東京都庭園美術館で開催中の展覧会 “幻想絶佳:アール・デコと古典主義” に行ってきました。
こちらは、アール・デコはアール・デコでも、
一般的にイメージされる 「直線的で幾何学的な」 アール・デコではなく。
「古典主義的な」 アール・デコをテーマにした展覧会です。
(アール・デコ・・・1910年~30年代にかけてフランスを中心に流行した装飾様式)
今回出展されている古典主義のアール・デコ作品の多くが、
フランスの美術館がコレクションしているものだったのですが。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
まったく何の違和感もなく、館内と調和していました。
むしろ最初から、ここにあったのではないかという気さえしてきます。
それもそのはず。
東京都庭園美術館 (旧朝香宮邸) の内装を手がけたのは、古典主義のアール・デコ作家アンリ・ラパン。
つまり東京都庭園美術館そのものが、古典主義のアール・デコ作品というわけです。
まさに東京都庭園美術館ならではの展覧会という印象を受けました。
ただ、裏を返せば、あまりにも東京都庭園美術館らしい展覧会という印象。
「東京都庭園美術館の展覧会としては無難な内容だったかなぁ」 というのが、僕の率直な意見でした。。。
そう。新館ギャラリーに足を踏み入れるまでは!!
新館ギャラリーの光景が目に飛び込んできた瞬間、思わず心の中で叫んでしまいました。
「ヤバっ!!」
あまりにも密度が濃ゆ過ぎる光景に、本能的にたじろいでしまったのです (笑)
そこに展示されていたのは、本館と同じく古典主義のアール・デコ作品。
制作された時代や国も、本館に展示されていたものと一緒です。
にも関わらず、本館で展示されていた作品よりも衝撃的に感じたのは、
現代的なホワイト・キューブの空間に展示されていたからに他なりません。
古典主義のアール・デコな空間に展示されていたときは、
絶妙にお互いが引き立てあって (打ち消し合って?) 、何の違和感も感じませんでしたが。
古典主義のアール・デコ作品を単体でマジマジと観賞してみると・・・
カルロ・サラベゾール 《海神》 1935年
Carlo Sarrabezolles Deity of Sea 1935 © ADAGP, Paris & JASPER, Tokyo, 2014 E1268
なかなかにぶっ飛んだ造形の作品であることに気づかされました。
“なかなか” どころではありませんね。
“めちゃめちゃ” ぶっ飛んだ造形の作品でした。
新館ギャラリーに来て、ようやく展覧会の趣旨を理解。
こんなにも突き抜けたアール・デコ作品ばかりが展示されていた展覧会だったのですね。
確かに、改めて本館の展示を思い返してみると。
例えば、こちらの部屋で展示されていたキャビネットも・・・
作品を単体で鑑賞してみれば、
1938年製とは到底思えない相当に古典主義的で相当にデコラティブなキャビネットです。
自分ん家にあったら、確実に浮きます (笑)
ジュール・ルルー キャビネット 《花火》 1938年
Jules Leleu Cabinet, Fireworks 1938©Mobilier national / Isabelle Bideau
さてさて、今回紹介されていた古典主義のアール・デコ作家の中で、
もっとも 「ヤバっ!!」 (注:いい意味で) と感じたのがウジェーヌ・ロベール・プゲオンです。
「初めて聞く名前だなぁ」 と思っていたら、本国フランスでも、あまり知られていない画家なのだとか。
しかし、その作品世界は圧倒的。
一目見たなら心をとらえて離さない・・・否、心にこびりついて離れてくれないものがありました (笑)
例えば、ポスターに使われてる 《蛇》 という作品。
ウジェーヌ・ロベール・プゲオン 《蛇》 1930年頃
Eugène-Robert Poughéon The serpent c. 1930
© Musée La Piscine (Roubaix), Dist. RMN-Grand Palais / Arnaud Loubry / distributed by AMF, Achat de l'Etat 1930
《蛇》 というタイトルなのに、なぜ蛇は絵の下のほうに、ちょこんと描かれているだけなのか。
女性のポーズに何の意味があるのか。
筋骨隆々な2体の馬がなぜ描かれているのか。
画面奥に描かれている男性は誰なのか。
銃を撃っている女性は何者なのか。
すべてが、謎の作品です。
そんな意味不明の絵であるにも関わらず、なぜか見入ってしまう。
それが一番の謎。
なんとも不思議な味わいの作品を描く画家でした。
ちなみに、ウジェーヌ・ロベール・プゲオンを観ていたら、
なんとなく一昔前のCGアニメを思い浮かべてしまいました。
そんな自分も謎です。
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幻想絶佳:アール・デコと古典主義
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