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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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田中敦子―アート・オブ・コネクティング

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突然ですが。
僕は、自分の本名を、ちょっとだけ鬱陶しく思っています。

その原因は、僕の本名・大山敦士の 「敦」 の一字。
こいつが、何とも厄介なのです。
自己紹介をしている時に、

「 “あつし” って、どんな漢字を書くの?」

と、尋ねられた日には、説明するのが非常に面倒くさい。
まず、有名人で、この漢字を使っている人がいませんし。
(今は、AKB48の前田敦子がいますね!)
この漢字を使った熟語が、そうそうありません。

尋ねた相手に地理の知識があることに賭けて、

「敦煌の敦だよ」

と、説明してみますが、たいていは、

「・・・・・えっ?」

と返されます。
そこで、漢字をパーツに分けて説明するという方法を取ります。

「え~っとね。なべぶた書いて、口を書いて、子どもの子を書いて、左はぼくにょう」

「ぼくにょうって?」

「ぼくにょうは、牧場の “牧” の左側だよ!」

「あぁ、なるほど」


・・・と、これが、毎回の流れ。
「敦」 の一字を説明するのが、どれだけ大変なことか。
それだけに、この漢字が名前に使われている人を見ると、強いシンパシーを感じてしまうのです。

そんな理由で、僕が個人的に、強いシンパシーを感じていたのが、
日本の戦後美術界を代表する女性芸術家・田中敦子(1932-2005) 。
(きっと、彼女も、自分の本名を、ちょっとだけ鬱陶しく思っていたに違いありませんw)

いつか、彼女の回顧展が開かれないものかと、
同じ 「敦」 仲間として、長い間、待ち望んでおりましたが。
ついに、東京都現代美術館にて、
“田中敦子―アート・オブ・コネクティング” が開催される運びに。
しかも、イギリス、スペインを巡回しての開催。
いやはや、同じ 「敦」 仲間として、鼻が高いです (←?)

さてさて、今回の田中敦子展は、
国内外から集められた約100点の作品から構成される大規模な回顧展です。

もちろん。
彼女の代表作である、こちらの作品も展示されています↓

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-電気服


9色の合成エナメル塗料で塗り分けられた管球約100個と電球約80個からなる 《電気服》 です。
この作品が発表されたのは、なんと1956年のこと。
まだ紅白歌合戦に、電飾付きの衣装の小林幸子が登場していない頃の話です。
そんな時代に、こんな奇想天外な発想を生み出していたとは、驚きを隠せません。

また、会場には、彼女のもう一つの代表作 《ベル》 も展示されていました。
展覧会場には、20個のベルが、2メートル間隔で設置されています。
“押して下さい” と書いてあるボタンがあったので、押してみました。
ポチッとな。
すると、

「ジリリリリリリリリリ・・・・・・・・」

と、会場に、けたたましく鳴り響くベルの音。
焦る僕。
咄嗟に手を離すと、ベルの音は鳴り止んでしまいました。

“こんなに大きな音が出るなら出ると、一言注意書きをしてくれよ!”

と、思いつつも、気を取り直して、もう一度ベルを押してみます。
どうやら、この作品は、押し続けないと、いけないようです。

「ジリリリリリリリリリ・・・・・・・・」

と、再び会場に鳴り響くベルの音。
今度は、ボタンを押し続けています。

「ジリリリリリリリリリ・・・・・・・・」

ん?

「ジリリリリリリリリリ・・・・・・・・」

んん??

「ジリリリリリリリリリ・・・・・・・・」

音が、遠くへ行っているような。
そう、実は、この作品は、
音が鳴り響くベルが、順に隣のベルへと移っていき、どんどん音が遠ざかっていくというもの。
(ちなみに、一番遠くまで行くと、今度は、スイッチバックして近づいてきます)
これもまた、50年以上も前の作品。
やはり発想力が飛んでます。


「いままでにみたこともないものをつくりたい」

と、 《電気服》《ベル》 という作品を50年以上も前に作った芸術家がいたという事実に感動しました。
・・・ただ、作品そのものに関しては、

「これって、アートなの (苦笑) ?」

としか反応しようがありません。
今、現代美術展で、

「これって、アートなの (苦笑) ?」

という作品に数々出会うことがありますが、
田中敦子は、おそらく、その原因を作った人間の一人なのでしょう。
良くも悪くも、現代美術のパンドラの箱を開けてしまった方なのでしょうね。


個人的には、 《電気服》《ベル》 よりも、平面作品に心を惹かれました。

《Thanks Sam》 や、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《Thanks Sam》


《地獄門》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《地獄門》


のように、無数のカラフルな円が描かれており、
それらの円が触手のようなもので結びついています。
何を表しているのかは不明でしたが、
なぜか観ていて、不思議と落ち着きと畏敬の念のようなものを覚えました。

“う~ん、この鑑賞体験は何かに似ているような・・・ハッ!曼荼羅?!”

田中敦子が描きたかったものと、もしかしたら違うのかもしれませんが。
僕は、これらの平面作品は、曼荼羅を表しているのではないかと思いました。
絵を前にするだけで、こんなにも敬虔な気持ちになれた抽象画は初めてです。
星


最後に。
これまた個人的に、何だか気になって気になって仕方がなかったことを。
田中敦子の平面作品のいくつかに、彼女のサインがあるのですが。

《金のWork A》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《金のWork A》


アップしてみます↓

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《金のWork A》


田中


別の 《作品》 も。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《作品》


アップしてみます↓

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《作品》


やっぱり田中

名字でサインがあると、妙に面白いw




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