キジバトってキスをするの？若冲の描く鳳凰に一番近い鳥は？

ハトにクジャクにニワトリに。
美術の世界には、実にたくさんの鳥が登場します。
それら鳥にまつわるアート作品に関して抱いている疑問を、
これまでに何度もトークショーでタッグを組んだことのある鳥博士・高橋雅雄君に解決してもらおうという新企画。
それが、「高橋君に聞いてみないとネ」 。

　　　


＜プロフィール＞
高橋雅雄　
1982年青森県八戸市生まれ。小学4年生から野鳥の追っかけを始める。
金沢大学理学部、立教大学理学研究科博士課程を経て、青森県仏沼のオオセッカの繁殖生態の研究を行う。
2013年3月に博士課程を修了し、博士号 （理学） を取得。
2013年9月より、新潟大学朱鷺・自然再生学研究センターの特任助手として佐渡島に赴任。
トキの野生復帰の研究-プロジェクトに参加。
2015年4月より弘前大学農学生命理学部の研究員となり、
渡り鳥に対する風力発電の影響評価に関する研究プロジェクトに参加。

大学1年より美術館に通い始める。
2009年1月に開催されたアートテラー・とに～氏主催の記念すべき第1回アートツアー@渋谷に参加。
その縁により、とに～氏と鳥とアートをテーマにしたトークショーを不定期に開催。

未婚。


まずは、箱根ラリック美術館で開催中の “愛のヒントが見つかる美術館” 。
そのメインビジュアルにも使われているラリックのガラス工芸品に関する疑問から。

　　



Ｑ　ルネ・ラリックの花器 《キジバト》 は、キジバトがキスをしているけど、
　　実際のキジバトもキスをするの？

～高橋君による見解～

「この原題の 『TOURTERELLES』 はハトの仲間全般を指すので、特定の種類を指定していないはず。
　「キジバト」 と断定するのは間違いでしょう。
　そもそもキジバトは東アジア限定の種類で、ヨーロッパには居ません。

　このようなキス的な行動は、一方からもう一方へ餌を口移しで与える “給餌行動” です。
　親鳥からヒナ鳥へ餌を与えたり、オスからメスへ餌を与えたりします。
　どちらも愛情が感じられる行動です。

　ですが、この作品を写真で観る限りハトに見えませんね。
　カナリアやヒワ類の小鳥に見えます。
　そもそもハトじゃないかも・・・。」

　　
　カナリヤ　　［Gelber Kanarienvogel (Serinus canaria)　File:：4028mdk09］


続いては、ルノワールの傑作に関する疑問です。




Ｑ　ルノワールの名画 《鳥と少女》 。
　「鳥」 って、ざっくりし過ぎだけど、実際のところ何の鳥なの？

～高橋君によるアンサー～

「この絵は全体的に輪郭や文様をあいまいに描いているので、鳥もぼやけていてよくわかりません。
　現実の鳥っぽくないので、何の鳥なのか全く判断できない・・・。
　尾羽に目立つ縞模様があるので、タカの仲間やカッコウの仲間に見えるけど、
　タカだとすると、タカは足の爪が鋭いので、少女の手は血まみれのはず。」


続いては、あの仏像に出逢った人なら誰しもが抱くであろう疑問です。




Ｑ　さすがに大人は無理だろうけど、
　　孔雀明王のように孔雀に乗ることって子供なら可能なの？

～高橋君による見解～
「クジャクの体重は5kg程度。
　同じくらいの体重なら、背に乗せることは出来るはず。
　でも体重5㎏だと、1歳児でも難しいかも。
　ちなみに世界最大の鳥であるダチョウは体重100kg程度なので、成人男性でも乗れます。」




続いては、浮世絵に関するこんな疑問です。

　　


Ｑ　鳥のような目線で描いた浮世絵って言うけど、
　　あんなに空高く飛べる鳥はいるの？

～高橋君による見解～
「左は東京スカイツリーのてっぺん （634ｍ） くらい、
　右は旅客飛行機から見た景色 （1万ｍ） くらいの高度かな？
　1000m近い高度を飛行できる鳥は結構いるので、こっち （画面左） くらいは余裕でしょ。
　8000m級のヒマラヤ山脈を飛び越える鳥もいるので （アネハヅルとかインドガンとか） 、
　一部の鳥は心肺機能的に高度1万ｍくらいまで飛べる能力を持っています。

　だけど、それは鳥の中でも特別な例で、
　しかも能力の限界近くまで頑張った結果なので、その辺のスズメやカラスはそんなには飛べません。
　
　『能力の高い鳥 （ツルやガンなど） が好条件で、
　　能力の限界まで頑張ったら、もしかしたら見るかもしれない景色』

　・・・じゃないかな。
　通常ではツルやガンは頑張っても2000m程度までしか上昇できないだろうし。
　それ以上頑張ったら力尽きてしまう気がする…。」


　　
　アネハヅル　　［Gelber Kanarienvogel (Serinus canaria)　File:：Jungfernkranich.jpg］


最後は、伊藤若冲に関する疑問をどうぞ。




Ｑ　伊藤若冲の描く鳳凰に、一番近いイメージの鳥って何なの？？

～高橋君による見解～
「お尻に特徴的な飾り羽があるのでクジャクの仲間の雄。
　頭の冠羽の先に丸い装飾が無いので、マクジャクだね。
　しかも全身白だけど部分的には色が付いているので、“部分白化個体” です。」

　　マクジャク （羽根を広げたオス） 　　
This image, which was originally posted to Flickr.com, was uploaded to Commons using Flickr upload bot on 09:08,
4 February 2009 (UTC) by Nguyễn Thanh Quang (talk). On that date it was licensed under the license below.


さて、今回から始まった 「高橋君に聞いてみないとネ」 では、
読者の皆様からも、鳥にまつわるアート作品に関して抱いている疑問を広く募集いたします！
見事、疑問が採用された方には、
美術展チケットをペアでプレゼントしますので、どしどしご応募ください。
コメント欄に書き込むか、以下のメールフォームによろしくお願いいたします。
http://homepage3.nifty.com/art-teller/tony_contact.htm




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