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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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井上長三郎・井上照子展 ―妻は空気・わたしは風―

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現在、板橋区立美術館では、“井上長三郎・井上照子展―妻は空気・わたしは風―” が開催されています。

板橋
(注:こちらは写真撮影可能コーナー)


池袋モンパルナスの中心メンバーの一人で洋画家の井上長三郎と、
その妻である井上照子 (旧姓・長尾) の2人にスポットを当てた展覧会です。
井上長三郎の展覧会は、これまでに開催されたことがあるそうですが。
井上照子をフィーチャーする展覧会は、今回が初。
そもそも井上照子の作品自体がまとまった形で展示されること自体、今回が初めてなのだそうです。


展覧会は、まずは井上長三郎の作品から始まります。
これまでに、代表作の 《東京裁判》 をはじめ、

東京裁判


何点か井上長三郎の作品は目にしていますが。
特にこれといった印象は持っていませんでした。

しかし、今回まとまった形で井上長三郎作品を目にして、
「和製フランシス・ベーコン」 とでも言うべき、その独特な世界観の魅力に開眼しました。
こんなに面白い画家だったのですね!

議長席  《議長席》

白い椅子  《白い椅子》


ちなみに、僕のイメージで、勝手に 「和製フランシス・ベーコン」 と名付けてしまいましたが。
おそらく、井上長三郎とフランシス・ベーコンは無関係。
たまたま画風が近いものがあっただけでしょう。
しかし、画風は近いものの、作品から受ける印象は真逆。
暴力性を感じるフランシス・ベーコンの作品とは違い、
井上長三郎の作品は、どこかユーモラスで、のんびりとした印象があります。

個人的に一番惹かれたのは、初期の 《トリオ》 という作品。

トリオ


まるで物語の一場面のような幻想的な世界です。
なんとなく、サントリーのBOSSの昔のCMを連想してしまいました。




さて、もう一方の展示室では、井上照子の作品が紹介されています。
これまで紹介されたことがなかったというのが信じられないくらいに、独自の感性が光る画家でした。
最初こそ、パウル・クレーの影響をもろに受けていましたが。

モンマルトル  《モンマルトル》


その後は、抽象絵画路線に転向します。
彼女の作品の魅力は、一にも二にも色。
井上照子にしか出せないオリジナルカラーが沢山ありました。
いつまでも浸っていたくなる色と言いましょうか、入浴剤にしたい色と言いましょうか。
特に浸かりたい (←?) と思ったのが、《緑地》 という作品です。

緑地


画像なので、実物の微妙なニュアンスが伝わらず。
これまでに目にしたあらゆる緑色の中で、
《緑地》 に描かれた緑色が、一番複雑な表情をしていた気がします。


さてさて、夫婦とは言え、作風が全く違う井上長三郎と井上照子。
しかし、「夫婦は顔が似てくる」 という言葉があるように、やはり作風も似てくるのでは?

・・・と思っていたのですが。
照子の作品には、まったく長三郎の作品の影響が感じられませんでした。
強いて挙げれば、《作品B》 の色彩が、井上長三郎の作品を彷彿とさせたくらいです。

b


それとは反対に、長三郎の作品には、ちょいちょい照子の影響が見て取れました。
しかも、長三郎の晩年の作品は・・・

こども  《こども》


完全に照子カラー!
妻は夫の影響を受けないけれど、夫は妻に影響されるということですね。
展覧会を通じて、夫婦の在り方も学んだような気がします (笑)
星




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