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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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没後50年回顧展 板谷波山―光を包む美しきやきもの

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現在、泉屋博古館分館では “没後50年回顧展 板谷波山―光を包む美しきやきもの” が開催中。
こちらは、近代日本を代表する陶芸家・板谷波山 (1872~1963) の全貌を紹介する大回顧展です。


・・・・・・・って、アレ?
私の記憶が確かならば、板谷波山の大回顧展を、数ヶ月前にも観たような。
そうそう、出光美術館で開催された “板谷波山の夢みたもの” を2月に観賞したばかりでした。
あちらの板谷波山展で、十二分に波山ワールドを堪能しましたので、

“泉屋博古館分館の板谷波山展は、行かなくてもいっか”

くらいに思っていたのですが。
いやいや、危ないところでした。
もし行かなかったら、きっと後悔していたことでしょう。
星星


出光美術館の板谷波山展で紹介されていたのは、出光美術館が誇る板谷波山コレクションの数々でしたが。
泉屋博古館分館で開催中の板谷波山展には、
茨城県陶芸美術館が所蔵する 《葆光彩磁孔雀尾文様花瓶》 をはじめ、

茨城県陶芸美術館
(注:この記事に使用している作品写真のクレジットは、 “没後50年回顧展 板谷波山―光を包む美しきやきもの ”に帰属)


日本全国の美術館から選りすぐられた波山の名品が紹介されています。
さらに、 《葆光青磁唐花彫紋花瓶》 のように、

葆光青磁唐花彫紋花瓶


貴重な個人蔵のものも数多く紹介されており、
まさに没後50年回顧展に相応しい充実のラインナップでした。
そして、当然ですが、泉屋博古館分館が所蔵する波山作品も紹介されています。

葆光彩磁葡萄唐草文花瓶  《葆光彩磁葡萄唐草文花瓶》


ということは。
もちろん 《葆光彩磁珍果文花瓶》 も紹介されています。

葆光彩磁珍果文花瓶


こちらは、大正6年の第57回日本美術協会展に出展され、
すべての出品作の頂点に立つ一等賞金牌に輝いた波山の代表作中の代表作。
2002年には、近現代陶芸作品として初の国指定・重要文化財指定を受けています。
住友家15代目当主・住友春翠は、この 《葆光彩磁珍果文花瓶》 を、
当時の陶磁の価格 (注:ダジャレじゃないです) としては破格の1800円で購入したのだとか。
ちなみに、大正10年の大卒初任給は50円。
当時で、その価格ですから、今はいくらになるのやら。。。

とは言え、この作品は、高いからスゴいのではありません。
スゴいから高いのです。
画像では、伝わっていないでしょうが。
実物は細部に至るまで、恐ろしいくらいに細かく文様が描き込まれています。
それは、もはや超絶技巧の域。
住友春翠が1800円で購入したのも納得の逸品です。


さてさて、そんな名品揃いの泉屋博古館分館での板谷波山展ですが。
出光美術館での板谷波山展と比べて、もう一つ特徴的だったのが、
作品だけでなく板谷波山という人物にもスポットを当てていた点です。
波山が参考にしたと思われるアールヌーヴォーの陶器や、
波山が描いた膨大なスケッチを作品と併せて展示することで、波山の創作の秘密に迫っていたり。
金沢時代に手がけた陶彫作品や、

水着少女像  《水着少女像》


昭和初期に挑戦したという工芸家たちとのコラボレーション作品など、

彩磁珍果文香爐  《彩磁珍果文香爐》


珍しいタイプの作品も展示することで、波山の芸術活動の幅広さを紹介していたり。
板谷波山という人物を知る上での決定版的な内容になっていました。
また、波山が終戦後に故郷である下館の戦没者遺族全員に贈ったという自作の観音像や、
これまた下館に住む80歳以上の高齢者にお祝いとして贈ったという鳩杖も展示されていました。
なんと、イイ人。
作品もよく出来ていましたが、人間としてもよく出来ていました。



ちなみに。
今回展示されていた波山作品の中で個人的な理由から一番印象に残った作品は、 《青磁花瓶》 でした。

青磁花瓶》


サイドから見れば、口の部分が花 (蓮?) をイメージしているのは一目瞭然ですが。
会場では低い位置に展示されており、自然と見下ろす形にて観賞。
そのため、口の部分が、 『はごろもフーズ』 のCMのラストにしか見えませんでした (笑)






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