今年2017年は、明治期の日本を代表する七宝家・並河靖之の没後90年となる節目の年。
それを記念して、東京都庭園美術館にて、並河靖之の大々的な回顧展、
“並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑―透明な黒の感性” が開催されています。
実は、意外にも、今回が初めての開催となる並河靖之の回顧展。
会場には、初期の作品から晩年の作品までが一堂に会しています。
さらには、三の丸尚蔵館やヴィクトリア&アルバート博物館が所蔵する作品も集結。
初にして、決定版ともいえる豪華な並河靖之展です。
(注:会場は撮影禁止です。記事に使用している画像は、特別に提供して頂いたものです)
さてさて、並河靖之の七宝の魅力といえば、やはり何と言っても、その紋様の細かさ。
並河靖之 《藤草花文花瓶》 並河靖之七宝記念館蔵
“細かすぎて伝わらない” とは、まさにこのこと。
器を覆い尽くすように、びっしりと紋様が施されています。
並河靖之 《藤草花文花瓶》 並河靖之七宝記念館蔵
これだけの紋様を、「細い筆ペンで描きました」 と言われても、それなりに驚くでしょうが。
こちらの作品は、もちろん七宝作品。
つまりは、すべての線は、リボン状の薄い金属線で構成されているのです。
とても人間業とは思えません。。。
並河靖之の超絶技巧的な作品は、これまで何度も観る機会はありましたが。
並河靖之という人物について知る機会はほとんどなかったので、
「生まれたときから、七宝の天才だったのだろうなぁ」 くらいに思っていました。
しかし、今回の展覧会を通じて、並河靖之の真の姿を知ることに。
彼の生涯は、決して順風満帆ではありませんでした。
元は貧しい武家の生まれで、副業として七宝を始めたのが28歳の時のこと。
めきめきと才能を開花させ、輝かしい賞を何度も受賞しましたが。
契約を破棄されたり、負債を抱えたり、
技術はあるのに図案がワンパターンとディスられたり、何度も大きなピンチに見舞われます。
が、そのたびに、ピンチを乗り越え、より成長していった並河靖之。
まるで、『少年ジャンプ』 の主人公のようでした。
しかも、2コ下には、同じ “ナミカワ” 姓で、
無線七宝という独自の技術を編み出した七宝家・濤川惣助というライバルがいます。
そんなところも、『少年ジャンプ』 の主人公のよう。
直接、2人は出会ったことはないようですが、
濤川惣助に対抗して、有線七宝の表現の限界に挑み続けたのでしょう。
そんな果てしない修行 (?) の末に、並河靖之が辿り着いた七宝作品の紋様は・・・
並河靖之 《菊紋付蝶松唐草模様花瓶》 一対 泉涌寺蔵
あまりにスゴすぎて、もはや常人には肉眼で確認できないレベルに。
並河靖之 《菊紋付蝶松唐草模様花瓶》 一対 泉涌寺蔵
『少年ジャンプ』 の主人公のよう・・・っていうか、孫悟空のよう。
スーパーサイヤ人の戦闘シーンの如しです (←?)。
そういうわけで、並河靖之の七宝作品を100%堪能するのであれば、単眼鏡はマストアイテム!
持っていないという方も、ご安心ください。
美術館で無料貸し出しサービスをしていますので、単眼鏡を片手に超人技をお楽しみくださいませ。
昨年の若冲展に通じる衝撃が味わえる展覧会です!
ちなみに、今回の出展作の中で、特に印象的だったのは、《花鳥図飾壷》 。
並河靖之 《花鳥図飾壷》 清水三年坂美術館蔵
普通に美しい作品なのですが、それとは別に、何かモヤモヤすることが。
こんな黒地に色とりどりの花のある光景を、どこかで目にしたような・・・?
数分後、そのデジャヴの原因判明。
あ、チェルシーだ!(バタースカッチのほう)
個人的にお気に入りなのは、《菊御紋章藤文大花瓶》 です。
こちらは、いい意味で力が抜けてきた頃の作品。
図案の美しさと余白の美しさが、同時に楽しめます。
一瞬、琳派の作品のようにも思えたのですが、藤をよーく観てみると、
並河靖之 《菊御紋章藤文大花瓶》(部分) 並河靖之七宝記念館蔵
特に琳派のようにデザイン化されているわけではないことに気が付きました。
このようにリズミカルでないところが彼の個性であり、かえって魅力的に映るのかもしれません。
最後に、ある意味、七宝以上に衝撃的だった展示品をご紹介。
《貼り交ぜ屏風》 並河靖之七宝記念館蔵
並河靖之本人が仕立てたとされる 《貼り交ぜ屏風》 です。
屏風に貼られているのは、国内外の博覧会で受賞した際の賞状。
自分が好きなんだなぁ。
しかも、この他にも何種類かあるとのこと。
つくづく、自分が好きなんだなぁ。
トロフィーとか盾をたくさん部屋に飾っているのに近いものがあります。
1位を目指して、ランキングに挑戦中!(現在7位です)
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!
↧
並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑―透明な黒の感性
↧