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メルセデス・ベンツ アート・スコープ2015-2017―漂泊する想像力

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原美術館で定期的に開催されている展覧会 “メルセデス・ベンツ アート・スコープ”。
その最新版 “メルセデス・ベンツ アート・スコープ2015-2017―漂泊する想像力” に行ってきました。
(前回の展覧会の様子は、こちら→“「アート・スコープ 2012-2014」 旅の後もしくは痕”

アート


今回は、2015年に東京へ招聘されたメンヤ・ステヴェンソン、
過去にこのプログラムに参加した佐藤時啓さん、2016年にベルリンへと派遣された泉太郎さん、
以上、3名のアーティストの新作が発表されています。
星


まずは、ドイツの女性作家メンヤ・ステヴェンソンの作品からご紹介いたしましょう。
こちらの 《e/絵 名人の机》 という、一見抽象画のように見える版画作品は、

e/絵 名人の机


2015年にプログラムで初来日した際、浮世絵木版画の工房を見学したことで生まれたものです。
工房内で彼女の目に留まったのは、版木でも浮世絵でもなく、なんと作業用の机。
そんな職人技の痕跡が詰まった机の表面を、
もしも職人が摺ってみたら・・・という斬新な発想で生まれたのが、こちらの作品です。

こちら


ちなみに、色と配置は江戸時代の浮世絵をイメージしているとのこと。
確かに、言われてみれば、なんとなく和を感じます。

また、来日中、電車に乗っているときに、
「I would like to be come cat」 というメッセージが襟に刺繍されたシャツを目にして、
カルチャーショックを受けたというメンヤ・ステヴェンソン。

メンヤ・ステヴェンソン


今回はそれにちなんで、ドイツのことわざが刺繍された襟の数々を新作として発表していました。

メンヤ・ステヴェンソン


作品としては、ウィットが効いてて、面白いと感じましたが。
メッセージが刺繍された襟のある光景が、
日本のデフォルトではないということを彼女に教えてあげたいです。
34年間、日本で生活していますが、一度もこんな光景に出会ったことがありません。

それと、2015年に日本で撮影した写真を、
原美術館の特徴的な窓に貼ったインスタレーション作品 《家の緑》 も印象深かったです。

家の緑


全部が写真作品に見えますが、実は写真は8枚だけ。
あとは、実際の庭の景色です。
借景を活かした、まさに日本的な作品でした。


続いて紹介したいのは、佐藤時啓さん。
スローシャッター (長時間露光) による写真作品のシリーズで知られるアーティストです。

スローシャッター(長時間露光)による


写真の中に登場する無数の光は、長時間露光の撮影中に、
佐藤さん本人が手鏡を持ち、カメラに向かって光を定着させては移動し・・・を繰り返した痕跡。
これだけ光があるということは、これだけ何度も移動したということです。
(佐藤さん自身は絶えず動いているので、写真には写りません)

今回は、そんなスタイルで1991年に東京で撮影した過去の作品と、
2017年に同じ場所で撮影した新作の写真を並べて展示していました。

佐藤
佐藤


そもそも時間の経過というものを強く実感させられる佐藤さんの写真作品ですが。
現在の同じ場所を撮影した写真が並べられることで、より時間の経過を実感させられます。
というか、バブルの時期から、こんなにも東京の街並みって変わっていたのですね。
おったまげー。


最後にご紹介するのは、泉太郎さん。
脱力系ながら、つい最後まで見入ってしまう映像作品を数多く発表しているアーティストです。
今回は、10点の新作を発表していました。
相変らずの多作ぶりです。

例えば、こんな作品がありました。

ベルリン


《溶けたソルベの足跡》 と題されたこちらの作品は、
ベルリンの地図を囲むように、多数のモニターが配置されています。
モニター内の人物は皆一様に、泉太郎さんの指示で空を見上げる演技をしています。

モニター
モニター


さて、その目線の先にあるのは、何やら黒い物体。
これらは、出来上がった映像に、
後から、泉さんが (たぶん) テキトーに書き足したドローイングです。
実にアナログで、実に安上りな合成技術。
思わず、クスッとさせられました。

数ある新作の中で、特に力が入っていたのが、
展示室一室をまるまる使った 《浮き尻(遅刻の夢を見る12人の徘徊マニア)》
東京とベルリンを結ぶ 「空の旅」 の時間の長さから着想を得た作品だそうです。

展示室


飛行機の客席のような座席の前のモニターで再生されているのは、映画。
飛行機での “あるある” な光景です。
しかし、その字幕をよく見てみると、台詞ではなく、何やら指示のようなものが書かれています。

指示


実は、この作品のために、10名以上のボランティアさん (被験者?) が協力しています。
彼らは、一切外出が許されない状況の中で、この席に座り続けて、
モニターに指示が現れるたびに、それに従って、その行動をし続けたのだそうです。
その実験時間は、なんと12時間!
そんな涙ぐましい模様 (?) が、大画面に投影されています。
演技なのか、それとも疲労による自然発生的な動きなのか。
傍から見ている限りではわからない、ということがよくわかる作品です。
というか、12時間もやらせなくても、良かった気がしてなりません (笑)
ちなみに、12時間の間、外出は一切禁止だったそうですが、寝るのはさすがにOKだったそうです。
ただし、このベッドで。

ベッド


いや、鬼かっ!!


最後に、こちらの展覧会に土日祝日に訪れようと思っている方に朗報です。
期間中は、品川駅と原美術館を結ぶ無料送迎シャトルが一日に何便か運行されています。
メルセデス・ベンツとの共催の展覧会だけに、送迎してくれるのは・・・

メルセデス・ベンツV クラス


なんと、メルセデス・ベンツVクラス (毎便定員6名)!!

ベンツに送り迎えしてもらって美術を鑑賞する。
庶民には、一生に一度あるかないかの超貴重な機会です。




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