現在、菊池寛実記念 智美術館では、 “藤本能道 色絵に生きる” が開催されています。
こちらは、色絵磁器の人間国宝に認定された藤本能道 (よしみち) にスポットを当てた美術展です。
実は、智美術館のコレクションの中で最も重要な位置を占めるのが、藤本能道の作品群なのだそうで。
質、量ともに世界一のコレクションと言っても過言ではないそうです。
そんな充実した藤本能道の作品群の中から、
初期から最晩年にかけての代表作ばかりを展示しているのが、今回の美術展。
美術展を通じて、藤本能道の陶芸家人生を辿ることが出来ます。
初期の作品の段階でも、上手いことは上手いですが。
《色絵木蓮と鵯八角筥》 1976年 高さ15.0 径30.0cm (撮影:大川裕弘)
まだ、普通に 「いい仕事してますね」 というレベルです (←何様?)
ところが、この2年後の作品では・・・
《色絵桜とうそ図大皿》 高さ6.0 径55.0cm (撮影:大川裕弘)
「いい仕事してますね!!」 というレベルに。
鳥や桜の描写が、よりリアルになっていて、
紙や絹に描かれた絵画作品と比べても、全く遜色がありません。
色絵磁器というと、有田焼や九谷焼のイメージしかなかったので、
ここまで、絵画的な色絵磁器を目の当たりにして、驚きは隠せません。
しかし!
その後も、藤本能道の色絵表現は更なる進化を遂げるのです。
《草白釉釉描色絵金彩翡翠図六角筥》
1989年 高さ6.5、27.4×30.6cm (撮影:田中良)
「!!!」
もはや何も言えなくなるくらいの境地に達してしまいました。
これまでの作品は、白い磁肌は、あくまで白い磁肌であり、鳥の絵とは切り離されていましたが。
《草白釉釉描色絵金彩翡翠図六角筥》 の頃の作品になると、背景までもが表現されていました。
鳥の絵と背景の表現が違和感なく融合することで、景色に奥行きを感じることが出来ます。
これまでの作品が、 「立体物に描かれた風景画」 という印象だったのに対し、
この頃の作品には、むしろ 「風景画を立体的な形にした」 かのような印象を受けました。
完成した形に、より説得力が増していた気がします。
ここまででも十分すぎるくらいに進化を重ねてきましたが。
晩年の藤本能道の色絵表現は、さらなる高みへ到達していました。
《霜白釉釉描色絵金銀彩炎と蛾図扁壷》
1991年 高さ26.0、24.8×16.0cm (撮影:田中良)
思わず速水御舟の 《炎舞》 を彷彿とさせる、情念が渦巻く作品世界。
そう、藤本能道は、生々しい感情までも色絵で表現するに至っていたのです。
技術的な観点で、陶磁器に感動したことならば、何度もありますが、
陶磁器を見て、こんなにも純粋に感情が揺さぶられた経験は初めてかもしれません。
有田焼や九谷焼などの色絵表現は、
何世代もの職人が歴史を積み重ねたことで進化することが出来たのでしょうが。
藤本能道は、たった一人の陶芸家人生の中で、駆け抜けるように色絵表現を進化させていました。
ここまで劇的でドラマチックな人生を歩めるのは、藤本能道か島耕作くらいなものでしょう (←?)
初期の作品から晩年の作品までの流れを追うだけで、一本の映画やドラマを見たくらいの感動がありました。
ちなみに。
智美術館と言えば、いい意味で陶磁器の美術館とは思えないスタイリッシュな展示室が魅力の一つ。
今回の藤本能道展が、今までで一番、展示室の雰囲気としっくりきていた気がします。
と思ったら、今のスタイリッシュな展示室は、前回の5年前の藤本能道展に合わせて改装されたものとのこと。
どうりで、しっくりくるはずです。
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藤本能道 色絵に生きる
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