現在、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションでは、
夏の企画展として、“千一億光年トンネル 奥村綱雄、Nerhol、水戸部七絵” が開催中です。
浜口陽三といえば、カラーメゾチントという独自の表現技法で世界的に活躍したアーティスト。
《1/4のレモン》
その静謐な画面からは、なかなか想像がつきませんが、
実は途方もなく手間のかかる技法で制作されているのです。
(詳しくは、こちらの記事に→“浜口陽三と国際メゾチント展”)
今回の企画展では、そんな浜口陽三とどこか通じる、
どこか響きあう制作スタイルの3人 (組) のアーティストが紹介されています。
まず1人 (組) 目は、人気急上昇中のNerhol。
田中義久さんと飯田竜太さんによるアーティストデュオです。
彼らの代名詞ともいえるのが、このようなスタイルで制作された作品。
なんとも不思議なテクスチャーです。
一体、何で作られているのでしょうか?
少し、近づいてみてみましょう。
無数の紙が重ね合わせてあるように見えますね。
実は、この正体は、写真。
3分間連続撮影した肖像写真を200枚重ね、
その塊 (?) を素材に彫刻を施した作品なのです。
角度によって見え方が違います。
そのことが、人間そのものを示唆しているかのよう。
なんとも哲学的な作品です。
ちなみに、ユニット名の由来は、
アイデアを練る田中さんと作品を彫る飯田さん、ネルとホルでNerhol (ネルホル) とのこと。
片方が頭脳労働、片方が肉体労働。
現代アート界のナポレオンズといったところでしょうか。
続いてのアーティストは、水戸部七絵さん。
造形作家なのかと思いきや、
こう見えて、ペインター。
横から観ると、こんなに作品がモリモリですが、
本人的には、絵画なのだそうです。
描いているのは、匿名の顔。
それを思うがままに描いていく結果、
絵の具が塗り重ねに塗り重なって、このような作品に仕上がるのだそうです。
ちなみに、多い日では、1日で油彩絵の具のチューブを100本以上使うことも。
それだけに、全身像を描いた新作に関しては、
一瞬、マジで人が寝ているのかと思いました。
もしくは、ミイラなんじゃないかと思いました。
圧倒的素材感!
当然、これくらいの重さとなると、普通の布地のキャンバスでは耐えきれないそうで。
水戸部さんの絵画は、なんと特注の鉄製のキャンバスの上に描かれています。
圧倒的重量感!
最後にご紹介するアーティストは、奥村綱雄さん。
彼は、このように全面に刺繍が施されたブックカバーを制作しているアーティストです。
「・・・ということは、刺繍作家さん?」
と思いきや、どうやら、そう単純ではないそうです。
奥村さんが刺繍の作業をするのは、夜間警備の仕事をしている時だけ。
つまり、この刺繍の作業をするために、あえて夜間警備の仕事に就いているのだとか。
そして、1つのブックカバーを制作し終えると、その夜間警備の仕事はやめてしまうのだとか。
刺繍作家というよりは、パフォーマー?
いや、コンセプチュアルアーティスト?
どこにカテゴライズするべきなのか、全く見当のつかないアーティストです。
ちなみに、1つのブックカバーを作るのに、1000時間以上もかかるとのこと。
ひたすら刺繍をし続けると、布地の穴という穴すべてに糸が通ります。
そして、もうこれ以上は、針が通らないという状態になったら、作品が完成なのだそうです。
今回の展覧会には、そんな奥村さんの涙とリアルな汗が滲んだブックカバーが7点展示されています。
国内にある奥村さんのブックカバーは、全部で7点。
そう、国内にあるすべてが、今、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションに集結しているのです!
なんかスゴい!!
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千一億光年トンネル 奥村綱雄、Nerhol、水戸部七絵
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