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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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色の博物誌 -江戸の色材を視る・読む

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目黒区美術館で開催中の “色の博物誌 -江戸の色材を視る・読む” に行ってきました。

目黒区美術館


こちらは、1992年より、「青」 「赤」 「白と黒」 「緑」 「黄色」 と 『色』 をテーマに、
目黒区美術館にて不定期開催されていた伝説のマニアックな展覧会 “色の博物誌” の復活版!
実に12年ぶりの復活です。
通算6回目に当たる今回のテーマは、
かつてのように何色というわけではなく、「江戸時代の豊饒な色材」。
国絵図と浮世絵に使われている色材を、マニアックに徹底的に解説する展覧会です。


・・・・・ところで。
さらっと登場した “国絵図” なる耳慣れない言葉。
一体、どんなものなのでしょうか?

実は、国絵図とは、江戸時代、幕府への献納物として各藩が精力をあげて制作した巨大な絵地図のこと。
当時の絵画とほぼ同じ色材が使われた、それはそれは豪華な地図です。
江戸時代の国絵図は、その巨大さや豊富な色彩、描画の技術などの点で、
美術的・資料的に非常に価値が高く、世界的にみても特筆されるべきものと考えられているのだとか。

今回の展覧会には、4点の国絵図が展示されています。
「なんだ、たった4点かー。」 と残念に思った方もいらっしゃるでしょうが。
1点1点が大きいので見ごたえは十分!

《備前国
《備前国図》 慶長年間 329.0×280.7cm 岡山大学附属図書館蔵 池田家文庫


初めて目の当たりにする国絵図のスケールに、ただただ圧倒されました。
江戸時代に、こんなスゴい地図があったとは!
感動すら覚えるレベルでした。


と、それだけに。
児島郡 (島の部分) の土地の色には、鉛丹が使われているだとか。
枡形の中の黄色は、藤黄と胡粉を混ぜたものだとか。
個人的には、色の解説はどうでもよかったです (←色がテーマの展覧会なのにw)
あくまで個人的には、もっと地図としてフィーチャーされてて欲しかったです。

ちなみに、会場には、こちらの 《備前国絵図》 とともに、

備前国絵図(元禄)
《備前国絵図》 元禄13年 316.0×357.0cm 岡山大学附属図書館蔵 池田家文庫


東京藝術大学大学院保存修復日本画研究室が完全復元したバージョンのものも展示されていました。
オリジナルもそれなりにカラフルでしたが、
復元バージョンは、当然もっとカラフルでした。
パステルピンクに、パステルグリーン。
なんかファンシー。
80年代っぽい?


さて、今回の展覧会でフィーチャーされているのは国絵図と、そして、浮世絵。
浮世絵に関しては、太田記念美術館での展覧会をはじめ、
これまでに何度となく目にしているので、特に目新しい発見はないだろうと、高を括っていました。

・・・・・・が!!

この展覧会がなければ、もしかしたら、
その存在を一生知ることが無かったかもしれない人物との出会いがありました。
その名は、立原位貫 (1951~2015) です。
もともとはジャズのサックス奏者として活動していたのだそうですが、
25歳の時に、1枚の浮世絵に大きな感銘を受け、なんと木版画家に転身!
江戸時代と同じ浮世絵版画の技法を独学でマスターし、
江戸時代に使われていた紙や絵の具、道具を用いて浮世絵の復刻・復元を成し遂げた作家です。

会場には立原位貫が実際に使用していた道具や和紙、版木も併せて展示されていました。
どう見ても、江戸時代のもの。
平成に使われていたもののようには見えません。
それだけ、道具や技法にこだわって制作された浮世絵は、もはやコピー感、復刻感はゼロ。

今様美人捨二景
立原位貫 復刻・復元 《今様美人捨二景 おてんばそう(溪斎英泉)》 平成3年 大判錦絵 山口県立美術館・浦上記念館蔵


オリジナルの浮世絵としか思えませんでした。
なんなら、比較展示されていた江戸時代の本物の浮世絵を蛇足に感じてしまったほど。

見比べてみると、その差は歴然!

山姥と金太郎
左) 喜多川歌麿 《山姥と金太郎 煙草のけむり》 享和1~3年(1801~03) 大判錦絵 山口県立萩美術館・浦上記念館蔵
右) 立原位貫 復元・喜多川歌麿 《山姥と金太郎 煙草のけむり》 昭和57年(1982) 大判錦絵 個人蔵



浮世絵って、こんなに美しいものだったのですねキラキラ

素直に感動しました。


芸術の秋。
都内各所では、面白い展覧会がたくさん開催されています。
それらの王道の展覧会と比べると、確実にイロモノな気はしますが。
目黒区美術館のカラーが如実に出た、見て損のない展覧会でした。
星




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