今年は、伊豆出身の伝説的な左官職人・伊豆の長八 (本名:入江長八 1815~1889) の生誕200年の節目の年。
それを記念して、武蔵野市立吉祥寺美術館では、
“生誕200年記念 伊豆の長八 ―幕末・明治の空前絶後の鏝絵師” が開催されています。
伊豆の長八が、伝説的な左官職人と讃えられる理由。
それは、類まれなる鏝絵の才能の持ち主だったからに他なりません。
日本橋茅場町の不動堂や浅草観音堂など、都内各地に傑作を残し、
その名声は江戸中に知れ渡っていたそうです(残念ながら、都内の作品は、関東大震災によって大半が焼失)。
今回の展覧会には、伊豆を中心とする静岡県内や、
関東近郊の寺院・個人宅に伝えられた貴重な伊豆の長八作品が大集結!
《二十四孝》
《ランプ掛けの龍》
「鏝だけで、こんな繊細な表現が出来るの?!」
と、驚愕すること必至。
特に個人的にオススメなのが、《富岳》 という作品。
富士山と海。
銭湯でよく目にする光景 (?) なので、
もしかしたら、図案そのものには、あまり感動を覚えないかもしれませんが。
是非、注目して頂きたいのが、作品の縁。
四辺を構成するこの竹も、実は長八による鏝絵。
下部の竹のみが、枯れた色になっており、上部と左右の竹は青く塗られています。
これは、あまりに枯れた竹の表現が見事すぎて、
本物の竹と勘違いした人が、作品の上から防腐剤を塗ってしまったが故とのこと。
鏝絵の才能、どんだけだ。
さらに、その向かいに展示されていた 《臼に鶏》 も必見の一作です (画像はありません。あしからず)。
額縁に見える木枠も、実は鏝絵で表現されているとのこと。
そう言われてから、観てみても、どうしても普通の木目にしか見えません。
この衝撃体験は、是非皆様にも味わって頂きたいものです。
さらにさらに、《寒梅の塗り掛軸》 も必見!
掛軸の絵が鏝で表現されているのは、当然のこととして。
そもそも、掛軸自体が鏝で表現されています。
しかも、ところどころ虫に喰われているという、こだわりよう。
ここまで来ると変態的すぎて、逆に引きました (笑)
また、ただ鏝絵の技術が高いだけでなく、
独特のユーモア感覚を持ち合わせているのも長八の魅力。
例えば、手綱を踏んで暴れ馬の動きを抑えたという逸話を持つ “近江のお兼” を、
江戸時代随一のユーモアセンスを誇る浮世絵師・歌川国芳が描くと、このようになりますが・・・
伊豆の長八が描くと、このようになります。
《近江のお兼》
もはや馬すら見ていないという (笑)
怪力にもほどがあります。
ちなみに、今回の展覧会には、鏝絵だけでなく、
長八による絵画作品や木彫作品、そして、塑像作品も紹介されています。
ポスターのメインビジュアルにも使われていた 《上総屋万次郎像》 は、
しわ1本1本の細かい描写もさることながら、
前歯が1本かけていたという細かい部分まで忠実に再現されています。
スーパーリアリズムな塑像です。
伊豆の長八を知らなかったという方も、
作品を一目見れば、伊豆の長八ワールドにハマってしまうこと請け合いです。
作品にも十分すぎるほど驚かされましたが、
この充実した内容でたったの100円という入館料にも驚かされました。
1位を目指して、ランキングに挑戦中!(現在7位です)
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!
↧
生誕200年記念 伊豆の長八
↧