東京都美術館で開催中の “新印象派-光と色のドラマ” に行ってきました。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
こちらは、19世紀末に生まれた革新的な芸術運動 「新印象派」 にスポットを当てた展覧会です。
新印象派というと、印象派をテーマにした展覧会で、
バーターのように (?) 紹介されているイメージがありますが。
今回の展覧会では、主役も主役。
それも、印象派と野獣派という重要な2つの芸術運動を繋ぐ架け橋のような存在として紹介されています。
なので、今回の展覧会では、印象派の作品と、
クロード・モネ 《税関吏の小屋・荒れた海》
1882年 油彩、カンヴァス 58×81cm 日本テレビ放送網株式会社
野獣派の作品は、むしろ脇役だと言っても過言ではありません。
アンドレ・ドラン 《コリウール港の小舟》
1905年 油彩、カンヴァス 54×65cm 大阪新美術館建設準備室
印象派の全盛期から野獣派が誕生するまでの約20年間に、一体何があったのか。
その答えは、新印象派展の会場で明らかになります。
では、そもそも新印象派とは、どんな芸術運動なのでしょうか。
詳しくは、会場で知って頂くとして、こちらのブログでは、ざっくりと説明させて頂きます。
突然ですが、皆様は図画工作の授業の時に、こんな経験はありませんか?
綺麗な色を作ろうと、パレットの上で絵の具を何色も混ぜたら、逆にどす黒くなってしまった―。
これは、絵の具の性質によるもので、絵の具は混ぜれば混ぜるほど黒に近づきます。
そこで、光の明るい色を表現したかった印象派の画家たちが編み出したのが、
パレット上で混ぜるのではなく、直接キャンバスに原色をペタペタと置くという画期的な方法でした。
これならば、絵の具が混ざって、どす黒くなることはありません。
この画期的な方法を、ジョルジュ・スーラらが、
さらに科学的にパワーアップさせたのが、新印象派です。
彼らは、ペタペタではなく点々で描くことで、もっと明るく輝いた画面を作り出しました。
近くで観れば、当然、ただの点々にしか見えません。
ジョルジュ・スーラ 《セーヌ川、クールブヴォワにて》
1885年 油彩、カンヴァス 81×65.2cm 個人蔵 © Droit Réservé
しかし、離れて観ると、それらの点々が、
上手い具合に脳内で混ざり合って、それまでの美術作品では味わったことのない明るさが感じられるのです。
(無数の色の点が集まって画面を作っている) テレビが当たり前の時代に生きる僕でも、
「おっ♪」 と思えたほどなので、新印象派の絵を初めて目にした当時の人は、それはそれは新鮮に映ったはず。
今の僕らで言えば、3D映像を初めて目にした時くらいの衝撃はあったのではないでしょうか。
そういう意味では、新印象派の作品は、鑑賞するというよりも、体感するといった表現のほうがしっくりきます。
ちなみに、上で紹介したスーラの 《セーヌ川、クールブヴォワにて》 という作品に関しては、
これくらいの距離を置いて観るのが、僕的にはベストでした。
もちろん、これは、個人の感想。
新印象派の作品、近距離から見るか?中距離から見るか?
そんな楽しみ方が出来るのは、新印象派の作品ならではです。
さて、ざっくり言ってしまえば、新印象派イコール点描画。
そんな新印象派の作品ばかりの展覧会は、飽きてしまいそうな気がします。
実際のところ、僕も、展覧会に行くまでは、そう思っていました。
が、しかし。
同じ新印象派、同じ点描スタイルの絵でも、
見比べてみると、画家によって様々な個性があることに気づかれます。
その違いを探すのも楽しく、気づけば、あっという間に展覧会の出口に辿り着いていました。
世界12ヶ国の美術館や個人コレクションから集められた約100点が出展されていたのにも関わらず。
ちなみに、個人的にお気に入りな画家は、やはり新印象派の父であるジョルジュ・スーラです。
彼は、その生涯をかけて、新印象派の理論を突き詰めていきました。
その結果・・・
ジョルジュ・スーラ 《ポール=アン=ベッサンの外港、満潮》
1888年 油彩、カンヴァス 67×82cm オルセー美術館、パリ Achat sur fonds d'une donation anonyme canadienne, 1952
©RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
額にまで、びっしりと点々を描き込むにいたったのです。
「なんでやねんw」
思わず関西弁でツッコみそうになりました。
それから、スーラと並んで新印象派を代表する画家ポール・シニャック。
始めの頃は、執拗なくらいに細か~い点描スタイルで描いた作品を発表していましたが・・・
ポール・シニャック 《髪を結う女、作品227》
1892年 エンコースティック、裏打ちされたカンヴァス 59×70 cm 個人蔵 © Droit Réservé
時代が経つにつれ、点々が大きくなっていました。
良く言えば、荒々しくなっているような。
悪く言えば、手抜きになっているような (笑)
そのスタイルの変遷に、シニャックの人間味が感じられました。
画面は明るいのに、扱いは地味。
そんな新印象派に対する印象がガラッと変わる良い企画でした。
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新印象派-光と色のドラマ
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