いつぞやは、喜多川歌麿を描いた小説を紹介しましたが。
今回は、最近人気急上昇中のあの浮世絵師を描いた小説をご紹介。
国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫)/河治 和香
¥560
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■国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ
作者:河治和香
出版社:小学館
発売日:2007/5/10
ページ数:288ページ
前作 「笹色の紅」 が評論家に絶賛された新鋭が、
鉄火肌の浮世絵師国芳と、脳天気な弟子たちの浮世模様を娘の女絵師登鯉の目から描いた、
ほのぼのおかしくて、ちょっとせつない書き下ろしシリーズ第一作。
国芳の娘登鯉は、刺青が大好きで博奕場にも平気で出入りするような“侠風”な美少女。
一方で、天保の改革を鋭く諷刺した国芳は、とうとう北町奉行所に召喚されてしまう。
(「BOOK」データベースより)
「主人公は、歌川国芳・・・ではなくて、
その娘の登鯉 (とり) 、又の名を、一燕斎芳鳥。
“ミスター江戸っ子” な国芳の娘だけあって、
勝気で生意気で、博打も打つわ、刺青に興味津々だわ、のいなせな女の子。
そんな登鯉の目線から、国芳一門の日常を描いたのが、この小説。
もちろん破天荒な国芳と、その弟子たち、
日常が普通にほのぼのとしたものであるわけがありません (笑)
小さな事件から、切ない事件、やがては社会を巻き込む大事件まで。
実に、さまざまな騒動が巻き起こります。
小説は、それらを連作短編集という形で描いていました。
繋がっているようで、繋がっていないようで、
でも、全体を通して読むと、やっぱり繋がっている、そんな連作短編集。
僕が国芳好きということもあるのでしょうが。
純粋に、面白かったです。
この小説はシリーズで、あと4作はあるとのこと。
絶対に、続きを読みます。
それくらいのマイヒット作。
面白かった理由は、いくつかありますが。
まずは、描かれている国芳像が、イメージにピッタリだった点。
“あぁ、国芳なら、こういうこと言いそう!こういうことしそう!”
と、リアリティがありました。
特に、 《源頼光公館土蜘作妖怪図》 に関する解釈は、
従来の浮世絵解説本や展覧会では語られてこなかった説でしょうが。
この国芳像ならば、この小説の解釈のが正しい気がしました。
間違いなく、こっちのが面白い解釈。
また、国芳だけでなく、
国芳の弟子たちも、ちゃんと実名で (?) 登場している点も、嬉しいところ。
芳虎、芳藤、芳春、芳玉、そして、芳艶まで。
(歌川芳艶は、昨年、世界初の個展が開かれた浮世絵師です → 関連記事)
弟子だけでなく、ライバルとして、兄弟子の歌川国貞も登場。
面白みのない浮世絵を描く浮世絵師として登場しています。
さすがに、ちょっと可哀想 (笑)
さらに、時代劇でもお馴染みのあの人物が、意外な形で登場!
この小説のクライマックスなので、お楽しみに♪
最後に。
この小説の面白さの最大のポイントとして、
作者が、江戸風俗に大変精通しているということが挙げられます。
浮世絵師・歌川国芳の生きざまを描いているだけでなく、江戸庶民の風俗も描かれています。
江戸の刺青文化、千住札、吉原、贅沢禁止令、銭湯事情…etc
教科書には載らない江戸時代が、この小説には描かれています。
いやぁ、勉強になりました。
映画化するほどではないですが。
NHKの30分枠の時代劇シリーズなら、十分に狙える気がします (←?)
(星4.5つ)」
~小説に登場する名画~
《源頼光公館土蜘作妖怪図》
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Book:8 『国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ』
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