でも、しばらく眺めているうちに、
“きっと、彫刻から余計なものを削ぎ落としていくと、この形に辿り着くんだろうなァ”
という気がしてきました。
彫刻家として数々の傑作を生み出したミケランジェロが、
晩年に、どこか日本の仏像にも通ずる木彫作品に辿り着いたというのも、非常に興味深かったです。
写真の角度では写っていませんが、特に、ふくらはぎの表現が見事でした。
ちなみに、今回のミケランジェロ展のラストを飾る作品は、
彼の素描作品の中でも名作の誉れ高い一枚 《クレオパトラ》 でした。
1535年頃、黒石墨/紙
フィレンツェ、カーサ・ブオナローティ所蔵©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti
素描と言えど、まったくもって、 「素」 な 「描」 ではありませんでした (←?)
それくらいに完成度が高すぎる素描作品。
線の美しさに、ため息すること必至です。
ちなみに、美術展のチラシや公式HPで、この 《クレオパトラ》 が出展されるのを事前に知ってはいましたが。
まさか、この 《クレオパトラ》 には、裏面があり、
しかも、あんなクレオパトラの姿が描かれていようとは、想像だにしませんでした。
どのようなクレオパトラなのかは、是非会場で!
前面を眺めてついたため息を、思わず呑みこむこと必至です。
美術展の前半は、比較的ゆったりと。
しかし、美術展のラストに、怒涛の名品ラッシュがやってきます。
美味しいものは最後まで取っておく。
そんな印象の美術展でした。
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ミケランジェロ展 天才の軌跡
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