葛西臨海水族園や法隆寺宝物館の設計で知られる世界的建築家・谷口吉生氏。
その最高傑作との呼び声が高い豊田市美術館に、ついにやってきました!
な、な、なんとシンプルで力強く、かつ美しい建築なのでしょう!!
そして、谷口吉生氏と言えば、水盤。
水盤越しの豊田市美術館の姿も、ちゃんと拝んでおかなくてはなりません!
あれっ?なんか脚立が2本と看板のフレームみたいなのがある・・・
邪魔なこと、この上なし。
この光景を見るのが楽しみだっただけに、微妙に残念な感じになりました。
さてさて、なんとか気を取り直して、美術館の中へ入りましょう。
豊田市美術館の顔ともいうべき作品、
ジョセフ・コスース 《分類学(応用) No.3》 の脇を通り、企画展の会場へ。
現在開催されているのは、“蜘蛛の糸” という展覧会。
展覧会のテーマは、ずばり 「蜘蛛の糸」。
なんとなくですが、ハロウィンのシーズンにピッタリな展覧会な気はします。
とは言え、切り口としては、かなり二ッチなので、
“果たして、展覧会として成立するのだろうか”
と、老婆心ながら、会場に入るまで勝手に心配していたのですが。
全くの杞憂に終わりました!
蜘蛛の糸そのものが描かれた小茂田青樹の 《虫魚画巻》 や、
蜘蛛の糸柄の着物が印象的な上村松園の 《焔》、
(注:今回出展されているのは、この絵ではなく、下絵です)
蜘蛛の糸をバックにした蜘蛛の怪人がインパクト大な浮世絵をはじめ、
月岡芳年 《『新形三十六怪撰』より「源頼光土蜘蛛ヲ切ル図」
蜘蛛の糸をモチーフにした絵画作品の数々が紹介されていました。
熊谷守一の 《地蜘蛛》 のように、
「あれっ?糸は?」 という作品も一部ありましたが、そこは、まぁ、ご愛嬌 (笑)
さらには絵画だけでなく、蒔絵や鍋島焼など、
蜘蛛の糸がデザインされた江戸時代の工芸品も紹介されていました。
意外と昔から、蜘蛛の糸がデザインに取り入れられていたのですね。
そして、意外と作品数も、少なくなくはないのですね。
二ッチなテーマなのかと思いきや、実は奥深いテーマだったようです。
また、今回の展覧会は、現代アートも充実しています。
というか、半数以上が現代アートでした。
特に印象的だったのは、塩田千春さんのインスタレーション作品。
蜘蛛の糸・・・というよりは、糸ありきの作品である気がしますが。
会場に入っていきなり、この光景が飛び込んでくるのは、相当なインパクトでした。
ただ、この1か月半で、KAAT神奈川芸術劇場での帰国記念展、“GUCCI 4 ROOMS” と、
立て続けに塩田さんの作品を目にしているので、個人的には、そろそろお腹いっぱいです (笑)
他にも、芥川龍之介の名作をモチーフにしたムットーニさんの最新作 《蜘蛛の糸》 や、
平成の自在置物作家・満田晴穂さんの最新作 《自在大女郎蜘蛛》 なども観られて大満足でした。
・・・・・・・展覧会の途中までは。
「蜘蛛の糸」 というテーマでお送りしている展覧会ですが、
後半に突入すると、拡大解釈というかこじつけが過ぎるようになってきたのです。
例えば、『アラクネの末裔』 と銘打たれた第4章。
キャプションには、こんなようなことが書いてありました。
「アーティストはまさに蜘蛛のようだ。驚くほどの共通点がある。
作家の内なる衝動から紡ぎだされた線が拡張していくことによって生まれた作品、
行為の反復と集積によって壮大なるスケール感や律動を生み出した作品を紹介します。」
で、草間彌生さんや田中敦子の作品が展示されていました。
まぁ、ギリギリ言いたいことはわからなくもなかったですが。
「蜘蛛の糸」 というテーマからは、かなり離れてしまったような。
続く第5章の要旨は、以下のような感じでした。
蜘蛛の種類や環境によって、作り上げられる巣のデザインは様々。多彩。
つまり、テクノロジーの結集。
そこで、
「蜘蛛の巧妙で精巧な網づくりを彷彿とさせるアーティストたちの多彩な表現を紹介します。」
とのこと。
完全に蜘蛛も糸もどこかに行ってしまいました。
蜘蛛の糸がプツッと切れた感じがしました (笑)
さらに、最終章のキャプションには、以下のようなことが書かれていました。
4億年の進化を遂げた蜘蛛に対し、人間はまだ20万年しか生きていません。
にもかかわらず、エネルギーの大量消費による地球温暖化問題、
グローバル化によって引き起こされた経済の不均衡、価値観の違いによる衝突、
民族、宗教をめぐる政治的、社会的問題など、あらゆる危機に直面しています。
先行きの不透明な時代に私たちの行く末を照らし、
新たな可能性の扉を拓くプロジェクトや芸術活動を、「新種の蜘蛛」 として紹介するとのこと。
・・・・・・・・。
「蜘蛛の糸」 というテーマに囚われすぎて、
精神的な蜘蛛の糸 (←?) から抜け出せなくなってしまったのではなかろうか。
もはや、心配になる展覧会でした。
前半が面白かっただけに、なんか残念です。
ちなみに、心配と言えば。
江戸時代後期から昭和にかけて活動した南画家・岡本柳南の 《蜘蛛》 (1922年) という作品がありまして。
(作品画像が無くて恐縮ですが、掛け軸の中央に蜘蛛が1匹ポツンと描かれているだけの作品です。)
その絵のキャプションが、かなりキてました。
書き出しには、蜘蛛の糸を描かずして蜘蛛の糸を想起させるユニークな作品です、とありました。
そこまでは良かったのですが。
「この蜘蛛は今を生きる私たちの姿そのもの。
インターネットや携帯電話などSNSという見えない糸に縛られ浮遊している」
という一文が添えられていました。
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蜘蛛の糸
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