「謎以外の何を愛せようか」 という発言を残したことで知られる画家ジョルジョ・デ・キリコ。
その大々的な回顧展が、パナソニック 汐留ミュージアムにて開催されています。
その名も、 “ジョルジョ・デ・キリコ -変遷と回帰-” 。
東京では、デ・キリコの回顧展が開催されるのは、10年ぶりとのこと。
さらに、作品の約8割が日本初公開というデ・キリコのファン待望の展覧会です。
大人の事情により、デ・キリコの作品を掲載できなくて恐縮ですが。
彼の作品はだいたいどれも、ポスターに使われている 《古代的な純愛の詩》 と同じテイストの作品です。
画面に描かれているのは、
建物だったり石膏像だったりマネキンだったりビスケットだったりと、日常的なモチーフばかりなのですが。
どこか不安を覚えたり、どこか謎めいていたり、どこかトラウマを感じたり。
そこには、一筋縄でない作品世界があります。
デ・キリコは、このような自身の絵画を形而上絵画と呼んでいます。
そんなデ・キリコの作品を目にして、
「ダリとかマグリットとか、シュルレアリスムの画家の作品っぽいなぁ」 と思った方は、鋭いです。
そう。シュルレアリスムの画家たちは、デ・キリコの形而上絵画に影響を受けているのです。
しかし、斬新な作品世界で多くの次世代の画家に影響を与えながらも、
デ・キリコ自身は、その後、ルーベンスを彷彿とさせる古典的な作風にガラッと路線変更しました。
そのため、デ・キリコをリスペクトしていた画家たちを、大きく失望させることになったのです。
こんなにもキャラチェンジに失敗した画家を、僕は他に知りません (笑)
さらに、その後、デ・キリコは、もう一度キャラチェンジを図ります。
かつて自身がヒットさせた (?) 形而上絵画を、セルフリバイバル。
実は、ポスターに使われている 《古代的な純愛の詩》 も、晩年近くに描かれた作品なのです。
こんなにも若き日の作品をセルフアレンジしながら描き続けた画家も、僕は他に知りません (笑)
こうした特異なデ・キリコの画業が、今回の展覧会では、きちんと追えるようになっていました。
また、初期の作品から晩年のデ・キリコ作品を、ただ漫然と並べただけの美術展では決してなく。
照明や会場の設計など、随所に工夫を凝らし、
デ・キリコに興味が無い人でさえ、スッと彼の世界に入り込めるような演出がなされた良美術展でした。
個人的に特にオススメなのが、デ・キリコの立体作品 《不安を与えるミューズたち》 です。
展示室のセンターに設置されているため、その鏡面に周囲のデ・キリコ作品が映りこんでいます。
その光景が、なんとも形而上絵画的。
さらに、この立体作品には、
パナソニック 汐留ミュージアムの粋な仕掛けがされているので、
より形而上絵画的な光景を目の当たりにすることになるでしょう。
ちょっとトラウマになりました (笑)
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ジョルジョ・デ・キリコ -変遷と回帰-
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