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会田誠作品改変要請問題について考える

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2015年7月25日。
こんなニュースが報じられました。

「会田誠さん作品に改変要請 美術館、子ども向け企画展で」

東京都現代美術館で開催中の “おとなもこどもも考える ここはだれの場所?”
こちらに出展されている会田誠さんの 《檄文》 と、
《国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ》 の2作品に対し、

カオス


クレームが入ったことを理由に、東京都現代美術館が会田さんに改変するよう要請していたことが発覚。
さらに、そのクレームを入れた人数が、たったの一名であったことから、
ネット上では、美術関係者を中心に、表現の自由の侵害だと激しい批判が噴出しています。


このブログを初めて早8年。
皆様に楽しんでもらえる記事を、日々お届けしてきました。
しかし、今回の問題に関しては、
さすがに自分も声をあげなくては、と感じたので、今日だけは笑い一切なしで真面目に記事を書きます。
フリでもなんでもなく、本当に笑い一切なしです。
「とか言って、実はオチがあるんじゃないの?」 と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが。
笑いもオチもありません。
楽しい記事を期待していた方、申し訳ありません。
以下、会田誠作品改変要請問題についての僕個人の見解です。



前々から思っていたのですが、
僕は、表現の自由が何においても尊重されるという考え方が、好きではありません。
もちろん表現の自由が尊重されるのは、素晴らしいことだと思います。
しかし、美術館で展示するとなると話は別です。
観客からお金を得ている以上、観客を楽しませる、最低でも観客を不快にさせない必要があります。
お笑いライブで、とある芸人が披露したネタが、
ウケなかったり、お客さんを不快にさせたとしましょう。
その時に芸人が、「これは表現の自由だ!」 と主張したところで、その主張が通るわけがありません。
舞台のプロデューサーからネタを変えるよう言い渡されるか、さもなくば舞台をクビになるのは確実です。
それと同じことで、展示された作品を見て、お客さんが面白くない、不快だと感じたら、
アーティストの表現の自由を優先する必要なく、学芸員さんは改変するか撤去すべきだと思います。
もし、そういう目に遭うのが嫌なら、アーティストは美術館以外の場所で作品を発表すればいいのです。
貸しギャラリーでも、自分の家でも、路上でも。
ましてや、今回の舞台となっているのは、東京都現代美術館。
アートに理解のある観客からのお金だけでなく、
アートに全く興味の無い都民の税金も使われているのですから、
アーティストの表現の自由が、より狭まって当然な気がしています。

というわけで、僕は、表現の自由絶対主義な考え方に全く賛成できないのですが。
表現の自由を主張する人が、東京都現代美術館が改変を要請したことを批判する意味がわかりません。
それも、また表現の自由ではないでしょうか。
そして、今回の騒動で一番僕が問題だと感じているのが、クレームを入れた人に対しての批判です。
これまでも美術というものは政治を批判してきたのだから、
美術をよく知らない人間が、余計なクレームを入れるな、というのです。
そもそもクレームと表現すること自体が、
美術作品が何よりも正しいと信じて疑っていないことの表れなのでしょう。
僕は、美術はどんな人が観てもいいと思っていますし、どんな感想を抱いてもいいと思っています。
会田さんの今回の作品を見て、不快に感じたとしても、そのことを批判すべきではありません。
さすがに一個人が、「不快だから撤去しろ!」 というのは行き過ぎだと思いますが、
「これは皆も不快になるかもしれない。撤去してはどうでしょう?」 くらいならいいのではないでしょうか。
それこそ、表現の自由です。

今回の一連の騒動に関して、僕が危惧しているのは、
アーティストの表現の自由と美術館の運営に論点が集中するあまり、
美術をよく知らない人間が美術に対して軽々しく口出ししてはいけない雰囲気が、
より強まってしまったのではないかということです。
このニュースを見て、美術を自分とは遠いものと感じた人がいたなら、こんなに悲しいことはありません。


さて、個人的には、今回の2作品に関しては、
撤去するほどでは無いですが、特に面白いとは思いませんでした。
会田家の作品は他に面白いものがいくつもあったので、
あの2作品はあっても無くてもいいかなぁ、というのが、率直な感想です。

今回の騒動に対する唯一解は、きっとありません。
観客の反応を汲んで撤去するのも、一つの正解だと思います。
多くの方がネットで主張するように、
学芸員さんは作品を守って、そのまま展示するというのも一つの正解だと思います。
(個人的には、一度展示したものは、何があっても守るという考え方は、好きではありません。
 一度計画してしまった以上、何が何でも実行するといって、
 最終的に予算が2520億円まで膨れ上がってしまった新国立競技場建設問題と根が一緒な気がします。)

でも、僕としては、こうして一つの騒動になったことを逆手にとって、
その観客の感想や東京都現代美術館からの改変要請コメントを檄文にしてしまうとか、
そのまま映像でスピーチしてしまうとか、会田さんには新たな笑える作品を作って頂きたい。
それこそが何よりもアートな表現だと思いますし、アートでしか出せない正解なのだと思います。

昨日放送されていた某テレビ局の27時間テレビのスローガンではないですが。
このピンチをチャンスに変えて欲しいと、一人のアートファンとして切に願っています。



明日からは通常通りの楽しい記事をお届けします (笑)




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