現在、三鷹市美術ギャラリーでは、
“芸術写真の時代―塩谷定好展” が開催されています。
こちらは、日本芸術写真のパイオニアである塩谷定好 (しおたにていこう 本名:さだよし) の東京初の回顧展です。
日本でこそ、あまり知られていない塩谷定好ですが (かくいう僕も知らなかったわけですが) 。
1982年にドイツで開催されたフォトキナ写真展 (世界最大の写真関連見本市) の最高賞である栄誉賞を受賞、
1988年には個展が全米各地を巡回するなど、実は国際的に評価の高いアマチュア写真家なのです。
ちなみに、活動の拠点は、鳥取。
その生涯のほとんどを、生まれ故郷である鳥取で過ごしたそうです。
・・・と、鳥取のアマチュア写真家といえば。
僕の好きな植田正治も鳥取を中心に活躍したアマチュア写真家。
そんな植田正治は、塩谷定好に関して、こんな言葉を残しているそうです。
「塩谷さんといえば、私たちにとって、それは神様に近い存在であった」
では、あの植田正治に神と言わしめた塩谷定好の写真をご紹介してきましょう。
《天気予報のある風景》 1931年 ゼラチン・シルバー・プリント 25.2×28.7cm 鳥取県立博物館蔵
地球が丸く見える場所には、行ったことがありますが。
こんなにも丸く見える場所があったのですね!
・・・・・と思いきや、たわませた印画紙にネガの画像を焼き付ける、
「デフォルマシオン」 という技法を用いて制作された写真作品とのこと。
ちなみに、こちらの 《トンネルのある風景》 も、
1930年 ゼラチン・シルバー・プリント 23.8×24.0cm 鳥取県立博物館蔵
実際の風景をギュッと縮めるようにプリントされているそうです。
パッと見たとき、シュルレアリスムの絵画のような印象を受けたのは、そのためだったのですね。
まだまだカメラが、高級な趣味だったこの時代に、
これほどまでに実験的な写真を現像できるだなんて。
それもアマチュアで。
三菱一号館美術館で絶賛開催中のジュリア・マーガレット・キャメロンと同じく、
“よほど、お金持ちの人物なのではなかろうか?”
という僕の予想は、大正解でした。
塩谷家は、代々廻船業を営む約200年の歴史を誇る旧家。
定好は、その7代目だそうです。
若冲しかり、ジュリア・マーガレット・キャメロンしかり、塩谷定好しかり。
芸術は生活の余裕があって生まれるものなのかもしれません。
ただ、お金持ちの家に生まれた人物と思えないほど (?) 、
塩谷定好の写真には、どことなく不穏な部分が見え隠れしています。
ただならぬ気配が漂っているといいましょうか。
《龍巻》 1929年 ゼラチン・シルバー・プリント 27.5×44.7cm 鳥取県立博物館蔵
《蟹 ヒシガニ》 1955年 ゼラチン・シルバー・プリント 24.7×29.9cm 鳥取県立博物館蔵
《台所道具を配せる主婦像》 1934年(printed later) ゼラチン・シルバー・プリント 24.0×28.6cm 鳥取県立博物館蔵
見れば見るほど、塩谷定好ワールドに引き込まれて (引きずり込まれて?) いきました。
ちなみに、塩谷定好の写真を鑑賞している際、
なぜか脳内では、『ウルトラQ』 のテーマがループ再生されていました (笑)
最後に、個人的に一押しの作品をご紹介。
《猫》 1931年 ゼラチン・シルバー・プリント 27.2×34.0cm 鳥取県立博物館蔵
スヤスヤ眠る猫の姿に、ほっこりしました。
なんとなく、猫の柄と布団の柄が繋がっているような気も。
ちょっとシュールです。
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芸術写真の時代―塩谷定好展
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