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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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まるごとちひろ美術館―世界で最初の絵本美術館―

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現在、ちひろ美術館・東京では、“まるごとちひろ美術館―世界で最初の絵本美術館―” が開催中。
こちらは、ちひろ美術館・東京そのものにスポットを当てた展覧会です。

展覧会は大きく分けて3つのブロックで構成されています。
まずはもちろん、いわさきちひろの紹介から。

小鳥と少女  いわさきちひろ 《小鳥と少女》
『ことりのくるひ』(至光社)より 1971年


美術館が所蔵するちひろ作品は、実に約9450点!
そのうちの約50点を通じて、様々な角度からいわさきちひろの魅力を紹介していました。
ちひろが描く子どもの姿の愛らしさばかりに、つい目がいきがちですが。
今回の展覧会では、たらし込みや白抜き、パステルなど、
ちひろ作品に駆使された技法に着目したコーナーが設けられており、
いわさきちひろの画家としての才能も実感できるようになっています。

ピンクのセーターを着た少女  いわさきちひろ 《ピンクのセーターを着た少女》 1970年


いわさきちひろを、ふわふわした可愛らしい絵を描く、
ふわふわした可愛らしい女性作家と思っていたら大間違い。
一流のテクニックをもった一流の水彩画家なのです。

ちなみに、いわさきちひろが敬愛するアンデルセンの故郷を1ヶ月旅した際、
旅先から夫と息子に当てて送った絵はがきも、会場に展示されていたのですが。
その結びに、“アンデルセン博物館で見た他の絵本作家がどれもイマイチで、
自分の絵本のほうがよっぽど良かった、うぬぼれかしら?” というような一文がありました。
いい意味で、イメージが変わりました (笑)

アトリエの自画像  いわさきちひろ 《アトリエの自画像》
『わたしのえほん』(みどり書房/新日本出版社)より 1968年


さてさて、今でこそ、絵本を専門とする美術館は、
あまり珍しくは無いですが、実はちひろ美術館が世界初。
開館時から、世界各国の優れた絵本画家たちの作品をコレクションし続け、
その数は、2015年7月現在で、なんと約17300点 (ちひろ作品を除く) にも及ぶそうです。
今回の展覧会では、記念すべき第1号コレクションに当たるエリック・カールの 《おんどり》 をはじめ、

おんどり  エリック・カール (アメリカ) 《おんどり》 1985年


選りすぐりの約70点が紹介されています。
展示室が、やや狭く感じられるほどに、みっちりたっぷりと展示されていました。
絵本ファンは必見です。


いわさきちひろ作品に、世界各国の絵本作品に。
これだけで、展覧会が終わりかと思いきや、
建築家・内藤廣さんによるちひろ美術館の建築にも大々的にスポットが当てられていました。
さすが、まるごとちひろ美術館。
建築模型や図面が紹介されていたり、館内の建築的な見どころに直接パネルが設置されていたり。
建築ファンも必見の内容となっていました。

2002年に現在のちひろ美術館・東京の建築に生まれ変わったのですが、その際に。
館長の黒柳徹子さんやいわさきちひろ記念事業団理事長の山田洋次さんらから、

「今までの、やさしい、Intimateなカンジ。ほっとできるカンジ。ひそむカンジなど考慮に入れてほしい。」

などなど、さまざまな要望 (無茶ぶり?) が、内藤廣さんに投げかけられたのだとか。
さらに、黒柳さんは、「赤い壁がいい」 と仰ったそうで、
それを聞いた内藤さんは、“赤い壁って・・・” と途方に暮れたそうです。(←情景が浮かぶようですw)
そんな内藤さんの赤裸々な (?) 告白がパネルで紹介されていたのが、何よりも印象的でした。
この赤い壁には、ドラマがあったのですね。

赤い壁


ちひろ美術館・東京の総集編のような展覧会なので、
これまで一度も訪れたことが無いという方には、特にオススメの展覧会です。
星星


オススメと言えば、館内のカフェで発売中のいちごのババロアも。

ババロア


ちひろが大好きだった 『新宿すずや いちごのババロア』 のレシピをもとに再現したものとのこと。
優しい味でした。




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