現在、菊池寛実記念 智美術館では、
“菊池寛実賞 工芸の現在 展” という展覧会が開催されています。
こちらは、近年、工芸の分野で優れた活動を行っている12名の作家を紹介する展覧会です。
菊池寛実記念 智美術館は、現代陶芸を専門とする美術館。
それゆえ、陶芸に限らず、金工や木工、ガラス、人形など、
多彩なジャンルの工芸作家の作品が展示されていたのが、何よりも印象的でした。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
専門家で構成される選定委員会によって選ばれただけあって、どの作家も実力は折り紙つき。
その12人の作家の中から特に優れた活動を行っている1名に、菊池寛実賞は授与されます。
まさに、工芸界の 『THE MANZAI』 。
果たして、その栄冠はどの工芸作家の頭上に輝いたのでしょうか?!
竹工の武関翠篁さんの作品も、
天正遣欧少年使節を題材にした博多人形を制作する中村信喬さんの作品も、
昆虫をモチーフにした作品を生み出す金工作家・相原健作さんの作品も、
どれも本当に素敵だったのですが。
彼らを抑え、見事、第1回菊池寛実賞を受賞したのは、小倉織の作家・築城則子さんでした。
豊前小倉藩で発祥の小倉織は、
丈夫でしなやかな縞模様が特徴の織物で、江戸時代は袴の生地として重宝されていました。
しかし、洋服が普及するにつれ需要は減り、ついには昭和の初期に完全に廃れてしまったようです。
そんな歴史の闇に消えた小倉織を、切れ端と資料から見事復活させたのが、築城則子さん。
普通に小倉織を復活させただけでも素晴らしいですが、
作家性のある作品として小倉織を復活させていることが、とにかく素晴らしいです。
パッと見ただけでは、ただのストライプにしか見えないかもしれません。
しかし、近づいて観てみると。
一つとして同じ縞 (ライン) がないことに気づかされます。
もっと近づいて観てみると、手作業によって織られた物なので、
完全な直線ではなく、繊細なラインであることにも気づかされます。
ちなみに、どうでもいいでしょうが。
築城則子さんの小倉織作品の数々を鑑賞していた時に、
僕の脳内に流れていたBGMは、Bank Bandの 『糸』 (原曲:中島みゆき) です。
さて、公式に菊池寛実賞を受賞されたのは、築城則子さんですが。
非公式にとに~賞を送りたいのは (←?) 、金工作家の山本晃さんです。
なんと、山本晃さんは、昨年11月に人間国宝に認定されたばかり。
とに~賞など送らずとも、ノリに乗っている工芸作家です。
こちらは、そんな山本晃さんによる 《切嵌象嵌接合せ箱「白椿」》 という作品。
洗練されたモダンなデザインなので、
「洗練されたモダンなデザインだなぁ。」
くらいにしか、最初は思わなかったのですが。
作品に使われている技法を解説頂いて、思わず驚愕。そして、二度見。
箱一面に、何かしらの方法で、椿の葉の文様を描いたのかと思いきや・・・
実は、異なる金属のパーツを、すべて “接合せ” (はぎあわせ) という技法で繋ぎ合わせているとのこと。
例えるならば、立体のジグソーパズルのような感じなのです。
とても人間の手で作られたとは思えない作品です。
また、陶芸家新世代のトップランナー・新里明士さんの作品も、同じくらい衝撃的でした。
驚くほどに、薄く。
驚くほどに、びっしりと穴が開けられています。
なんというか、スタイリッシュです。
これまで僕がやきものに抱いていた概念を、軽々しく根底から覆されました。
皆さんも、きっとお気に入りの作家が見つかる展覧会。
まさしく、 “工芸の現在” が知れる展覧会です。
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菊池寛実賞 工芸の現在 展
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