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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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斎藤与里のまなざし

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昨年オープンしたばかりの中村屋サロン美術館へ、再び行ってまいりました。
開催されていたのは、“生誕130年記念 中村屋サロンの画家 斎藤与里のまなざし” という展覧会。

斎藤与里は、パリ留学中にゴッホやゴーギャンといった当時最先端の美術を目の当たりにし、
帰国後は、フランスの地で親友となった彫刻家・荻原守衛 (碌山) らと中村屋サロンを形成し、
大正期には、岸田劉生、高村光太郎らとフュウザン会を結成し、日本洋画界に衝撃を与えた人物だそうです。

《K子像》 をはじめとする初期の作品は、

K子像  1937年 加須市教育委員会蔵


まぁ、無難な作風のものばかり。
この時代の洋画家が描く典型的な洋画で、
可もなく不可もなく、そこまで個性もなく、という印象を受けました。
あるブームの中の代表ではなく、その他大勢の一人といった感じ。
例えるならば、ボキャブラ天国ブームにおけるプリンプリン、
HIPHOPブームにおける麻波25、小室ファミリーにおけるdos・・・って、もういいですね。

何はともあれ、ブログで紹介することが特に無さそうなので、

“サーッと観て、帰るかな”

と、そそくさと最初の展示室をあとにし、もう一つの展示室へ。
そして、展示室に足を踏み入れた次の瞬間です。
思わず・・・

「wwwww」

吹きだしてしまいました。

「いやいや、何があったwww」

そこに展示されていたのは、晩年近くの斎藤与里の作品群。
初期の作品の作風とのギャップに、衝撃 (笑撃?) を受けずにはいられませんでした。

古都の春  《古都の春》 1953年 加須市教育委員会蔵

勝浦  《勝浦温泉》 1953年 加須市教育委員会蔵

和尚さん  《和尚さん》 制作年不詳 加須市教育委員会蔵


何がどうなってこうなってしまったのか。
あんなにも初期の作品には個性が見られなかったのに、晩年になると、むしろ個性しかないです (笑)
観れば観るほど癒される独特のほのぼの感。
いや、 “ほのぼの” というよりも “のほほん” でしょうか。
斎藤与里の絵をTシャツにして、皆が着れば、
それだけで世の中が平和になるような気がしました。
星


ちなみに、僕のお気に入りは、《秋の果物》 という一枚。

秋の果物  制作年不詳 加須市教育委員会蔵


食欲は、全く湧かないのですが。
なんか、じーっと見てしまう絵でした。
しばらくすると、果物たちが動き出しそうな。
そして、果物の中からサザエさんが出てきそうな。


斎藤与里が個性的な画家であると知った上で、
改めて最初の展示室に戻り、初期の作品を見てみると、気になる1枚を発見してしまいました。
《木陰》 という作品です。

木陰  1912年 加須市教育委員会蔵


セザンヌの影響を受けているのは、一目瞭然。
誰がどう見ても、セザンヌの水浴図を基にしています。
それだけには飽きたらず、セザンヌの代名詞とも言うべきリンゴが描かれています。
それも、画面の下に不自然に!
この時代に、セザンヌ風の洋画を描いた日本人は多いですが。
水浴図とリンゴを同時に描いてしまったのは、斎藤与里くらいではないでしょうか。
この頃から、個性が発揮されていたのですね。




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