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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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山本基展『原点回帰』

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今回オススメする展覧会は、ポーラミュージアムアネックスで開催中の “山本基展『原点回帰』” です。
星星


会場に足を踏み入れると、そこに広がっているのは・・・

山本基


床一面を埋め尽くす巨大なインスタレーション作品です。
タイトルは、 《たゆたう庭》
さざ波のような、銀河のような、はたまた気象衛星から見た景色のような。
雄大な自然や悠久の時を感じさせる光景に、誰もが見入ってしまうことでしょう。


突然ですが、ここでクエスチョンです。
山本基さんによるこちらの作品は、一体何で描かれているのでしょうか?
白い絵の具ではありませんよ。

山本基


白い毛糸でもありません。
最終ヒントです。もう少し近づいてみましょう。

山本基


ここまでアップにしても、答えがわからなかった方は、だいぶしょっぱいです。
正解は、塩。
ちなみに、今回の作品に使われている塩の量は、約120キロとのこと。
壮観な眺めです。

山本基


山本基さんは、日本で唯一、いや世界で唯一の塩のアーティスト。
これまでに国内外の美術館で、塩のみで制作した壮大なインスタレーション作品を発表しています。

「なぜに、塩??」

以前、山本さんご本人とお話させて頂いた機会に、
そんなド直球すぎる質問をぶつけたことがあります。
山本さんは塩対応することなく、教えてくださいました。

山本基さんの作品の根底にあるのは、24歳で他界した最愛の妹への想い。
亡くなった妹との思い出にもう一度出合うため、
葬儀に使われる 『浄めの塩』 にインスピレーションを受け、塩の作品を制作し始めたのだそうです。


実は、今回、展覧会の初日に伺ったのですが。
作品はまだ完成ではなく、山本さんが公開制作をされていました。

山本基


その制作中の姿は、アーティストという感じでもなく、工芸家という感じでもなく。
“祈る人” という表現が、一番しっくりくる気がしました。

入り口 山本


さてさて、この作品は、最終日には鑑賞者と共に壊されてしまう運命にあります。
なんとも儚い作品です。
しかし、その塩は、観賞者たちによって、海に還されるとのこと。
海から生まれた塩が、山本基さんの手によって作品となり、
そして、その作品を目にした人の手により、また海へと戻っていくのです。
塩も人の一生も、こうして巡回しているのかもしれませんね。

目から塩水が溢れる展覧会です。




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