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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展

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ブリューゲルの 《バベルの塔》 が24年ぶりに来日していることで話題の展覧会、
東京都美術館で開催中の “ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展” に行ってきました。

バベル
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


ピーテル・ブリューゲル1世が生涯で描いた 《バベルの塔》 は、全部で3点。
そのうち2点が現存しており、
ウィーン美術史美術館と、オランダにあるボイマンス美術館がそれぞれ所蔵しています。

今回来日しているのは、ボイマンス美術館が所蔵する 《バベルの塔》

バベルの塔
ピーテル・ブリューゲル1世 《バベルの塔》 1568年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands


通称、小バベル。
ウィーン美術史美術館の 「大バベル」 と比べると、その大きさは4分の1ほど。
確かに、想像していた以上に、小さかったです。

小さい


“そんな24年ぶりの来日で騒ぐような絵かなぁ??”

と思いながら、小さい絵なので、何の気なしに単眼鏡で鑑賞してみました。
その瞬間、思わず、「おぉ!」 という声を上げてしまいました!

肉眼では、巨大なバベルの塔がドーンと描かれているだけの絵にしか見えませんでしたが。
塔を建設している人や、洗濯物を干している人など、
さまざまな人々が画面内にみっちりと描きこまれているではないですか?!

壁
(↑こちらは会場内の壁に拡大プリントされていたものです)


このように米粒大のサイズで描かれた人は、画面の中に、なんと約1400人 (!) もいるとのこと。
そう、小バベルは、執拗なまでに緻密な世界が描きこまれた超絶技巧な絵画だったのです。

ちなみに、バベルの塔の左側に見える赤と白のラインも、ただの塔のデザインではありません。
実は、赤いラインはレンガを、白いラインは漆喰を、
それぞれ塔の上に運んでいる作業を描いたものなのです。
よ~く見ると、人々がせっせと仕事をしているのがわかります。
是非、よ~く見てあげてくださいませ。


さてさて、タイトルがタイトルなだけに、
《バベルの塔》 1点豪華主義的な展覧会なのかと思いきや。
他にも見どころが満載の展覧会でした。
星星


例えば、世界で油彩画の真作が約25点しかないとされる奇想の画家ヒエロニムス・ボスの作品が・・・

ボス


なんと2点も出品されています。
しかも、両方とも初来日。
こっちが展覧会の主役でも不思議ではないくらいです。

個人的には、《聖クリストフォロス》 のほうがお気に入り。

クリスト
ヒエロニムス・ボス 《聖クリストフォロス》 1500年頃 油彩、板 Museum Boijmans Van Beuningen, Rotterdam, the Netherlands (Koenigs Collection)


花瓶に小っちゃいおじさんが入っていたり、
熊が気に吊るされていたり、廃墟にモンスターがいたり。
と、ボスの奇想ワールドが炸裂。
しかも、川の向こうに、進撃の巨人も描かれていました。
たぶん、あれは奇行種。


また、ボスやブリューゲルの奇想ワールドが全開した版画作品も多く出展されています。
こちらも見ごたえは充分。

版画


特にイチオシは、ブリューゲルの 《大きな魚は小さな魚を食う》 という一枚です。

大きな魚は小さな魚を食う
ピーテル・ブリューゲル1世、彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン 《大きな魚は小さな魚を食う》
1557年エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands



全体的に、いろいろとキモチ悪いですが (笑)
特にキモチ悪いのが、画面左に描かれた2本足の魚。
白ソックスみたいなのを履いてるのが、キモチ悪さに拍車をかけてます。

ちなみに、こいつは、「タラ夫」 という名で展覧会の公式キャラに抜擢されているようです。
会場を出たところに、こいつがいました。

魚


スネ毛をつけるな!
キモチ悪さが3割増しです。


最後に、男性は背筋も凍る怖い作品をご紹介。
ルカス・ファン・レイデンの 《ヨセフの衣服を見せるポテパルの妻》 です。

ルカス・ファン・レイデン
ルカス・ファン・レイデン 《ヨセフの衣服を見せるポテパルの妻》 1512年 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands


画面中央でショックを受けた表情をしている男性がポテパル。
エジプト王の宮殿に使える役人です。
そのポテパルの妻は、イケメンのユダヤ人奴隷ヨセフにぞっこん。
ある日、ヨセフを誘惑するも、あえなく拒否されてしまいます。
それに怒った妻は、夫であるポテパルに、
ヨセフに強姦されそうになったと、ヨセフの服を見せながら訴えました。
もちろん、でっち上げです。
妻の発言を真に受けたポテパルは、ヨセフを牢に閉じ込めてしまいます。
ちなみに、窓の外で連行されているのがヨセフ。
冤罪も冤罪です。
女性の逆恨みって怖いですね。。。



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