現在、横浜美術館では、
世界的な現代アーティスト・蔡國強 (ツァイ・グオチャン/さい こっきょう) の日本では7年ぶりとなる個展が開催中です。
タイトルの “蔡國強展:帰去来” とは、中国の詩人・陶淵明が、
官職を辞め故郷に帰って田園で生きる決意を表現した詩 『帰去来辞』 から引用したもの。
現在ニューヨークで活動中の蔡さんにとって、日本はアーティストとしての原点とも言える地だそうで。
そんな日本に戻ってきたという意味を、タイトルに込めたのだそうです。
『踊る大捜査線』 風に言うならば (←?)、「he's back」 といった感じでしょうか。
美術館の入り口を抜けると、まず目に飛び込んでくるのが、巨大な絵画。
今展のために描かれた新作 《夜桜》 です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
そのあまりの迫力に、しばしボー然。
人は本当に驚くと、思考停止になってしまうようです。
さて、先ほど 「描かれた」 と表現しましたが、
こちらの絵画は、普通の絵画のように筆を使って描かれたものではありません。
では、どのように描かれたのでしょうか??
正解は、こちら。
火薬ドローイング《夜桜》(2015年、火薬、和紙、作家蔵)の爆破
Photo by KAMIISAKA Hajime
火薬の爆発のあとによって描かれた絵画だったのです。
この “良い子は真似しないでね” な火薬ドローイングは、蔡國強さんの代名詞。
今回の新作 《夜桜》 も、豪快な爆破とともに完成させたそうです。
しかも、横浜美術館の館内で!
しかし、巨大だから、火薬で描かれているから、という理由だけでは、
この作品と向き合った時に受けた圧倒的な感動は説明しきれるものではありません。
もっと根源的で原始的な生きるパワーのようなものが、この作品には宿っている気がします。
この 《夜桜》 も十分に圧倒的でしたが、
さらに圧倒的だったのが、日本初公開となる近年の代表作 《壁撞き》 。
等身大のオオカミのレプリカ99体で構成され、展示室をまるまる使用した圧巻のインスタレーション作品です。
群れをなした狼たちが疾走し、宙を舞い、そして、壁ドン。
オオカミたちの行く手を妨げる壁は、何か不穏なものを象徴しているのか。
それとも、行く先に壁があることを知りながら果敢に壁に挑む狼たちが、希望を象徴しているのか。
ツラいような力づけられるような。
実に複雑な感情を呼び起こされる光景が、そこにはありました。
この作品を目の当たりにして、圧倒されない人は一人もいないでしょう。
いや、一人もいないと、断言しましょう。
これまでに多くの現代アート作品を目にしてきましたが、
これほどまでに、アートの持つパワーを信じられる作品は、そうそうありません。
ちなみに、一つだけ注意点 (?) があります。
全体を俯瞰的に観ると、本当に心を揺さぶられる作品なのですが。
オオカミ1体1体の顔に注目してしまうと、あまりに表情が豊かなので、変な風に心が揺さぶられます (笑)
《夜桜》 や 《壁撞き》 以外にも、圧巻の新作インスタレーションが発表されています。
ただ、どの作品もスケールが大きいため、作品数はどうしても少なくならざるをえません。
一つ一つの作品から受けるインパクトは確かに大きかったのですが、
展覧会全体としては、意外とあっさり観終ってしまったような印象も。
ドーンとインパクトを受けて、パッと散る。
まさに、蔡國強らしい、花火のような展覧会でした。
ちなみに、蔡國強展のチケットで、横浜美術館のコレクション展も観られます。
そちらには200点以上の作品が展示されています。
見応えたっぷりです。
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蔡國強展:帰去来
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