原美術館で開催中の “そこにある、時間─ドイツ銀行コレクションの現代写真” に行ってきました。
ドイツ銀行が誇る現代美術コレクション約6万点の中から選りすぐった、
世界各国のアーティストによる60点の写真の秀作を紹介した展覧会です。
あまりにも身近なだけに、数ある美術のジャンルの中で、
特に、「これってアートなの?」 と疑問を浮かべる方が多いのが、写真芸術。
今回の展覧会では、そんな写真芸術の世界を、全4章に分けて紹介しています。
この全4章のカテゴライズの仕方が、非常に明確で、
写真芸術の魅力が何たるかを、実にわかりやすく伝えていた気がします。
そういう意味で、まさに写真芸術のガイドブックのような展覧会。
「これ (=写真) ってアートなの?」 という方にもオススメの展覧会でした。
その4章は、以下の通り。
第一章 「時間の露出/露出の時間」
第二章 「今日とは過去である」
第三章 「極限まで集中した時間」
最終章 「私の未来は夢にあらず」
・・・・・ちょっとイメージしづらいので、僕なりに意訳してみます。
第一章の 「時間の露出/露出の時間」 は、
長時間露光によってスクリーンを満たす映画一本分の光をとらえた杉本博司さんの 『劇場』 シリーズのように、
杉本博司 《ローズクラン ドライブインシアター、パラマウント》
1993年/42x54cm/ゼラチンシルバープリント © Hiroshi Sugimoto / Deutsche Bank Collection
「時間の経過を1枚で表現した写真」 の数々を紹介する章。
続く、第二章の 「今日とは過去である」 は、
写真に写されている時間は当然 “今現在” ではなく過去、
そんな 「過去を記録として残すということを表現した写真」 の数々を紹介する章です。
言い回しが難しくなりましたが、僕らが日常で撮影する記念写真も、このカテゴリーに含まれます。
そして、第三章の 「極限まで集中した時間」 は、
とある海岸での1シーンを俯瞰で撮影したマッシモ・ヴィターリの写真作品のように、
マッシモ ヴィターリ 《#2232, マディーマの波》
2005年/220x180cm/C プリント© VG Bild-Kunst, Bonn 2015/Deutsche Bank Collection
「一瞬や瞬間を切り取った写真」 の数々を紹介した章です。
僕らがデジカメやスマホで普段撮影する写真も、ここにカテゴライズされることでしょう。
最終章の 「私の未来は夢にあらず」 は、
「未来にメッセージを投げかけるようなストーリー性のある写真」 の数々を紹介する章です。
こちらの章では、例えば、やなぎみわさんの 『My Grandmothers』 シリーズが紹介されていました。
やなぎみわ 《My Grandmothers: MINEKO》
2002年/87.5x120cm/C プリント© Loock Galerie/Deutsche Bank Collection
『My Grandmothers』 シリーズとは、モデルとなる女性に、
「50年後の私」 をヒアリングし、そのイメージを実際に具現化させるシリーズ。
ちなみに、「50年後の私」 を演じているのは、特殊メイクで老け顔になったモデル本人です。
個人的には、全4章のうち最終章が好きでした。
特にお気に入りは、北京出身の女性作家・曹斐 (ツァオ フェイ) の 《自分の未来は夢にあらず》 というシリーズ。
曹斐 《自分の未来は夢にあらず 02》
2006年/120x150cm/C プリント © Cao Fei / Deutsche Bank Collection
工場もしくは倉庫と思われる場所で、若い女性がバレエを舞っています。
もう1点の作品では、やはり工場のような場所で、若い男性がエレキギターを手に立っています。
“今は、こういうバイトをしているけれど、将来には、こんな自分になってみせる!”
そんなポジティブな気持ちが伝わる写真作品でした。
僕自身も、芸人時代と合わせて10年近くバイト生活があったので、めちゃくちゃ親近感を覚えてしまいました。
頑張れ!!
さてさて、今回出展されていた写真作品は、
全体的に、親密な空気が流れている作品が多かったように思います。
その空気感と、元邸宅であった原美術館が持つ空気感とが、絶妙に調和していた気がしました。
2ツ星。
ちなみに、全出展作品の中で、もっとも印象に残ったのは、イト・バラーダの 《系図》 という一枚。
イト バラーダ 《系図》
2005年/150x150cm/C プリント © Courtesy the artist and Sfeir-Semler Gallery, Beirut/ Hamburg / Deutsche Bank Collection
パッと見ただけは、何を撮った写真なのか、サッパリわかりませんが。
木目に残る丸や四角の染みは、長い間壁に掛けられていた家族写真を外した後の名残なのだとか。
なぜ、外されてしまったのか。
外される前の家には、幸せな家族生活があったのか。
いろいろと想像させられる一枚でした。
そして、そんな写真が元邸宅であった原美術館に展示されている。
そのことに、より一層と想像を掻き立てられました。
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そこにある、時間─ドイツ銀行コレクションの現代写真
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