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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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田中功起 共にいることの可能性、その試み

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水戸芸術館で開催中の “田中功起 共にいることの可能性、その試み” に行ってきました。

水戸


こちらは、国内外で活躍するアーティスト・田中功起さんの日本初となる大規模な個展です。
2013年の第55回ヴェネツィア・ビエンナーレにて、
複数の人々が共同で一つの課題に取り組む様子を捉えた映像作品を発表し、
国際的に高い評価を受けた田中功起さん。
(例:5名の陶芸家が1つの陶器を作る、5名のピアノ科の学生がひとつのピアノを演奏する)
今回の展覧会でも、それらの作品が展示されています。

陶器  田中功起さんは、
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


確かに、高い評価を受けるだけはありました。
何かの実験バラエティ番組を観ているようで、単純に面白かったです。


が、しかし。
今回の展覧会のメインである新作は、率直に言って、あまり面白くなかったです。
一体どんな作品なのかと言いますと・・・

「移動/移住の経験をした人」 という条件で、一般参加者を募集。
その中から選ばれた6名の参加者が、一つ屋根の下で6日間の共同生活をしながら、
料理や朗読、陶芸、社会運動に関するものなど、さまざまなワークショップを実行。
その様子を撮影した映像が、参加者のインタビュー映像や田中さんのノートなどとともに紹介されています。

新作

インタビュー  ノート


映像は、トータルで約230分。
それぞれのワークショップの様子ごとに、数台のモニターで流されています。
(あえて時系列には並べられていませんでした)
さすがに230分間見続けなくてはならないということはないのですが。
それでも全体を把握するには、相当な時間を要します。
というか、映像そのものが退屈でした。

見ず知らずの一般人が共同生活する様子を、カメラが捉える。
アート作品としては前例が無いのかもしれませんが、テレビ番組としては、よくあるスタイルです。
(『電波少年』 や 『あいのり』 、最近では 『テラスハウス』 など)




すでに、世の中にそういう前例のテレビ番組があるので、
「今さら一般人が共同生活したところで・・・」 感は否めませんでした。
しかも、それらの番組と比べてしまうと、今回の新作は、展開が圧倒的に地味。
6日間あったにも関わらず、特にドラマらしいドラマは起こりません。
いや、6日目に少し口論のような場面はあったのですが、
ヒートアップしそうなタイミングで、帰りのバスの時間になって強制終了。
不完全燃焼な感じでした。
もし、これがテレビ番組なら、プロデューサーはバスを待たせても、撮影を続けたでしょうに。

そもそも、参加者全員が、画的に地味。(←失礼なのは重々自覚しています)
ビジュアルではなく、キャラ的に華がありませんでした。
そんな6人の6日間の生活を、約230分間も観させられても。。。
これがテレビ番組だったら、視聴率は散々なものでしょう。

もちろん、これはテレビ番組ではなく、あくまでアート作品。
オモシロさは必要ないのかもしれません。
見ず知らずの一般人を共同生活させる。
そのリアルな様子を捉えたいというアーティストの狙いは、わかります。
ただ、6日間にわたって共同生活が出来て (=6日間も仕事が休めて)、
しかも、その生活の模様が美術展で晒される、アート作品として一生残ってもOKという人は、
かなり奇特な存在で、決して平均的な一般人とは言えない気がします。
参加者の誰にも感情移入が出来なかったのは、それが原因なのでしょう。


新作と比べたことで、改めてヴェネツィア・ビエンナーレで評価を受けた作品の面白さに気が付きました。
5名の陶芸家が1つの陶器を作る、あるいは、5名のピアノ科の学生がひとつのピアノを演奏する。
その結果として、スゴい作品が出来上がっても、
意外と普通の作品になっちゃっても、逆にどうしようもない駄作が完成したとしても、
どの結末になっても、それなりに面白い気がします。
それに対して、見ず知らずの一般人が6日間共同生活をするというのは、
かなりインパクトの強い結末がない限り、面白くは感じられないでしょう。
そういう意味では、企画の段階で無理があったような。
ただ、それでも、一般人が6日間共同生活する映像作品にこだわるなら、
年齢層が低いver.とか、男女半々のver.とか、いろんなタイプの人をごちゃ混ぜにしたver.とか、
数種類のケースがあれば、結果が対比できて面白かったのかもしれません。
星


ちなみに。
新作の映像作品だけでも、トータルで約230分と長尺のため、
今回の展覧会に限って、1枚の入場券で3回入場可となっています。
水戸周辺の方には、嬉しいサービスです。
東京から3回も通うのは・・・・・さすがに現実的ではないです (汗)




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