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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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特別展 茶の湯釜の美

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現在、泉屋博古館分館では、 “特別展 茶の湯釜の美” が開催されています。
茶道具の名品を紹介した展覧会は、数多くあれど、
茶釜オンリーに焦点を当てた展覧会は、これまでに無かったのではないでしょうか。
(少なくとも、僕が知る限りでは、聞いたことがありません)
紹介されているのは、住友コレクションの中から選りすぐられた茶釜たち。
元は比叡山延暦寺の香炉であったとも伝えられる名釜 《大講堂釜》 を筆頭に、

大講堂釜  室町時代後期 泉屋博古館分館蔵


室町時代から大正時代まで、約50点の茶釜が紹介されています。
しかも、そのうち26点は初公開品です。


正直なところ、あまりにもニッチでマニアックな企画のため、
会場に足を踏み入れるまで、展覧会を楽しめる自信が全くありませんでした (笑)

が、しかし!!

改めて、茶釜を美術品として鑑賞してみると、意外なほどに、面白いことが判明したのです。
例えば、こちらの 《海老鐶付網千鳥地紋釜》 という茶釜。

海老鐶付網千鳥地紋釜  大西浄清 江戸時代前期 泉屋博古館分館蔵


表面の文様は、漁師の干網をイメージしているのだそうです。
そして、鐶付 (茶釜の左右にある鐶を通す耳の部分) は海老の形になっています。
しかも、ヒゲが長い。


また例えば、こちらの 《玄々斎好鯱釜写》 という茶釜。

玄々斎好鯱釜写  大西浄清 江戸時代後期 泉屋博古館分館蔵


釜の表面に、和歌が詠み込まれています。
そして、鐶付は金のしゃちほこの形に。
釜から落ちないように必死で耐えているかのようで、可愛らしいです。


これらのように、いかにもお釜の形をしているものもあれば、
《一燈斎好大四方釜》 のように、四角いフォルムをしている茶釜もありました。

一燈斎好大四方釜  名越浄味 江戸時代中期 泉屋博古館分館蔵


茶釜が、こんなにもバリエーション豊かなものだったとは。
茶釜が、こんなにも遊び心に満ちたものだったとは。

ちなみに、数多く展示されている茶釜の中で、
僕が、「いいね」 と思った茶釜は、 《又玄斎好老松唐犬釜》 です。

又玄斎好老松唐犬釜  大西浄玄 江戸時代中期 泉屋博古館分館蔵


なんとなく、その形状から、 『パーマン』 を連想。
パーマンの顔っぽくもあり、バードマンが乗っている一人乗りのUFOっぽくもあり。
とりあえず飛びそうな感じがします。


企画自体はニッチでマニアックではありますが、
茶釜の制作過程を実物を交えて紹介していたり、わかりやすいパネルがあったり、
展示に工夫が施され、どんな方でも楽しめる展覧会に仕上がっていました。
さらに、練馬区立美術館での初個展が記憶に新しい野口哲哉さんが、
今回の展覧会のために描き下した㊙茶釜作品も展示されているので、併せて楽しめること請け合いです。

ポスたー (←野口さんの作品はポスターにも使われています)


まさか、自分が 「この茶釜がいいね」 と言う日が来るとは思ってもみませんでした。
展覧会を訪れた11月6日は、僕にとっての茶釜記念日です。
星星




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