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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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ジョルジョ・モランディ―終わりなき変奏

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『20世紀最大の静物画家』 とも言われるイタリアの画家ジョルジョ・モランディ。
そんな彼の17年ぶりとなる日本での個展が、東京ステーションギャラリーにて開催されています。
“ジョルジョ・モランディ―終わりなき変奏” は、4月10日まで。

ここ数年、アートファンの間で、人気がジワジワと急上昇中のジョルジョ・モランディ。
ジョルジョ・モランディの隠れファン (?) という学芸員さんや美術関係者も少なくありません。
まさに、知る人ぞ知る画家であり、
ジョルジョ・モランディ展の開催を望んでいたという方は、多かったようです。
その証拠に、開始一週目の平日の夕方でも、かなりの人数のお客さんで会場が賑わっていました。
2016年の展覧会のダークホース的存在です。
星星


『20世紀最大の静物画家』 と言われるだけに、モランディは実に多くの静物画を描いています。
というか、ほとんど静物画しか描いていません。
しかも、描かれているのは、壺やビンといった容器のみ。
一般的な静物画に描かれているような美しい花や瑞々しいフルーツは、ほぼ登場しません。

4  《静物》 1946年
20世紀美術館(ミラノ)、ボスキ・ディ・ステファノ・コレクション
© Comune di Milano – Museo del Novecento – Collezione Boschi Di Stefano


5  《静物》 1948年
トリノ市立近現代美術館、グイド・エド・エットーレ・デ・フォルナリス財団
© by courtesy of the Fondazione Torino Musei



モランディの静物画のほとんどが、このような感じ。
特に大きな変化があるわけでもないので、

“なんとも地味で退屈な展覧会だなぁ・・・”

と、最初は思っていたのですが。
次第に、

あれっ、意外と退屈じゃない?!むしろ、なんだか楽しい。

という気持ちになっていきました。
気づけば、僕もまんまと (?) モランディファンになってしまっていたようです。


モランディの魅力。
それは、いい意味で、深みがないことにある気がします。
その生涯にわたって、色調や構図、モチーフなどを変化させながら、
静物画に挑み続けたモランディの画家としての人生哲学には、もちろん深みが感じられるのですが。
作品には、それらが滲み出ていません。
気負いのようなものや押しつけがましさがないので、いつまでもボーっと観ていられるのです。
モランディの静物画を、もし人に例えるなら、
“一緒にいる時に、特に会話をしなくても苦にならない友人” といった感じでしょうか。


また、ヴァリエーションの変化がそう多くないモランディの静物画。
繰り返し、同じモチーフが描かれているので、
作品そのものが、同じような仕上がりになっていることも、しばしです。

静物  《静物》 1951年 モランディ美術館(ボローニャ)© Sergio Buono, Bologna

静物  《静物》 1951年 モランディ美術館(ボローニャ)© Sergio Buono, Bologna


こちらの2つの作品なんて、ほとんど一緒。
青白い瓶があるか無いかの違いです。 (間違いさがしか!)

このように、よく似た構図や要素の静物画が数点並べられていたので、
脳内で勝手に、モランディの静物画をストップモーション・アニメーション (コマ撮り) として再生。

(こんなイメージ↓)



特にモランディ自身が制作したという不思議な形の壺やビンは、
何度となく作品に登場するので、次第に愛着がわき、キャラクターのようにさえ思えてきました。
モランディの静物画をモチーフにしたミニアニメを、
『ピタゴラスイッチ』 か 『Eテレ 0655』 あたりで作ってくれないでしょうか。


ちなみに、展覧会の終盤では、
静物画以外にも、モランディの風景画や花の絵も紹介されていました。

風景画  《風景》 1962年 ウニクレディト・アート・コレクション
©Marco Baldassarri, Bologna



静物画のイメージが強いからもあるのでしょうが。
風景画すら、静物画のように思えてきました。
地味なのに個性は際立っている。
他にはないタイプの画家でした。




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